2点差を追いつかれても引き離した采配と対応力
前半が終わって2−0。準々決勝だろうが、雪に見舞われようが、浦和Lはいつものように走り、戦い、ゴールを狙った。
千葉Lの5バックをものともせず、かいくぐり、かいくぐり、セットプレーから先制、さらに技ありゴールを挙げた。
前半のシュート数は、千葉Lの2本に対して浦和Lは11本。5倍以上と圧倒した。
2点差が危険なスコアであることは重々承知だが、後半、このまま行けるだろうと半ば、安心していた。
しかし、好事魔多し。そう簡単ではなかった。後半、千葉Lが突如、豹変したかのようだった。布陣を3バックから4バックに変更。さらに、これが一番の要因だろうが足掛け8年、ゴールを守り、今季限りで現役引退を発表したGK山根恵里奈の存在があった。
「こんな情けないかたちでのラストゲームで終わりたくない」という覇気に満ちていた。
それが森栄次監督や選手たちが感じた勢いというものだろう。
後半立ち上がり、浦和Lが主導権を握ったものの、攻めあぐねるばかり。浦和Lの攻撃に耐性がついた千葉Lに虎視眈々と狙われていた。
キッカケは70分。DF高橋はなを投入してからだ。森監督は高橋を左サイドバックに入れ、サイド攻撃を強めようとした。
しかし高橋が攻めに出た分、後ろに広大なスペースが出てきた。ここを千葉Lに突かれ、74分、77分と同じような展開でやられてしまった。
決して多くないチャンスを2度決めた千葉Lはさすがだが、すぐさま対応できるのが、ことしの浦和L。
80分、FW菅澤優衣香を下げ、MF遠藤優を投入。それとともに高橋を前線に置き、左サイドバックに佐々木を戻してバランスを保った。
この采配が功を奏したのは、試合ごとにポジションが変わっても対応しきれる選手が揃っているからこそだ。実際、その3分後、セットプレーから勝ち越し点を挙げることができた。
昨年までは2点差を追いつかれるとバタバタと慌てたチームがいまは落ち着き払っていることに驚く。
DF清家貴子は「90分で決着がつくと思った」という自信っぷりだ。見ている側は頼もしく思えるが、手放しで喜んでいないのは森監督。
「1点取られたとしても、もう1点取られないようにしのがなければならなかった。追加点を取りにいくところが課題。決められるシーンがなかったわけではないので」と追いつかれる前に、引き離せと言わんばかり。
試合自体は見ごたえがあり、浦和Lとしてはひやひやものの勝利となった。しかし今年、“良いチーム”から“強いチーム”に変貌した浦和Lが、さらに憎たらしいほど強いチームになるには、きょうのようなスキはやはり許されない。
次は中3日で準決勝・アルビレックス新潟レディースとの対戦となる。
「我々が目指すのは変えずにやっていきたい。そこで勝負したい。相手より自分たちが、自分たちのサッカーをして勝っていこうよと伝えている。そこを曲げずにやっていきたい」と森監督が言えば、DF南萌華もDF清家も目の前の相手に勝ちたいと強調した。
追いつかれても取り返す、泰然自若の浦和Lに大きな穴はなさそうだ。・・・・・・