back

REDSPRESS EYES|青木拓矢、ピッチにいなくて初めて存在が分かる、稀有な選手|レッズプレス!!

top
青木拓矢、ピッチにいなくて初めて存在が分かる、稀有な選手

レッズを離れる選手について、記者が思い出を語ります。今回は、FC東京への移籍が決まった青木拓矢選手について。


(佐藤亮太)

青木拓矢、ピッチにいなくて初めて存在が分かる、稀有な選手

埼スタのピッチからいなくなり、初めてその存在感が分かる選手。それが青木拓矢という選手である。

2014年、大宮アルディージャから加入。禁断の移籍とも言われた。青木は、どれほどの選手なのか?当時、アルディージャ担当の記者からは「青木が抜けて、大宮の攻撃は誰が組み立てるのか?ボールを扱える選手がいなくなった」と嘆き節が聞かれ、そう思った。

中盤の底で相手からボールをかっさらい、奪って左右に大きくボールをさばく。

攻守の要として期待され、ミハイロ・ペトロヴィッチ監督のもと、即レギュラーと目されたが、そう簡単なものではなかった。

このシーズンの強化キャンプ。練習試合で相手選手と接触した青木は、左腎損傷で出遅れた。存在感を示したのは、ヤマザキナビスコカップ予選グループ第2節(4月2日)、古巣・大宮相手に勝ち越し弾を決めた時。リーグではベンチスタートで、途中出場が多く、リーグ戦以外での起用が多かった。

より青木の存在意義が示されたのは、ミシャが去った2017年夏以降。指揮官が堀孝史監督に代わってからだ。4−1−4−1のアンカーでの起用がドはまり。その後のオズワルド・オリヴェイラ監督、続く大槻毅監督でも重用され、特にACLの舞台では、屈強な選手らを相手に、強さと巧さを発揮した。

青木が前に飛び出す時は、チームがうまく回っている時であると、青木の動きを、試合のひとつの指標にして見ていたものだ。ただ、残念だったのが、ほぼ毎年、シーズン前にケガで出遅れていたこと。また、うまく流れに乗れていたとしても、シーズン途中でケガに見舞われることが多かった。

そして、もう1つ。プレーの幅の広さ、その器用さゆえのミス。

思い出されるのが2019年5月3日、J1第10節のホーム埼スタで迎えたジュビロ磐田戦。0−0で迎えた試合終了直前、青木のバックパスがFWロドリゲスに奪われ、失点。チームは敗れた。結果、その後のリーグ戦は名古屋、湘南、広島に4連敗。オリヴェイラ監督契約解除につながった。

試合後のミックスゾーンで記者に呼び止められた青木。いつもは負け試合でも、淡々と話すが「きょうはいいでしょ」と2度、繰り返し、選手バスに乗った。

数か月後、なぜ、磐田戦でミスを犯してしまったのか。

青木に聞くと「やることが多すぎた。タスクオーバーです」とひと言。

前後左右に目と気を配りながら、バランスをとり、攻守に走らなければならない。その能力の高さ故に課される仕事は多く、重要かつミスが出てしまった。もう1人、青木がいれば、スムーズになったことは間違いない。プレーはセンシティブかつ大胆だが、取材する際の青木は、どこかボーっとしていてとらえどころがない。その風貌でサポーターから「カピバラ」「カピ様」と呼ばれていた。

本当のことを言いたくないのか。それとも、こちらの聞き方の問題なのか。

時折、禅問答のようなやり取りになる。

その一方で、会話のなかに言いたいこと、本質を混ぜてくる。なかなかの記者泣かせだ。
時間をおいて、同じ質問をして、その意味が分かることはしばしばあった。

また、武藤雄樹とはランニングはいつも一緒。大原サッカー場では、夫婦と呼ばれたほど仲が良かった。

記者の間ではプロゴルファー青木功になぞらえて、「世界のAオキ(エーオキ)」と命名された青木。新天地でもピッチにいなくて初めて存在が分かる、稀有な選手として評価されるはずだ。

(レッズプレス!!佐藤亮太)


・・・・・・

ログイン・会員登録はコチラから
すべての記事をご覧いただくには、会員登録が必要です。
※既に会員登録済みの場合、ログインを行うことで閲覧可能となります。



(c)REDS PRESS