「具体的な活動内容などは、正直、理解できていないけれど。まず、浦和レッズが好きだという気持ちが、皆さんの根底にあると感じています。でも、たとえ、レッズを好きだとしても、自分の時間をクラブのために使ってくれる、使いたいと思う、とか、労力……。って言うと、皆さんは、“労力にならないよ”と言ってくれるかもしれないけれど、チームやクラブを愛している気持ち、その思いの中で、自分はスタジアムに集まるファン・サポーターのためにサポートするんだ、したいんだ、と無償で活動してくれる人たちがいるというのは、感謝の言葉しか出ない。サポーター100人いて、100人が出来ることじゃないと思うから。スタンドから声援を送ってくれる、ファン・サポーターと同じ熱量で埼スタにいてくれることはありがたいし、それをやってくれるのが当たり前ではないことを感じなければいけない」
6月某日。岩尾憲は、レッズプレス!!の取材にそう言った。
今回の『REDSPRESS EYES』取材テーマは、一般社団法人浦和レッズ後援会。
皆さんは、その存在をご存じだろうか。
埼スタに足を運ぶ機会が多いサポーターの方に「浦和レッズ後援会を知っていますか?「スチュワードを知っていますか?」と尋ねてみた。
「聞いたことはあるが、どんな活動をしているのかは知らない」
「SNSで名前だけ見たことはあるが、活動内容は分からない。スチュワードという言葉も初めて聞いた」
「聞いたことがある。ただ、何をしているのかは分からない。スチュワードは、ボランティアスタッフの方々ですよね。席案内やゴミを拾って下さっているイメージがある」
「バスツアーがあったり、レッドボルテージで買い物をした時、“(グッズ割引のある)後援会の方ですか?”と尋ねられるので、その存在は知っていた」
「後援会の活動内容は分からないが、スチュワードは友人がやっているので、よく知っている。レッズへの愛情をたっぷりと感じる」
「遠征ツアーや納会の開催があるイメージ。スチュワードの皆さんには、子供が小さい時にベビーカーを預かって頂いたことがある」
このような答えが返ってきた。
浦和レッズ後援会の活動の目的として、まず、“浦和レッズが世界一のクラブになるための支援”を掲げている。歴史は、Jリーグ元年にさかのぼる。1993年2月に設立され、2016年に一般社団法人化された。設立当時はアウェイゲームの応援ツアーが軸となり、その内容は、奇想天外にもほどがあった。
代表的な出来事は、1996年の横浜フリューゲルス戦の応援。浦和駅からバスで荒川へ行き、船に乗り換え、荒川をくだり、東京湾から横浜港へ。入港する時には、Lフラをなびかせて乗りこんだ。今夏、セーヌ川で開会式を行うパリ五輪にも、この異常なまでの光景、盛り上がりを伝えたいぐらいだ。
こうした応援の支援に始まり、1995年からは、公式戦の試合運営のサポートが本格化する。ホームの埼玉スタジアム2〇〇2や浦和駒場スタジアムで活動するスポーツボランティア、愛称「スチュワード」は、浦和レッズ後援会の個人会員で構成されている。まさに今、後援会の活動の柱となっている。
近年、スポーツにおけるボランティア活動に注目が集まっているが、埼スタのホームゲームも、スチュワードの存在なくして成立しない。試合日の会場のコンコースやスタンドなどに、緑や黄のベストを着用したスタッフを目にしたことがあるだろう。“後援会の活動なのか”と驚かれた方もいるかもしれない。
スタジアムの各種案内や座席案内、迷子などの対応もある。各インフォメーションにはタブレットPCが設置されるようになった。ベビーカーの預かりサービスも好評だ。また、車いす観戦者の補助だけではなく、クラブは今シーズンから、ほじょ犬(盲導犬)を伴う方々にもサッカー観戦を楽しんでもらいたいと、足もとで盲導犬もゆったりとできる車いす席の案内を開始した。
となると、スチュワードも、2月に実施した「2024年第1回スチュワード研修会」の中で、日本盲導犬協会から盲導犬ユーザー受け入れのレクチャーを受けた。その他、スタジアム美化の一環として、ゴミ分別の啓蒙活動などと、サポートは多岐にわたる。スタジアムを離れても、スチュワードの姿は、レッズランドなどでの後援会やクラブ主催のイベントにあり、運営をサポートしている。
選手やサポーターが、細かい部分まで活動内容を知らないのも無理はない。サポートを受ける側のクラブスタッフでさえも、細部を知る者は限られた人数だろう。かくいう、筆者も。選手がピッチで戦う最中、サポーターが力強くチームを後押しする最中に、スチュワードの活動が存在する。業務によっては、コンコースやピッチに背を向けながら。埼スタにいながら、離れたところでボルテージを感じているのだ。それでも、“浦和レッズのために”と、時代に応じて、日々情報をアップデートして活動するスチュワードを軸に、浦和レッズ後援会の活動を知っていこう。
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