WEリーグの素晴らしさや魅力は試合後にもある。そう感じた日テレ・東京ヴェルディベレーザとの開幕戦だった。
アディショナルタイム5分が過ぎ、終了のホイッスルが鳴った瞬間、ベンチにいた選手がピッチになだれ込み、疲労困憊のチームメートに駆け寄った。
決勝弾を決めた塩越柚歩に。その塩越にパスを出した途中投入の島田芽依に。そして終盤、足をつりながらも最後の最後まで走り続けた‘ねえさん’安藤梢に。
そこには喜びの輪があった。
「なんだか優勝したみたいな感じになってしまった(笑)。冷静に考えれば、リーグ戦の1試合だけど大事な勝利」と振り返る猶本光。
仲間に駆け寄る先頭にいたのは他ならぬ猶本だった。後半25分にベンチに下がった猶本。戦況を見つめる中、いつしかピッチに向かって声を出していた。
「スタジアムにお客さんがいても、まだ声を出せない中、ピッチにいる選手に声をかけられるのは自分たちだけ。だからみんなで声をかけようって」
その声が届いたような逆転勝利。喜びもひとしお。
「ピッチにいっちゃいましたね、みんな」と猶本。
一斉に仲間に駆け寄ったのは本能的に心を激しく動かす衝動そのもの。まさにチーム全員で勝ち取った勝利となった。
この開幕戦はただの開幕戦ではなかった。戦前、楠瀬直木監督は開幕戦というより昨季、皇后杯決勝で敗れた東京NBへのリベンジ、もう一度できるという再戦の気持ちが強かったと繰り返し語った。
その思いがピッチで醸成された。
「球際の激しさ、お互いにハードワークしていたことは大前提。その中で相手をいなしたり……試合自体、のんびりしていなかったというか……バチバチやっていたことが面白さにつながった」
そのムードが見ている人たちにサッカーの、WEリーグの面白さが伝わったはずだ。
勝ちたい気持ち。これは昨季、リーグ優勝を逃した東京NBも同じ。いや、それ以上だったかもしれない。
歓喜の輪の一方、悔しさでピッチにうずくまる東京NBの植木理子。技ありの先制点とともに、再三浦和ゴールに迫り、シュート数は両チーム最多の5本。
もう1本、決めていれば……そんな思いがこみあげていただろう。その植木に浦和の高橋はなが近づき、屈みながら、なにか声をかけ、手を貸す姿があった。
同じ瞬間に織りなす悲喜こもごも。ピッチが想念のるつぼと化していた。
WEリーグに関してはプロ化のタイミングや意義、観客動員数の問題など、不安視されている。これらの課題はすぐに解消されないだろう。
それでも、これだけのゲームを毎試合見せてくれれば、裾野は必ず広がる。そして熱く、たおやかなリーグになる、そう感じた開幕戦だった。
・・・・・・