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REDSPRESS EYES|榎本哲也、魅力輝く場所に戻るため|レッズプレス!!
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榎本哲也、魅力輝く場所に戻るため
榎本哲也、魅力輝く場所に戻るため
「テツ? 2部練習を組むなどして、必死に(コンディションを)上げているところだよ」。4月29日(日)の練習後、土田尚史GKコーチはそう教えてくれた。テツとは、榎本哲也だ。チーム最年長で最古参の平川忠亮と同じ、2002年にプロになった17年目のGK。5月2日で35歳になった。榎本は今、大原サッカー場のピッチに立ち、全身全霊でサッカーに打ち込んでいる。
15連戦の最中であるにもかかわらず、榎本が積極的に練習時間を増やすのは、公式戦の舞台に上がるだけのコンディションに戻すため。あれは3月5日のこと。レッズプレスは、榎本の右ひらめ筋の肉離れという広報発表を記事で伝えている。振り返れば、キャンプ中から身体の張りなどが多く、ここまでリハビリに時間を費やしたと言ってもいい。「結構、長い時間休んでしまった。思った以上に長かった。チームの人にも、ドクターやトレーナーにも迷惑をかけた」と榎本も話す。
以前から、榎本哲也という選手は頑張りすぎるところがある。「(痛みがあっても)無理やりやっていたこともあるし、(横浜F・マリノス時代も)肉離れしながらプレーしていたこともあった」と話す。浦和レッズ加入2年目となる今季、彼がここまで我慢したのはチーム状況も関わっていただろう。「どこかでチャンスが来ると思った分、頑張ってしまった」と言って、頭をかいた。
「もう少し、自分が早めに自分の身体と向き合ってチームに正確に伝えていれば、今頃、余裕でチーム練習に加わっていたはず」と話す。肉離れは、他に足の痛みがあったのをかばった結果だという。当時は痛みで地面に足をつけるのもためらうほどだったそうだ。プロ17年目、初めて経験した怪我だった。それだけに「まだやれる、まだやれる、大丈夫だ」と榎本の判断を迷わせたのだろう。
悔いはないと言うが、唯一、榎本は「もったいない」という言葉を口にした。たしかに今季のJ1リーグのカレンダーは、ワールドカップ開催により、5月中旬までにリーグ戦のおよそ半分の試合を消化する。さらに水曜日にはカップ戦もあり、練習のピッチにさえ立てない毎日がとても残念に思えた。
4月も半ばを過ぎ、ようやく榎本にGOサインが出た。チームへの完全合流までの期間、GKらしい練習メニューを徐々に増やし、何度も土田GKコーチと身体の状態を確認した。メニューが終わったあとはランニング。「無理するなよ」という声が彼の耳に届いた。手を挙げ、了解と言わんばかりのサイン。その顔は、生き生きとしていた。
話を聞いた日も、最後までグラウンドにいた。「あしたの自分の身体が怖い」と迫りくる筋肉痛の恐怖を前に苦笑。そして、榎本は「GKはジャンプし、ボールをキャッチしてピッチに倒れるだけでも強い負荷がかかる。キャンプではその動作に耐える身体作りをやってきたが、2、3週間でも飛んでいないと、もう1度身体を作り直さなければいけない。飛ぶだけでムチウチみたいになる時もある。首とか肩とか、腰とか。あしたが本当に怖いんだ」と笑って話した。
「ま、仕方がない。年寄りなので、身体を目覚めさせるのに時間もかかるし」と言って、大きな口を開けて笑った榎本は「ドクターとトレーナーには迷惑をかけた。そのみんなと一緒に、このリハビリ期間でケツ周りとか、バランスよく筋肉量をつけることができた。ピッチの外で鍛えた部分をうまく使って、これから戦っていく。大丈夫。無理はしない。周りの方がここまで自分のことを考えてくれながらメニューを組んでくれた。今度はちゃんと周りの言葉を聞く。……本当はね、早く復帰して、うまくいかなくても少しくらいはやりたいけれど」と本音を覗かせ、クラブハウスへ戻った。
その言葉から数日、チーム練習の輪の中に榎本がいた。プレーの感覚には、当然ながら自信はある。完全合流を果たした今も、“正GK争い”という土俵には上がれていないと控えめに言う。「あと1週間くらいかな」とポツリ。それでも、きょうのような練習を繰り返す中で、本来の榎本哲也が戻ってくるはず。その日を焦らず、焦らさずに待ちたいものだ。ゴールマウスの前に立つ彼はやはり魅力的だ。
(有賀久子)
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