ちょうど新潟で興梠慎三が決勝ゴールを決めたころ、300キロ離れたNACK5スタジアム大宮では湘南ベルマーレ・山田直輝が渾身のヘディングシュートを放っていた。
試合は後半アディショナルタイム4分を越え、もうすぐ5分に差し掛かろうとしていた。山田のシュートが枠外に飛んだと同時に試合終了の笛が鳴り響いた。
オーロラビジョンには3−2の表示。
一時、3点差をつけられたものの、湘南の猛追むなしく、大宮アルディージャに敗れた。この瞬間、湘南のJ2降格が決まった。山田はピッチに力なくひざまずいた。大宮戦を含め、3試合連続先発出場の山田はいわば奇跡の残留への切り札。その山田、大宮戦で今季初のワントップ起用となった。負ければ降格という、切羽詰まった試合も後押ししてか、山田はここ数年には見られないハツラツしたプレーを見せた。いや、もしかするとあれほど躍動する山田直輝を初めて見たかもしれない。
特長である豊富な運動量をベースに、ファウルをいとわず、ボールを奪う闘争心あふれるプレー。そして小気味よいドリブルから技ありのスルーパスで湘南の2点目をアシスト。
0−3で迎えた後半21分には、ペナルティエリア内で強烈なシュート2本打ったが、1本目はバー。2本目は相手にはじかれたが、もしや!?という場面を演出した。
さばいて、走って、さばいて、走り込む。多少のわがままさはあっても、最後はしっかり味方を生かす。
「山田直輝のこんなプレーを見たかった」そう思わせる95分間だった。
その一方、もっと早い段階だったなら・・・そう思わずにはいられない。
湘南・?貴裁監督たっての希望で加入した山田直輝。ときにケガで離れることもあったが、この2シーズン、自分の確固たるプレースタイルと湘南のサッカースタイルとのすり合わせがじゅうぶんにできないまま、ここまで来てしまった。
その一端がわかるように、山田はこれまで1トップ2シャドーのうち、シャドーの位置での起用だが、先発した直近3試合はすべてFW。
(13節:ジュビロ磐田戦・14節:柏レイソル戦は2トップ。15節・大宮がワントップ)
トップ下でもない、ボランチでもない、FWが自身の生きる場所となったことでもうかがえる。
2011年以来、2度目となる残留争い。今季、出場機会に恵まれていなかっただけに、山田自身、意気に感じていたはず。
ただ、決定的なシュートが決まらなかったことなど含め、山田には常に運の悪さが付きまとっていると、思わざるを得ない。
「試合終了の笛は鳴ったけど、ベルマーレの戦い、そして僕の戦いはこれからまだある」と山田直輝。
現在、浦和からの期限付き移籍で湘南に所属しているだけに来季、山田直輝はどのチームの選手としているのか、まだわからない。
ただ、大宮戦で見せた95分間のプレーは‘直輝’の名前のように愚直ながら、光り輝いていたのは確かだ。
(佐藤亮太)
![]() |
2025/07/27
2025/07/27
2025/07/27
2025/07/27
2025/07/27
2025/07/27
2025/07/27
2025/07/27
2025/07/26
2025/07/26