苦しい試合を勝ち取った原動力は『フォア・ザ・チーム』
苦しい試合だった。
京都府亀岡市の気温は6.8℃。極寒の中の120分間、さらにPK戦までもつれこんだこともあるが、なにが苦しいって攻めに攻めた浦和が新潟をこじ開けられなかったことだ。
ゴール前に人数をかけ、ひとりサイドに流れるものなら、2人、3人と囲む新潟に対し、浦和はサイドから、中央からとあの手この手で崩しにかかったが、どうにも2点目が遠かった。
シュート数は浦和の12本に対して新潟は5本。それでも決定的なシーンで言えば、新潟に軍配が上がる。
新潟・奥山達之監督は「浦和にそこまでシュートを打たせなかったし、危険な場面は作れていた」と胸を張ったように、得点となった24分を含め、55分、105分と最低3回はあった。
攻めているのに攻めきれない。守れてはいるが、サイドを起点にした新潟のカウンターは高精度。
正直、延長戦になる前に負けていても仕方ない展開だった。
それでも粘りに粘ってPKで勝てたのは、これまでの積み重ねがモノを言ったからだ。
浦和はこれまで通り、セカンドボールを卒なく拾って、マイボールにしてすぐに展開。これを120分繰り返し、ポジションに関係なく、相互補完を貫いた。
焦らず、フォア・ザ・チームで進められたからこそ勝利を引き寄せられた。
フォア・ザ・チームといえば、飲水タイムなどでベンチメンバーが甲斐甲斐しく手伝う姿や延長戦、PK戦のまえの和気あいあいとした雰囲気からうかがえた。
勝利の要因について尋ねられたときに猶本が答えた「ピッチに立つ人たちへ周りの選手が声をかけ、パワーを与えられたからだと思う」との言葉にその一端が感じられた。
先発も控えも戦っている、こうしたチームは苦しいときにこそ強さが発揮される、その良い例となった。
残りは決勝戦。相手は日テレ・東京ヴェルディベレーザだ。こちらは前大会の雪辱を。あちらは今季のリベンジを。
「去年、大勢の観衆中でやられてしまったのですごく悔しい思いはある。その思いを返しにいきたい。選手にも『みんなで勝ち取ろう』『皇后杯を勝ち取ろう』と伝えた」と森監督。
孝行娘たちはきっとやってくれるはずだ。
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