2014年シーズンに向けての準備を着実に進めている浦和レッズ。選手たちからは「ミシャサッカーの浸透」という言葉が聞かれる。また、日々、練習を観察している番記者たちも、そうした実感は得ている。
しかし、ミシャ体制1年目の2012年シーズンが3位だったのに対し、2013年シーズンは6位と、順位の上では「後退」という結果になった。そこで、選手や番記者の主観を抜きに、データ上はどうだったのか? Jリーグの、さまざまなデータを分析しているデータスタジアムに、浦和レッズの13年データ分析と、過去のデータから見える14年の展望を聞いた。
※対談には、『レッズプレス!!』から河野正記者、佐藤亮太記者、有賀久子記者の3人(以下、全て「RP」と表記)と、データスタジアムから滝川有伸さん(以下、全て「DS」と表記)が参加しました。
◆選手データから見えるミシャサッカーの特徴
RP:今回はデータ分析、および、対談に参加していただき、ありがとうございます。
DS:こちらこそ、よろしくお願いします。早速ですが、浦和レッズ所属選手の「スタッツ」(※データ、成績などの意)を集計しましたので、見てください。
RP:おおっ!
・得点
・アシスト
・シュート
・パス
・スルーパス
・クロス
・ドリブル
・空中戦(敵陣)
・空中戦(自陣)
・タックル
・インターセプト
DS:「得点
」は『レッズプレス!!』でも掲載されていますし、リーグ全体のランキングもご存じと思うので割愛します。次に「アシスト
」ですが、柏木陽介選手の12は、リーグトップの数値となっています。
RP:リーグ全体の2位以下の選手を教えてください。
DS:2位は11アシストで、川崎フロンターレのレナト選手と、柏レイソルの田中順也選手。4位は10アシストで、サンフレッチェ広島の高萩洋次郎選手、FC東京の長谷川アーリアジャスール選手となっています。
RP:「得点
」と「アシスト
」は、どういった種類のプレーか想像できるのですが、残りのデータに関しては補足をお願いします。
DS:まず、「シュート
」はシュート数と、その成功率です。1トップの興梠慎三選手よりも、2シャドーの柏木選手と原口元気選手の方が多いことが特徴ですね。あと、槙野智章選手のシュート数は、DFの中では突出しています。
RP:興梠選手は、データからも指摘される通り、「何が何でも自分で打つ」というタイプではなく、必要であればパスを選択できるタイプですね。あと、槙野選手は……(笑)。やはり、そうでしたか。
RP:「ドリブル
」は、予想通り、原口選手の数値が高い。ただ、左サイドの槙野選手と、右サイドの森脇良太選手では、数値に差が開いています。両サイドともバランスよく、攻撃参加できていた印象なのですが……。
DS:「ドリブル
」は、定義について補足すべき点が多いですね。まず、相手と対峙(たいじ)した場合に発生するプレーということです。1対1での「仕掛け」と考えてください。そして、次のプレーができれば成功となります。相手を抜き去らなくても、フェイントで横にズレて攻撃的なプレーを行った場合も成功としています。森脇選手に関しては、1対1の状況となる前にパスを出せているのではと思います。
RP:原口選手の「ドリブル
」はリーグ全体から見て、どうでしょうか?
DS:ドリブルの回数で言えば、原口選手はリーグ6位ですね。なお、成功率は、平均が約50パーセント。梅崎司選手や平川忠亮選手は高い方ですね。
RP:「パス
」の数値は高いですね。
DS:「パス
」はパスの回数と成功率なのですが、合計のパス回数はリーグでも上位となります。「スルーパス
」は、「意図を持って、相手のオフサイドラインの裏に出したパス」としています。また、ボールの高さは選手の身長以下としています。
RP:このデータからも、柏木選手が攻撃の起点となっていたことが証明できますね。成功率は高い方なのですか?
DS:成功の定義を説明すると、味方にボールが渡れば成功となるのですが、成功率に関しては平均をやや下回っています。
RP:「クロス
」についてはどうでしょうか?
DS:まず、「クロス
」にはCKなど、セットプレーの数値は含まれていません。そして、先に味方がボールに触れば、成功となります。浦和は、チームの総数として、「クロス
」が少なめです。ただ、平川選手の成功率は高い方ですね。
RP:梅崎選手の成功率が低いのですが、これは意外です。チャンスを作っている印象なのですが……。
DS:確かに、梅崎選手の成功率は低い方ですが、クロスからのアシスト数は少なくありません。
RP:成功率は低いのは、「通れば1点」のような内容だったから?
DS:選手がチャレンジをしているかどうかは、数値としては出しにくい部分ですが、おそらく、そうではないかと思います。また、味方選手が、「空中戦(敵陣)
」に勝てるかも重要となります。空中戦の定義は、両者が空中に浮くプレーで、ボールに触れた方が勝利となります。
RP:興梠選手が最前線で体を張っているという印象通りです。
DS:ただ、チーム全体としては少ない方ですね。ちなみに、チーム戦術も影響していると思われますが、リーグトップのサガン鳥栖・豊田陽平選手は、興梠選手の約5倍、400回以上、敵陣で空中戦を行っています。
RP:チームの戦術によって、そこまで違うのですね。
DS:はい。そのため、どの数値が高いから優れた選手だとは、一概に評価できないのです。
◆浦和の守備における問題点
DS:「空中戦(自陣)
」は、「空中戦(敵陣)
」とは裏返しのデータとなります。なお、空中戦の勝率に関しては、身長とほぼ比例しています。チームNo.1の那須大亮選手のスタッツ、63パーセントは悪くない数字ですが、横浜F・マリノスの中澤佑二選手などは、70パーセントを超えているので、課題の1つではあると思います。
RP:「タックル
」はどうでしょうか?
DS:「タックル
」は、相手のボールを蹴りだし、自軍のボールとなったら成功となります。平均は約75パーセントです。
RP:原口選手の成功率が低いですね。
DS:タックルの成功の内訳は、タックルをした選手自身がボールをキープした場合と味方の選手がこぼれ球を拾ってくれた場合に大きくは分かれます。この数値だけでは、原口選手のタックルの方法が悪いのか、周りの選手のフォローが悪いのか、判断することはできません。
RP:チーム全体としては、どうでしょうか?
DS:下から4番目の数値ですね。ただし、チーム戦術の問題もあるので、多ければ多いほど良いとは限らないですが。
RP:「インターセプト
」も少ないのでしょうか?
DS:12年に比べると増えてはいるのですが、それでもリーグ全体で見ると中位ですね。なお、「インターセプト
」は単に相手のパスをカットしただけでなく、能動的な「読み」を行っていることが条件なので、数値のカウントは厳しめになっています。
RP:ちなみに、守備のスタッツが高いチームはどこなのでしょうか?
DS:アルビレックス新潟は、「タックル
」や「インターセプト
」の数値が高いですね。しかし、リーグ最少失点だった広島が、それほど高い数値ではなかったことにも留意する必要があります。
RP:新潟ですか。昨季、新潟に期限付き移籍していた濱田水輝選手も、守備練習がハードだったと言っていましたね。そのほか、浦和の守備の問題点が分かるスタッツはあるのでしょうか?