改善の余地はある。勝利は次に向かう一歩へ

小野伸二、長谷部誠、阿部勇樹、原口元気……過去に浦和から有望な選手が欧州へ渡った。あす、関根貴大も『浦和育ち』の看板を背負いながら、自身の目標を追い求め、日本を発つ。

敵地・甲府戦は浦和の一員として関根が戦う最後の試合となった。スタジアムに訪れたサポーターは円陣が組まれるタイミングで、力いっぱいの「関根」コールを何度も送った。

まずは、勝利だ。リーグ3試合で勝ち星から遠ざかり、監督交代があった現在も浮上の気配が見られない。下位相手に取りこぼしは、もう許されない。

甲府は最後尾に5人が構え、浦和の1トップ+2シャドー、両ワイドの攻撃にフタをした。気温32度、湿度55%の中で、戦い方の工夫も求められた。

浦和のサッカーで魅力的なのはワイドの動き。左の菊池大介が顔を出し、アグレッシブに戦っていく。注目の右の関根は、残念ながら効果的な位置でボールを受けられず。左中心の展開が続いた。

ただ、相手に脅威をもたらすようなチームとしての仕掛けは少なかった。興梠慎三は「前半は無理に打ち込まず、後ろでゆっくりとボールを回した。相手を疲れさせることも目的の1つだったが、攻撃はまったく出せずに終わった」と前半の戦いを振り返った。

その中で19分、柏木陽介が個人技で試合を動かす。今節、先発のラファエル シルバとの連係からボールをキープ。相手の動きを見て、ゴール右隅にループシュートを入れた。「時間が止まった」と振り返る柏木。技ありのシュートで、チームに先制点をもたらした。

1点が入ると、試合が動くもの。次第に甲府が勢いを持って攻め始めたが、前半こそ、浦和が冷静にかわし、1−0でハーフタイムに入った。様子が変わったのは、後半。後半に入ってから浦和は苦戦を強いられた。甲府がセットプレーを中心に立て続けに襲いかかってくる。

浦和とすれば、前からプレスをかけ、2点目を奪い、勝利をより可能性の高いものにしたいところだが、ボールの奪いどころをつかめず、無理はできなかった。また、無理はできない理由の1つに勝利がある。今は、どんな内容であれ、勝ち点3が欲しかった。ベタ引きではないが、相手の攻撃を想定しながら、ブロックを作り、集中して守った。

前半は1本におさえた甲府のシュートを、後半は6本受けながらも、最後の最後には守備陣が中心となって、負傷することも構わずにボールをはねのけ、ゼロの時間を続けた。この粘り強さは一時期の強さに似ている。

一方で、浦和の攻撃は迫力が減った。今節は特に、全体で4本と少ないシュート数の中で、後半はわずかに1本。今後は攻撃と守備のバランス、メリハリが求められてくるだろう。

ベンチは動き、柏木を下げて、矢島慎也をボランチに入れる。また、見せ場に恵まれなかった興梠に代わり、李忠成。それでも後半の甲府の勢いを攻撃で食い止めることはできず、肝を冷やす場面が続いた。最後は関根を下げ、駒井善成を入れた。

残り5分のアディショナルタイムも耐えきり、浦和は下位の甲府相手に辛うじて零封。堀孝史監督の初勝利がもたらされ、多くの選手がほっと胸をなでおろした。

あす、渡独する関根は、3500人ほど集まった浦和サポーターの前で話す機会が与えられた。熱い応援を労いながら、関根は「最後までチームメイトの足を引っ張り、迷惑をかけた。このチームを勝たせる男にはなれなかった。あっちに行って、浦和のプライドを持って戦い、またこのクラブで成長した姿を見せられたら」と話した。

本人は「泣いていた?」ととぼけたが、その目には光るものがあった。サポーターは拍手とチャントとともに、横断幕でメッセージを伝えた。「浦和の誇りを胸に世界を沸かし駆け抜けろ24」。

浦和の誇り。これから関根とサポーターをつなぐ言葉だ。関根は「テンパって、思ったことをすべて伝えられなかった」と苦笑いを浮かべながらも、「日本一のサポーターの前でプレーできて、埼スタのピッチでともに戦って、走って、一緒に喜び合えた日々は自分にとってとてつもない財産であり、幸せだった」と振り返った。

さあ、これからは菊池、矢島、さらにベンチ入りしたオナイウ阿道など、堀新監督のもと、自分にも出番があるのではないかとモチベーションを高める選手の奮起に期待だ。こうしてチームは活性化されるもの。きょうの勝利はあくまでも起爆剤。誰1人として満足した言葉は発していない。勝ちながら、修正を進めていく。これが一番の収穫だ。

(有賀久子)

[記事リンク]2017年シーズン浦和レッズ試合情報まとめ
[記事リンク]2016年シーズン浦和レッズ試合情報まとめ
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試合レポート|J1第21節・甲府戦=ポイント|レッズプレス!!

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J1第21節・甲府戦=ポイント

「ポイント」では、番記者が勝敗の分かれ目などを振り返ります。


改善の余地はある。勝利は次に向かう一歩へ

小野伸二、長谷部誠、阿部勇樹、原口元気……過去に浦和から有望な選手が欧州へ渡った。あす、関根貴大も『浦和育ち』の看板を背負いながら、自身の目標を追い求め、日本を発つ。

敵地・甲府戦は浦和の一員として関根が戦う最後の試合となった。スタジアムに訪れたサポーターは円陣が組まれるタイミングで、力いっぱいの「関根」コールを何度も送った。

まずは、勝利だ。リーグ3試合で勝ち星から遠ざかり、監督交代があった現在も浮上の気配が見られない。下位相手に取りこぼしは、もう許されない。

甲府は最後尾に5人が構え、浦和の1トップ+2シャドー、両ワイドの攻撃にフタをした。気温32度、湿度55%の中で、戦い方の工夫も求められた。

浦和のサッカーで魅力的なのはワイドの動き。左の菊池大介が顔を出し、アグレッシブに戦っていく。注目の右の関根は、残念ながら効果的な位置でボールを受けられず。左中心の展開が続いた。

ただ、相手に脅威をもたらすようなチームとしての仕掛けは少なかった。興梠慎三は「前半は無理に打ち込まず、後ろでゆっくりとボールを回した。相手を疲れさせることも目的の1つだったが、攻撃はまったく出せずに終わった」と前半の戦いを振り返った。

その中で19分、柏木陽介が個人技で試合を動かす。今節、先発のラファエル シルバとの連係からボールをキープ。相手の動きを見て、ゴール右隅にループシュートを入れた。「時間が止まった」と振り返る柏木。技ありのシュートで、チームに先制点をもたらした。

1点が入ると、試合が動くもの。次第に甲府が勢いを持って攻め始めたが、前半こそ、浦和が冷静にかわし、1−0でハーフタイムに入った。様子が変わったのは、後半。後半に入ってから浦和は苦戦を強いられた。甲府がセットプレーを中心に立て続けに襲いかかってくる。

浦和とすれば、前からプレスをかけ、2点目を奪い、勝利をより可能性の高いものにしたいところだが、ボールの奪いどころをつかめず、無理はできなかった。また、無理はできない理由の1つに勝利がある。今は、どんな内容であれ、勝ち点3が欲しかった。ベタ引きではないが、相手の攻撃を想定しながら、ブロックを作り、集中して守った。

前半は1本におさえた甲府のシュートを、後半は6本受けながらも、最後の最後には守備陣が中心となって、負傷することも構わずにボールをはねのけ、ゼロの時間を続けた。この粘り強さは一時期の強さに似ている。

一方で、浦和の攻撃は迫力が減った。今節は特に、全体で4本と少ないシュート数の中で、後半はわずかに1本。今後は攻撃と守備のバランス、メリハリが求められてくるだろう。

ベンチは動き、柏木を下げて、矢島慎也をボランチに入れる。また、見せ場に恵まれなかった興梠に代わり、李忠成。それでも後半の甲府の勢いを攻撃で食い止めることはできず、肝を冷やす場面が続いた。最後は関根を下げ、駒井善成を入れた。

残り5分のアディショナルタイムも耐えきり、浦和は下位の甲府相手に辛うじて零封。堀孝史監督の初勝利がもたらされ、多くの選手がほっと胸をなでおろした。

あす、渡独する関根は、3500人ほど集まった浦和サポーターの前で話す機会が与えられた。熱い応援を労いながら、関根は「最後までチームメイトの足を引っ張り、迷惑をかけた。このチームを勝たせる男にはなれなかった。あっちに行って、浦和のプライドを持って戦い、またこのクラブで成長した姿を見せられたら」と話した。

本人は「泣いていた?」ととぼけたが、その目には光るものがあった。サポーターは拍手とチャントとともに、横断幕でメッセージを伝えた。「浦和の誇りを胸に世界を沸かし駆け抜けろ24」。

浦和の誇り。これから関根とサポーターをつなぐ言葉だ。関根は「テンパって、思ったことをすべて伝えられなかった」と苦笑いを浮かべながらも、「日本一のサポーターの前でプレーできて、埼スタのピッチでともに戦って、走って、一緒に喜び合えた日々は自分にとってとてつもない財産であり、幸せだった」と振り返った。

さあ、これからは菊池、矢島、さらにベンチ入りしたオナイウ阿道など、堀新監督のもと、自分にも出番があるのではないかとモチベーションを高める選手の奮起に期待だ。こうしてチームは活性化されるもの。きょうの勝利はあくまでも起爆剤。誰1人として満足した言葉は発していない。勝ちながら、修正を進めていく。これが一番の収穫だ。

(有賀久子)

[記事リンク]2017年シーズン浦和レッズ試合情報まとめ
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