浦和レッズパートナー:株式会社エスプリライン(『スピードラーニング』)〜レッズ仕様の教材の中身は!?〜
多角的な視点で浦和レッズに迫るコラムコーナー「REDSPRESS EYES」。今回は、有賀久子記者が浦和レッズのパートナー、株式会社エスプリライン(『スピードラーニング』)の取材・執筆を担当しました。
日本代表主将の長谷部誠に現役引退後のプランが提示された!?
年始、ドイツ・ブンデスリーガのフランクフルトが「長谷部がキャリアを終えた後には重要なポストを用意する考えがある」と、クラブの方針をメディアに伝えた記事を目にした。あくまでもクラブ側が「長谷部の引退後の話」という過程で発信した事柄だが、真っ先に感じたのは、ドイツへ渡って9シーズン目に挑んでいる長谷部の語学力は、伝統あるクラブの要職を任せられるほどに伸びているのか、という驚きだった。
世界各国で愛されているサッカーは、スポーツの中でも「言葉の壁がない」と言われる。だが、トップレベル、つまりプロの世界においては別だ。技術や豊富な運動量のみならず、戦術理解度の高さを要する。通訳を介す時間さえも惜しいとされる厳しい世界で、外国籍選手に通訳を用意しないクラブも珍しくない。日本人だろうと誰であろうと、語学力は成功の裏に隠されたカギになる。
とはいえ、海を渡った多くの選手が語学力ゼロからのスタートを切っている。長谷部だって、2008年1月に離日する時には「(活躍するためには)通訳がいらないくらいに言葉を覚えるのは必要なこと。だから、ドイツ語は勉強中。本も買った。……もうすでに少し挫折しているけれど」と不安そうに話し、周囲が心配したくらいだ。あれから9シーズンも異国の地に暮らせば、日常生活を含めてさまざまな場面で、数え切れないほどつまずいた経験があるだろう。ほかに浦和レッズOBではないが、「言葉が分からない」という極めてシンプルな理由で本来のパフォーマンスを発揮できず、挑戦半ばで帰国した日本代表クラスの選手もいた。
ここで考えるのは、同じサッカーの舞台において、前者の長谷部は成功を遂げ、後者は「語学力」が壁になったという大きな違いが生じた現実だ。世界との距離が近づく昨今、語学力は自身の可能性や視野を広げる武器になる。長谷部はその武器を身につけ、活躍の場を広げた。そして選手としてだけではなく、1人の人間として大きな信頼を得るまでの関係性を築き上げることができた。
「『英語を話せるようになる』ことは目標に見えますが、中間地点のようなもの。英語を話せるようになって『何がしたいのか』というモチベーションや夢を持つことで、英語に限らず、語学は身体に入ってくると思います」と話すのは、埼玉県川越市に本社を置く、外国語教材『スピードラーニング』でおなじみの株式会社エスプリライン・大谷佳COOだ。同社は、数々の言語の中でも「英語」に軸を置き、1989年から英会話教材の開発、販売を開始した。その英語は、今や、世界中で17.5億人、つまり、日本の人口のおよそ14倍の人々がコミュニケーションに使い、そのニーズは増すばかり。また現在では中国語や韓国語、フランス語など、取り扱う言語は多岐にわたる。
エスプリライン大谷佳COO
昨年6月、同社は埼玉県企業という共通項から浦和レッズと数度のミーティングの機会を持ち、2015シーズンの最中であったが、オフィシャルパートナー企業となる契約を締結した。創業者である大谷登CEOと、ミーティングに同席した大谷佳COOは「クラブの皆さんとは、初回の顔合わせから意気投合されていました」とCEOの様子を振り返った。
「プロスポーツクラブに属する選手や社員の皆さんは、世界とのつながりの先頭に立っています。一般の方であれば、いつか英語を使えれば、いつかビジネスチャンスにつながればと考えると思いますが、プロスポーツクラブでは、世界の選手やクラブの幹部と会話する機会をどこで持つか分かりません。実際に今季、AFCチャンピオンズリーグへ連続出場を果たされます。また、チームに外国籍選手などを迎える立場でもありますね。英会話は、コミュニケーションの大切な手段。選手や社員の皆さんには英語を習得し、世界中に友情の輪を広げてほしいと思います」と契約締結の意味を示した。
提携内容が、実にユニークだ。クラブは、エスプリラインの英会話教材『スピードラーニング』のノウハウに富んだ、浦和レッズ仕様にカスタマイズされた教材の製作を要請。エスプリライン側はクラブに対して、浦和レッズ仕様、つまりサッカーにおける必要なシチュエーションは何かをヒアリングしながら、必要な項目を提示した。初回のミーティングから、約2カ月後には教材の形が見えていた仕事の速さ。
今回は、教材の中からレッズプレス!!に「ロッカールームにて」「入団会見」「インタビュー」をピックアップし、その一部を披露してくれた。
Shooting for Victory
勝利を目指して
1.In the Locker Room
1.ロッカールームにて
Hashimoto:Which defensive midfielder should be in the higher position?
橋本選手:ボランチの2人は、 どちらが上がり目ですか?
Manager:I want Segawa to be positioned high and Hashimoto to be low.
監督:瀬川が上がり目で、橋本は少し下がり目。
Manager:But if there’s an opening, push up.
監督:チャンスがあったら、どんどん前に出ていくように。
7. A Signing Interview
7. 入団会見
Hayashi:I can’t wait to play in front of a filled stadium where everyone is wearing red.
林選手:早く、真っ赤な満員のスタジアムの前でプレーしたいです。
Reporter:Please give us a message for the fans.
メディア:ファン・サポーターへ一言お願いします。
Hayashi:I’d like for the fans to help us win a title for the Urawa Reds.
林選手:浦和レッズのタイトル獲得を目指して、応援してくれるファン・サポーターの皆さんのために頑張ります。
8.An Interview
8.インタビュー
Reporter:You’re on a winning streak at home. Give us your thoughts on that.
メディア:これでホーム連勝ですが。それについてコメントをお願いします。
Nose:We’re using our ideal play style, and I think that’s led us to these results.
野瀬選手:今は自分たちのサッカーができているので、それが結果につながっていると思います。
Nose:Also, we have amazing support from our home crowd, and that makes a big difference.
野瀬選手:また、ホームでサポーターの大声援を受けて戦えるのも、大きな勝因だと思います。
チームを代表して、エスプリラインのCMキャラクターを務めるGK西川周作とDF槙野智章は、手にしたこの教材を「海外遠征やバス移動の間(西川)」「家と練習場、車の中で(槙野)」で聞いているそうだ。槙野にいたっては「練習場にはスピーカーを持参し、爆音で流しっぱなし。チームメイトも聞かざるを得ない状況」を作っているらしい。西川は「サッカーに関する話なので分かりやすいし、内容がすっと入ってきます」と話した。
教材はスマホでも
彼らにとって、題材がサッカーであることは大きいだろう。それがまさに浦和レッズ仕様にカスタマイズされた教材の魅力だ。エスプリラインでは、聞き流す英会話教材『スピードラーニング』を通じて、まずは「英語」に耳を慣らすことを大切にしている。そこから聞き慣れたキーワードやフレーズから、相手が何を伝えたいのかを瞬時に理解する癖をつけ、さらには会話を通じて、日本と他国の文化や習慣の違いなども感じてほしいと考えている。
教材は会話調。全体を見ると、遠回しに感じられそうな文章も含まれているが、それは会話全体をかたまりで理解し、自分の言葉で思いをかわすことを目指しているからこそだと言う。大谷佳COO「スクリプト(台本)には、こだわりがあります。世界各国、文化にはさまざまな違いはありますが、アメリカで作られている教材では、日本人がカルチャーショックや感動を覚える、アメリカ人の何気ない日常生活や、文化が割愛されてしまう場合があるのです。なので、日本人でありながらも、海外経験があるスクリプトライターを起用しています。サッカーの教材を作るにあたり、同じくスクリプトライターにこだわりました。クラブ側とのヒアリングを重ね、今回は、サッカーのことも英語のことも分かる若いスタッフが中心となり、じっくりとスクリプトを作り上げました」と話した。
西川と槙野は、大谷佳COOによれば「(選手側から)『僕がやりたい』と手を挙げた」そうだ。大谷佳COOは「彼らは日本代表の選手であり、槙野選手はドイツでのプレー経験もある。きっとどこかで『もっと会話ができれば……』と考えた場面があったのではないでしょうか。自ら教材に取り組みたいという熱い気持ちが感じられ、うれしかったですね」と表情を和らげた。
爆音で流す、槙野智章
2016シーズンの新たな取り組みは、これからクラブ側と細かな話し合いをつめていくという。大谷佳COOは「タイトルに向けて、チームの願いは強く感じています。新しい外国籍選手もチームに加わりました。(外国籍選手をサポートするには)サッカーレベルのコミュニケーションだけではなく、(日本人選手による)日常レベルの英会話も重要になるでしょう。それがピッチでの信頼関係にもつながると思います。選手の皆さんには、英語をいろいろな場面で使ってほしいですね」と願っていた。
新たな取り組みに向けて、希望を挙げるとすれば、チームに選手の実践披露の場を設けてほしい。槙野は「(ズラタンの側で)英語で積極的に話すようにし、英語が飛び交う環境を作っています」と教材をより生かすための工夫を教えてくれた。西川は「外国人レフェリーにあいさつへ行った時、英語で話し掛けられても、何を言っているのか、だいたい分かりました」と手応えを話した。聞けば、西川はプライベートでハワイへ行った時も、ホテルのスタッフが話す英語を理解でき、小さな喜びを味わっていた。
試合で習得手応えあり、西川周作
完璧ではなくても、選手である彼らが英会話に取り組む姿を見せることで、これからプロサッカー選手を目指す子供たちや英語に触れている学生に、良い刺激を与えられるのではないか。と、その前に。われわれメディアもズラタン、ブランコと英語でコミュニケーションを図れるようにならなければ。「『英語を話せるようになる』ことは目標に見えるが、中間地点のようなもの。英語を話せるようになって『何がしたいのか』がモチベーションになる」という大谷佳COOの言葉が印象に残った。
(有賀久子)
(完)
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