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ツヅキック(都築龍太の試合分析)

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ディフェンスラインのバランスは今後が楽しみ

昨季まで「ヤスに聞け」にて解説を務めていただいていた福永泰さんが、ベガルタ仙台コーチ就任したことにより卒業。今季からは、2003年から2010年まで浦和レッズで活躍された元日本代表GK都築龍太さんに解説を務めていただきます。聞き手は、サッカー専門新聞『エルゴラッソ』の菊地正典記者です。


RP:よろしくお願いします。

都築:よろしくお願いします。

RP:早速ですが2月27日に日立柏サッカー場で行われた明治安田生命J1ファーストステージ第1節・柏レイソル戦は、2−1で浦和が勝利を収めました。この試合をどうご覧になられましたか?

都築:レッズにとってはすごく良い開幕戦だったと思う。昨季に引き続いて攻撃も厚みがあった。守備は失点を喫したほか、前半と終盤にもピンチはあったが、その数は少なかった。バランスが良かったと思う。

RP:注目していた選手は?

都築:注目は遠藤航がどう出るかだった。遠藤とは、湘南ベルマーレで一緒にやっていたから分かるけど、プレースタイルが阿部勇樹とかぶる。どちらかが1つ下がるとは思っていたけど、右のストッパーに入ったのは意外だった。あのメンバーでは遠藤が真ん中に入ると思っていた。練習でもやっていた並びみたいなので、そういう意味では予想とは違ったけど、良い仕事をしていた。

RP:遠藤選手の良かった点は?

都築:中盤で横パスを2回取られて前半は1回ピンチになったけど、選手に対しても強いし、ボールを持っている時にも落ち着いていた。やっていること自体は、レッズの場合は誰がどこに入っても変わらないので、あとは質の問題になる。遠藤はあまり前には行かないと思っていたし、槙野智章が上がった時に阿部と遠藤でバランスと思っていた。でも、遠藤が中盤より前に上がって良い奪い方をして前半最初のチャンスを演出した。

レッズのサッカーはクオリティーだけの問題で、選手のやり方は変わらないので、そこの質をいかに上げていくかがポイントになる。良くない時はディフェンスラインから無理矢理パスを入れるが、全くチャンスにならない。そういう点では、遠藤に限らず、しっかり中盤なりサイドを使い、何回もチャンスができていた。

RP:槙野選手は、ディフェンスラインの中央に入りました。公式戦では初めてでしたが、いかがでしたか?

都築:レッズの3バックは特殊。槙野は真ん中に入った分、攻撃参加の回数はかなり減っていた。そういう意味では意識していたと思う。前に行った後はしっかりバランスを取る、ポジションチェンジがあるということを考えると、槙野からすると左の方が攻撃はしやすいと思う。自分が上がったらカバーしてくれると形があれば、どんどん行ける。

でも、レイソル戦ではディエゴオリヴェイラにマンマーク気味で付いていた。槙野は人にも強い。ディエゴオリヴェイラはポイントで攻撃をしていたけど、あの選手をあそこまで抑えたんだから、良い仕事をしていた。ディフェンスラインのバランスは今後が楽しみ。那須大亮はボランチもやれるし、後ろは層が厚くなった。

RP:柏は中央を固めてきました。

都築:レイソルは慎重だった。新しい監督ですごく慎重な立ち上がりだったし、ブロックを作っているとまでは言わないけど、レッズに勝つために対策を練ってきた戦いだった。前線のディエゴオリヴェイラが献身的に動くし、あそこからのプレッシングで後ろが行きやすくなっていたと思う。攻撃的なサッカーとは言えないけど、組織立ったサッカー。特に、追い付いてからはチャンスもあったし。ただ、セットプレーの守備がひどかった。ああいう試合の中でセットプレーが勝敗を分けることは、よくある。前半は槙野がかなりフリーになっていたし、マークはルーズだった。

RP:浦和も優位に試合を進めて先制しながら一度は追い付かれてしまいました。

都築:レッズの失点シーンは、2人行っていたけど、もっとうまく対処しないと、ああいう形になってしまう。2人いるならボールに行く選手とコースを消す選手で役割を分けないといけないし、柏木陽介が前だったと思うけど、あそこでコースを限定しないといけない。2人がペナルティエリアで抜かれると、中のマークが足りなくなる。ほぼレッズが主導権を握っていただけに、あの時間帯の失点はもったいなかった。

RP:GKの立場からすると「もっとちゃんと守ってくれ」という感じでしょうか?

都築:2人が一緒に取りに行ったら良くない。後ろの選手がしっかり前の選手を動かすような指示をしないといけないし、ペナルティエリアで2人が置き去りにされるのは厳しい。

RP:一方で前線からの守備はかなり意識していたように思えます。

都築:中盤で森脇良太も含めて出だしは良かったし、ボールを取ってからのショートカウンターが多かった。取ってから逆サイドに展開して相手を揺さぶるとか、サイドの宇賀神友弥も関根貴大もトライできていたし、取ってからのショートカウンターは効果的だった。その際に良いタイミングでボールを取ることに関しては、阿部と遠藤が目立っていた。取った後の動き出しは徹底していたので、自分たちが思うところでボールを取れればチャンスになる。李忠成が変わってからは、あまり攻撃のリズムが出なかったけど、それを除いては良い試合だった。

RP:都築さんの選手時代の経験も踏まえて、開幕戦の勝利は大きいものですか?

都築:僕自身は開幕戦だからとか、優勝が懸かっているからとかで気持ちが変わる選手じゃなかったけど、まず開幕戦に勝つために準備してきたわけだし、勝ったことでスッキリすると思う。ACLがあったから中2日に日程で厳しかったと思う。レッズは自分たちがボールを保持するサッカーなので慌てることはあまりないけど、Jリーグの開幕戦としては、1試合やっていたことは良かったんじゃないかなと思う。

RP:もっと良くなるところ、あるいは課題はありますか?

都築:レイソル戦に関しては、そこまでなかった。今のレッズはゲームの流れが読めるチームだと思う。相手が疲れて出て来ない時は後ろで回すし、試合を通してのマネジメントとはうまいチーム。レイソル戦ではあまり目立たなかったけど、無駄なミスや無駄な動きが少なかった。あとは、よりプレーの質を高めていけばいいと思う。まだまだこれからシーズンは続いていくし、全員がハードワークをすれば、いいサッカーになると思う。

RP:気が早いことを承知で聞きますが、今季の浦和は行けそうですか?

都築:もっと攻撃がかみ合ってDFのバランスが良くなればいいと思う。選手層は厚い。レイソル戦は興梠慎三が完全にいなくなっちゃったから、彼をうまく使えるポジションがあればいいと思う。

RP:次はACLのアウェイで浦項スティーラーズ戦です。

都築:月並みだけど、アウェイなので厳しい試合になる。韓国のチームはレッズと真逆のサッカー、フィジカルを前面に出すサッカーのイメージ。厳しいプレッシャー、球際の中で質の高いレッズのサッカーができれば確実に勝てると思う。頑張ってほしい。

RP:ありがとうございました。
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都築龍太 -profile-
1978年4月18日生まれ。
2003年にガンバ大阪から浦和レッズへ加入。2010年に湘南ベルマーレへ期限付き移籍後、現役を引退。日本代表としても6試合に出場した。

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