今、浦和レッズに必要なのは、良いサッカーではなく、勝利だ。そのために全員でゴールを目指している。と同時に、再現性のあるサッカーは出来ているか。このテーマを、マティアス監督のもとで、選手たちは、常に自分たちに矢印をむけて問い続けている。
鹿島アントラーズ戦は、前・後半で4本ずつの計8本のシュートが記録された。その多くは、カウンター攻撃の印象だ。試合後、渡邊凌磨は、崩しの手応えを尋ねられた時、「カウンターなので、崩したという手応えよりも、ちゃんとブロックを作って守れた、という、そこから出て行けた、というところに関してすごく良かったし、それを決めていく作業だったと思います」と総括。
ただ、一括りにカウンター攻撃と言っても、この時、凌磨が前提として「守る時間が多かったという意味ではなく、守らなければいけない時間を攻撃にまわせた(凌磨)」と話していたが、自陣ゴール前にベタ引きの、守備一辺倒だったわけではないのが鹿島戦だった。
レポートで何度か紹介している中島翔哉の考え方、“守備って、相手のボールを奪いに行って、それが攻撃に繋がるので、(守備を)攻撃の一種というか、そういう感じでやっています”に通ずるものがある。ゴールという目的のために、球際に厳しく、ボールを奪取し、相手陣内でスピードとテンポをあげた結果が、鹿島戦の攻撃の印象だ。
と、見応えがあった試合だが、どこかに違和感を覚えた方もいるのではないか。カウンター攻撃というリアクションの形が多くなった部分や速攻の連続を切り取ると、キャンプから構築してきた、試合をDominateするような攻撃の形とは異なるのではないか、と感じる。その1人が興梠慎三だった。
「カウンターで攻める形が多かったので、カウンターサッカーになったのかな?とちょっと思うけれど」と、ひと言。もちろん、興梠は「チームの結果が出ないからこそ、何かを変えないといけない時だと思いますから」と、時にゴールを奪うという目的の手段が変わることはある、と理解している。その上で興梠が求めたのは「監督がいつも、日々の、この練習のトレーニングが大事だと言って、いつもハードワークして、試合のために練習していますが、それをもう少しギアを上げてやらないといけないと思います」と、1人1人の向上を挙げた。
選手たちも、カウンター攻撃に変更したとは口にしていない。
鹿島戦直後、大畑歩夢は「1人1人の強度をもっと上げていけば、もっと楽に、自分たちの攻撃で動かせると思うので、もっと上げていかないといけない」と話し、ベンチで出番を待つ佐藤瑶大は、19日(月)の練習後、「今、ちょっとあると思うので。前に蹴って、セカンドボールをひろってカウンターで、というサッカーで良し、という。良いけれど、でも、チームがキャンプからやっていることとはちょっとズレていると僕は思いました」と正直な胸の内を話し、「監督と話をした時に、この数試合、僕は、ビルドアップのところで、チームがビビっているように感じているので、チームが立ち戻る場所として必要なところなんじゃないか、と言いました」と、マティアス監督ともコミュニケーションを図っていることを明かした。
「いつも試合は、僕のプレースタイルだったりとかを当てはめて観ています。自分はプラスになれるな、といつも思いながらやっています。ビルドアップで、僕のところで解放できるなと思いますし、ボールの持ち方だったり、いかに前をのぞきながら、サイドバックの選手に当ててあげるかだったりとか。センターバックから縦パスが入らないと、横パスとロングボールのみになってしまう、というか、相手がハイラインで保ててしまうので、そこのところは、僕は変えられるなと思っています」と話し、腕まくり。レポートでは、前迫雅人コーチとの自主トレで意識していることも振り返っている。
凌磨は試合後、「(鹿島戦でも)もうちょっと、ボールを保持して良かったかなと思うシーンもあったので、そんなに前に急がず、川崎戦も、ちゃんと守る時はブロックを作って、攻める時は流動的に、今まで僕たちが点をとってきた形を出せれば良いかなと思っています」と話していた。速攻、速攻の連続だけではないと、次なる試合をイメージした。
積み上げてきた形と現実の間で、焦れたら、そこに溝が生まれ、失点のリスクに繋がる。待ったなしの現状。どちらの手段をとるかを、ピッチに立つ全員が同じ絵を描くことが重要だ。ともかく話して、話して、話し、考えをすり合わせ、シュートを打ちきる。その繰り返しによって、対戦相手が無視できない選手を1人でも増やしたい。
画像:今、相手が無視できない選手