(有賀久子)
小泉佳穂の『レッズ先生』〜夢がある人も、これから夢が見つかると良いなと思っている人も〜
きのう9月24日(火)午後、ホームタウン活動として、小泉佳穂が、常盤北小学校(さいたま市浦和区)を訪問した。『レッズ先生』として、体育館に集まった小学6年生にむけて、夢をテーマに話した。
児童には、事前に「浦和レッズの選手が来てくれるかも?!」と伝えられていたが、冒頭、進行役の先生から「難しくなった」と説明。オンラインでの交流になった、とスクリーンに小泉の顔が映し出された。
ただ、小泉側の音声が小さかったり、途中で映像が止まったり(“オンラインあるある”の変顔状態でフリーズ……。これは事前の演出ではないと思うが)、ハプニングが起こる中、先生が、6年生に「オンラインが繋がるように、みんなで、大きな声で“佳穂先生!”と呼びかけよう」と促し、体育館に佳穂先生!という声が響き渡ると……。
何も起こらない。少々、戸惑う児童の背後から現れたのは、小泉佳穂だった。と、サプライズを仕掛けたわけだが、児童たちは「(やって来る)かな?と思った」と察していたようだ。すぐに状況を飲みこみ、雰囲気は整って『レッズ先生』の授業は始まった。
夢がテーマである機会だからこそ、大いに夢を語って良い場所だ。しかし、小泉は、夢を持っている子も、そうでない子も、意識しながら言葉を選んでいた。理由は、小泉の背景にある。まず、小泉は「夢に向かって頑張っても、うまくいかないことはたくさんあるんですよね。僕自身、うまくいかない経験をたくさんした話を、今日できれば良いかなと思います」と話し、授業を始めた。
小泉は、幼い頃に観た2002年の日韓W杯が強く印象に残り、サッカーの面白さを感じ、プロサッカー選手が夢になった。まず、Jリーグクラブのジュニアユースのセレクションに合格することを目指し、“何をすべきか”を逆算して考え、学校が始まる前後も練習に明け暮れた末、FC東京U-15むさしに加入することができた。ここから、マイクを手にした小泉は、“うまくいかなかった”ことを、言葉を飾らずに、丁寧な口調で話した。
「入ることができましたが、10年ぐらい、あまりうまくいっていないです。スタメンで試合に出られない時期が続きました。皆さんぐらいから、中学生、高校生にかけて、身長が伸びたり、筋肉がついたりすると思うんですけど、高校2年生かぐらいまで、身長がほとんど伸びませんでした。女の子より足が遅かったり、背が小さいとか。サッカーって、ボールを蹴るための筋力とか、敵とぶつかるための筋力とか、あとはスピードが大事なスポーツなので、背が大きくて、成長が早い選手に全く勝てずに、中学、高校と、ほとんどレギュラーをとれない日々が続きました」と包み隠さず、振り返った。
そして小泉は「この頃、どういったことを考えたかというと、身長はいずれ伸びるものと思っていたので、それ以外のところで自分に足りないものを探して、チームでの練習以外にすごくトレーニングをしていた記憶がありますね」と話し、そこから小泉の人生は、前橋育英高校、青山学院大学、FC琉球、そして浦和レッズへと道は続くが、時代ごと、決して順風満帆に進んでいないと話し続けた。
「ほとんど、うまくいっていない時期が多くて、実際、夢を諦めかけていた時がいくつもあったんですけど、そういう人間だからこそ話せることとかきっとあると思うので、質問コーナーで、何でも良いので聞いて頂けたら、自分なりの経験をお話しできるかなと思うので、是非、いろいろと質問して下さい」と小泉は笑顔で投げかけた。
授業の中では、小泉とのパス交換も行われた。児童たちも、サッカー経験問わず、積極的に前に出てきて、1人1人、楽しそうにボールを蹴った。小泉は最後に、児童に送るメッセージとして、このような言葉を選んだ。
「夢って難しいし、もしかしたら、あと10年、夢がないという人がいるかもしれないですけど」と話し、「一番大事なことは、自分について、自分のことをよく知るというのが一番大事かなと思っていて。自分が、どういうことで喜びを感じて、どういうことで悲しんだり、怒りを感じたりとか。そういうところを見ていると、自分がやりたい、こうなりたい姿が見えてくるので、今、夢がある人も、これから夢が見つかると良いなと思っている人も、自分のことをよく知っていって、自分がどういう風に生きていきたいかということが分かってくると、自然に、それが夢になるかなと思うので。皆さん、いろいろなことができると思うので、いろいろなことに挑戦して、失敗しても、また同じことにチャレンジしても良いし、諦めて、すぐに違うことにやっても、どちらでも良いと思うので、いろいろなことをやってみようと思うのが大事だなと思うので、いろいろとやってみて下さい」と背中を押した。
小泉自身が、明確な夢を描きながらも、なかなか思うように進まなかった人生だったからこそ、今回のような『レッズ先生』になった。キラキラと輝くプロサッカー選手を目の前にして刺激を受ける子にも、最初から「相手は、特別な人だから」と自分事としてなかなか受けとめられない子にも、小泉の言葉は届いたのではないか。彼の言葉によって、気持ちをスッとすくい上げてもらった子が1人でもいることを願う、そんな時間になった。
この『レッズ先生』は、浦和レッズが「社会の一員として、青少年の健全な発育に寄与する」という理念の活動方針のもと、ホームタウンの子供たちのために実施されている。
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