接戦のなか、セットプレーから3ゴール・浦和、4−1で勝利
2017プレナスなでしこリーグ第15節 浦和レッズレディースはホーム・浦和駒場スタジアムで ノジマステラ神奈川相模原(以下・ノジマ)と対戦。
試合は33分。浦和がこの試合初のコーナーキックからMF筏井りさ→DF栗島朱里のクロスに最後はDF高畑志帆が頭で決め、先制。
しかし、9分後の42分。浦和 DF北川ひかるが自陣ペナルティーエリア内でノジマFW石田みなみを倒し、PKの判定。
しかし、主審のミスジャッジにより、PK取り消しという“珍事”で事なきを得る。
こうしたことに動じないのがいまの浦和の強さ。
前半終了間際の45+2分、コーナーキックから今度はFW吉良知夏が頭で決めて、追加点。前半を2−0で折り返した。
試合を決めたい浦和。後半開始から左MF塩越柚歩→FW安藤梢が投入。
52分、そのFW安藤のスルーパスから左サイド・吉良がクロス。こぼれ球にMF猶本光がシュートを打つも、枠外。スタジアムからため息がもれた。
しかし、その3分後の55分にノジマがゴールを奪う。右サイド・元浦和のDF臼井理恵のクロスからFWミッシェル・パオに頭で決められ、2−1の1点差に。
その後、前に出る浦和だが、ノジマに裏を取られる場面が見られるようになった。
2−1で迎えた70分。浦和FW安藤がひとりで持ち込み、左足一閃。ネットを揺らし、3−1とすると、83分にはコーナーキックから最後はDF北川ひかるが押し込み、決着。
試合は4−1で浦和が勝ち点を「28」に伸ばした。
“なよっとした”チームを変えた石原孝尚監督と安藤梢
スコアだけ見ると、圧勝に思えるが、さにあらず。
ノジマの速いプレスとカウンターで何度かピンチを迎えた。それを物語るように、シュート数は両チームともに13本と拮抗したゲームだった。
それでも勝てたのは「取れるときに取れた試合」とFW吉良知夏が話すように、セットプレーから効率よく3ゴールを挙げたからだ。
身体を張った泥臭いプレスと攻守の速い切り替えに加え、試合中に起きた問題を選手自身が解決でき、さらに自信を持って、ゲームに臨んでいる。
試合を見るたびに逞しさが増していくことが伝わってくる。
「昨年や今年のはじめには、(先に失点した際)決め返す、取り返せる雰囲気がなかった。でも、いまは取り返すことができる。気持ちの切り替えもできているし、みんな同じ方向を向いている(DF栗島朱里)」
「雰囲気が悪い中でも前向きでいられる。良い雰囲気を保つことができる」(GK池田咲紀子)
こうした逞しさを持てるようになったのは、前向きさ、明るさを大事にする石原孝尚監督のマネージメントがひとつ。
そして、FW安藤梢の加入がやはり大きい。
安藤は加入当初のチームを「なよっとした感じがあり、迷いがあった。引き分けでも良いという雰囲気があった」と振り返った。
なよっとした、迷いのある空気について安藤は、「引き分けではなく、勝ちに行くんだと伝えてきた。若い選手と話すと、以前はうまくかなくなると、どうすればいいのか、困っていた。私には経験があるので、自分のプレーで引っ張ることで前向きにしたかった」と強く語った。
昨季はまさかの残留争いを経験した浦和レッズレディース。
強くなりたい。勝ちたい。この純な気持ちに監督が、あるいは安藤が鎹(かすがい)となっていまのチームをまとめている。
シーズン当初、「リーグ戦の最後の試合で一番良い試合ができるようにしたい」と語った石原監督。
リーグ残り3試合。その道筋は見えつつある。(佐藤亮太)
2017プレナスなでしこリーグ1部 第15節 ノジマステラ神奈川相模原戦
日時/9月16日(土) 14:00キックオフ
会場/浦和駒場スタジアム(埼玉県)
試合終了/4対1 (前半2対0)勝利
観客数/1,683人
主審/高橋 早織
副審/林 俊光、永野 貴大
第4の審判員/田代 志津子
浦和レッズ
監督/石原孝尚
≪先発メンバー≫
GK:池田 咲紀子
DF:栗島朱里・長船加奈・高畑志帆・北川ひかる
MF:柴田華絵・筏井りさ・猶本光・塩越柚歩(HT→安藤梢)
FW:吉良知夏(86分→山守杏奈)・菅澤優衣香(85分→白木星)
《SUB》
GK:松本真未子
DF:長嶋洸・三谷沙也加
MF:加藤千佳
□得点□
33分 高畑志帆(浦和)
45+2分 吉良知夏(浦和)
55分 ミッシェル パオ(ノジマ)
70分 安藤梢(浦和)
83分 北川ひかる(浦和)
監督・選手コメント
≪石原孝尚監督≫
ノジマはベレーザも苦しんだ、しっかりしたチーム。前半、リスタートから2得点取れたことは大きかった。後半、サイドの空いたスペースを使いたかった。そのため、安藤を入れ、吉良を左MFに入れた。やっていなかったことだが、動きが被ったので、サイドで分けたことで、落ち着かせた。
(ノジマはなでしこリーグでは珍しい3バックのチームだったので、うまくかみ合わなかったのでは?)ノジマも1枚余る状態。誰がフリーになるのか、しっかり判断しようと伝えた。もう少しイヤなところを突きたいなと思い、後半は選手を代えながら試合を進めた。何度か狙い通りのシーンがあった。そうしたシーンを自分たちの成長によって、オプションに変えていきたい。
(4−1になったあと、2人の選手を投入しましたが?)公式戦を通じて、選手たちの成長を感じる。全員で練習をしているが、どのくらいフィットしているのか、そうしたところを確認したかった。山守(杏奈)は今季初出場。白木(星)も残り時間が少ないなか、出場した。(出場したことで)ひとつ自信をつけてもらえればと思う。
≪栗島朱里≫
結果は勝ちだが、内容を見れば、修正したい部分はある。そのなか、勝ち切れたのは大きい。
(セットプレーから3ゴール決まりましたが?)いままでは(筏井)りささんが全部蹴っていた。ひかる(北川)が蹴ったが、その練習をしていた。その練習が生きた。
≪池田咲紀子≫
(チームとして安定した戦い方ができたと思いますが?)毎試合重ねるごとに、良い部分が出ている。課題はあるが、選手が自信を持ってプレーできている。雰囲気が悪いなかでも、前向きでいられる。良い雰囲気を保てている。以前は(展開が)悪いと、みんなで悪い方向になってしまいがちだった。割り切って、攻められている時間帯は守り切ることができるようになった。前向きな声が出るようになったことが大きい。
少しずつだが、自分たちで修正していこうと、ひとりひとりがそうなってくるようになった。(石原監督の指導で?)雰囲気作りを大事にしてくれる監督。前向きさ、明るさは普段の練習から取り組んでくれる、そのことが大きい。
≪北川ひかる≫
(前節の試合後は悔しさをかみしめていましたが)きょうの試合自体、自分たちのサッカーを消されながらの難しい試合だった。我慢しながらの試合を意識した。
(具体的な難しさについて)ビルドアップを消される守備。マンツーマンで相手が来た。自分たちもボールロストが多かった。足元でつなぎたかったが、裏に蹴ったり、前に蹴って、前線でおさめてもらったりと、バタバタした試合になったかなという印象。
そのなか、しっかりセットプレーから取れたことは大きい。今後も続けたい。(セットプレーは)いままで(筏井)りささんが蹴っていたが、自分の武器でもある。
(試合後のインタビューで涙を見せていましたが?)うれし涙と言えば、うれし涙。自分のなかでは90分通して、納得するプレーはできていない。そのなかで結果を出せて、貢献できたと思う。
≪高畑志帆≫
流れから得点できないなか、セットプレーからの得点を狙っていた。(栗島)朱里のクロスが入ったとき、先に自分が触ろうとした。しっかりコースを狙った。先制点が取れてよかった。
4得点したなか、失点1がもったいなかった。リーグのなかで減らした部分であり課題になる。
≪安藤梢≫
(リーグ戦通算99ゴールとなりましたが?)そのことより、駒場でゴールしたいと思っていた。きょうは決めてやろうという気持ちがゴールとなった。ボールを持った瞬間、“行ける!!”と感じた。(コースを)狙うのではなく、振り抜いた。
(終了間際に、惜しいシーンがありましたが)決めたかったです。悔しかった。
(監督からの指示は?)マンツーマンで来ていたので、(菅澤)優衣香が前線にいたので、その周りを動くように言われた。
≪吉良知夏≫
サイドバックの背後を取ろうという指示を受けた。アンさんが持ったとき、その背後を狙った。攻め込まれながらも、試合中、みんなで話し合いながら、共有できた。
試合の内容を振り返っても圧倒的に進めたわけではなかった。取れるときに、取れた試合。セットプレーからの得点はチームの武器になる。
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