(有賀久子)
興梠慎三、引退発表記者会見より〜今、聞きたかったこと
2013年2月3日、ファン・サポーターを浦和駒場スタジアムに集めた『レッズフェスタ』で「鹿島からゴールを奪います」と宣言し、鹿島アントラーズの興梠慎三から、浦和レッズの興梠慎三へと、グッと心を鷲掴みにされたあの日から、いつかはこの日が来ることを想定し、出来ることならば、“浦和レッズの興梠慎三”で選手生活を終えてもらいたいという思いが現実のものになったが、心にポッカリと穴があく強烈な寂しさに包まれている自分がいる。またひとつ、時代の大きな変化に直面している。
7月31日(水)14時、多くの方が予想した通り、『所属選手に関するクラブからの重要なお知らせ』は、FW興梠慎三がファン・サポーターへ画面越しに、今シーズン限りで、選手生活から退くことを伝える場だった。会見から1時間ほどが経った16時時点で、クラブ公式YouTubeチャンネルの視聴回数は、2万9千を超えた。

開始直前までふせられた会見場には、浦和レッズに移籍して初めてゴールを決めた時の写真など4枚のパネルと、背景には、左に加入当時のユニフォームと背番号30の文字。右には、今シーズンのユニフォームと背番号30の文字。テーブルには、赤と白のバラとNIKEジャパンから贈られたNIKEのスパイク、『マーキュリアル ヴェイパー16 エリートFG』に名前と2005-2024の刺繍がなされた特別モデルが飾られていた。
冒頭、興梠慎三の挨拶で始まる。
「今年で現役を引退することを決断しました。20年間という、現役生活でしたけど、いろいろな方に支えられて、ここまでやって来られたと思っています。特に鹿島アントラーズの関係者の皆様、(北海道)コンサドーレ札幌の関係者の皆様、そして浦和レッズの関係者の皆様には本当にありがとうございます」
ここから質疑応答となり、まず、引退を決意した理由や背景、そして、きょう7月31日を発表する日にいたった経緯を問われると、興梠は「正直に言いますと、自分の力じゃあ、チームは勝たせられないなというのが正直な気持ちです」と話し、7月31日、自身の誕生日であることに触れた。

「なぜ、この日を選んだかと言いますと、まだ、残り今シーズン、4ヶ月ありますけど、きょうは、自分の誕生日です。自分にとっても、この日というのは、特別な日でもありますけど、自分は、母に一番感謝しないといけない、そして母に感謝するべき日だと思っています。僕がここまで現役を続けられたのも、母が丈夫な身体に産んでくれたことが一番だと思っています。自分にとっても、特別な日ですけど、母にとっても、自分を産んだ、そういう特別な日だと思っているので、お互いが特別な日であるきょうという日を、引退会見という形で感謝を伝える、そういう日でもあると思いましたので、この日を選びました。ニューカッスル戦と重なりましたけれど、自分のワガママで、それを受け入れてくれた関係者の皆さん、本当に感謝しています。ありがとうございます」。
レッズプレス!!の取材を通して、今後もまだまだ話を聞く機会があるが、この場で彼に質問したかったこと。まずは、プロキャリアを始めてからここまでブレずにやってきたことは?
「自信をもって言えることは、自分を応援してくれる人がいるからこそ、自分はここまで頑張ってこれたと思っています。もちろん、それはチームメートもそうですけど、親、家族、たくさんいます。その中でも、やっぱり、自分のユニフォームを着て、応援して下さるサポーターには、本当に感謝していますし、その人たちのためにも、自分はゴールをとらないといけないという思いで、今までピッチに立っていました。その思いが、今、ここまで自分がやれてきたことだと思っています」。
そして、もうひとつ。背番号30、浦和レッズにとって大事な数字になりました。これから、もし、背番号30を背負う選手がいるとしたら、また浦和レッズのFWにはどんなFWであってもらいたいか」
「浦和で11年間やってきました。浦和のエース番号は、9番と。福田さんがつけていた番号、それがエース番号だと自分自身も分かっていましたし、どうにかして、エース番号・9番というのを、30番にしたいという一心で、これまでやってきました。はるかおよばなかったですけれど、福田さんがもっている記録を抜けたことは、すごく嬉しく思います。別に後輩に託すつもりもないですし、それぞれの番号でまた、その番号が浦和のエース番号だという思いを持ってやってくれれば、一番良いと思いますけど、自分が一番可愛がっている前田直輝につけてもらうのが、僕は一番良いかなと思っています」
残り4ヶ月。会見の中で、興梠が話したように14連勝すれば、何か可能性が生まれるかもしれない。どんな風に、浦和レッズのレジェンドとなった興梠慎三を送り出すか。それは、興梠がずっと追い求めてきた勝利がふさわしい。興梠が愛してやまないサポーターと共に、勝利をつかもう。

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