先制点が勝敗を分けるカギに
2017プレナスなでしこリーグ1部は第4節を迎え、浦和レッズレディース(1勝2敗)はホーム浦和駒場スタジアムで、首位の日テレ・ベレーザと対戦した。前節はINAC神戸レオネッサ(2位)と戦い、0−2で敗戦。きょう4月23日(日)は全勝中のベレーザが相手だが、勝利して2勝2敗の五分に戻したいところ。
前半は、始動から取り組んできた浦和のサッカーで試合を進めることができ、ベレーザを追い詰めた。石原孝尚監督をはじめ、選手全員が納得の展開。多くの時間、ベレーザ陣内でプレーし、中央から、サイドからとピッチを広く使って、攻撃を仕掛けた。
その攻撃の裏には良い守備があった。ボランチのMF猶本光が「きょうは守備がポイント」と話したように、数的優位を作りながら、球ぎわに激しく、高い位置でボールを奪って、すぐさま攻撃に切り替えた。その守備があって攻撃は、今季加入のFW菅澤優衣香を中心に、ゴールを目指し、前を向いたプレーが数多く見られた。菅澤自身が「今年一番、ゴール前で仕事をする回数が多かった」と話すほど。
だが、前半を終えてスコアは0−0。浦和はリズムを作っていた前半に得点を奪えなかった。これが後半を戦う上でのポイントになった。後半に入っても、いくつかの好機をモノにできずにいた中で、浦和は69分、ベレーザMF籾木結花にGKの頭上を抜く柔らかいシュートを決められ、先制点を許した。
わずか1失点だが、この1点によって、浦和は、前半とはまったく別のチームに変わってしまった。動きが後手に回り、76分にはボールを前にクリアしきれずCKを与えると、左CKから最後はベレーザFW田中美南に混戦から技ありのシュートを決められた。1分後には、途中出場のベレーザFW植木理子にペナルティエリア内進入を許し、失点。終わってみれば、0−3の完敗だった。
決定力と対応力に少しの違いがあった。吉良知夏はピッチ上で、ベレーザ主将の岩清水梓と阪口夢穂が守備の対応を細かく話し合って柔軟に対応していたことを振り返った。浦和にも、1失点の時点で“まだ1失点”だと割り切り、前半同様のサッカーを展開し続けるだけの柔軟性が求められた。
きょうのチームは、悪い内容の戦いをしていなかった。特に前半は互いの距離が近く、運動量もあり、多くの選手がゴールに向かっていた。自信を得た前半と、自信を失った後半。前半のイメージを保ちながら、次節もホームゲーム、勝利を目指して戦いたい。
2017プレナスなでしこリーグ1部 第4節・日テレ・ベレーザ戦
日時/4月23日(日) 14:00キックオフ
会場/浦和駒場スタジアム(埼玉県)
試合終了/0対3 (前半0対0) 敗戦
観客数/1958人
主審/朝倉みな子
副審/今成可奈・福島秀人
第4の審判員/池田朋代
浦和レッズ
監督/石原孝尚
≪先発メンバー≫
GK:池田咲紀子
DF:栗島朱里・長船加奈・高畑志帆・木崎あおい
MF:柴田華絵・筏井りさ(72分→水谷有希)・猶本光・加藤千佳(81分→塩越柚歩)
FW:菅澤優衣香・吉良知夏(68分→清家貴子)
《SUB》
GK:平尾知佳
DF:南萌華・三谷沙也加
MF:長野風花
□得点□
69分 籾木結花(日テレ)
76分 田中美南(日テレ)
77分 植木理子(日テレ)
≪石原孝尚監督≫
決めるというところまで、しっかりとしていかなければいけない。(課題や悔しさは)選手たちが一番分かっていると思う。そのエネルギーを練習に変えていきたい。ベレーザ相手に、自分たちのサッカーをトライしたし、ゲームのコントロールもできていたと思う。それが得点につながらないことには何か意味があると思う。選手たちと取り組んでいきたい。
(ベレーザがラインの裏をついてきたが)このサッカーをする以上、狙われるところ。とはいえ、下がって守るかと言ったら、それは夢がない。対応できれば、良いのだと思う。守備の対応力が持てれば、また1つレベルアップし、ベレーザやINACのようなチームを苦しめることができる。成長し続けられるように、戦い方を変えずにやっていければと思う。
≪キャプテン柴田華絵≫
前半は、攻撃ではシュートまで行くことができていたし、守備では切り替え早くできていて、流れは良かった。だが、ちょっとしたことで失点してしまうところに弱さを感じた。前回の試合もそうだが、それを感じた。
ただ、きょうは前向きでプレーできる選手が多かった。相手は狭く、狭く守備をするチームだが、ボールをうまくはたいて、動くことができていた。やっていることは続けていき、そこで勝負に勝ちきる強さ、90分しっかりと戦いきるところをみんなでやっていければと思う。
≪池田咲紀子≫
相手に起点を作らせてしまう場面もあったが、そこからやられた感じではない。長いボールを入れられ、中盤を越えられた後にいかにみんなが帰ってこられるかとか、ボールへの関わりのところで少し課題が出た。
点が取れない中で失点してしまうと、1失点なのに、どうしても後手に回り、下を向いてしまうところがある。自分たちがやってきたことが崩れてしまう弱さを感じるので、その流れを止められるかは自分の課題。自分の仕事を果たすこと、それはみんなが厳しい時に(相手のシュートを)止めること。止められれば、悪い流れもストップできる。チームとしての課題もあるが、GKとして仕事ができるか、できないか。そこしかない。
≪猶本光≫
今週取り組んできたことが攻守に出せたが、最終的には(0−3で)完敗。ゴール前の質の違いが出たと思う。良い戦いはできたと思うが、最後は決めきれていない。それを次の課題にしたい。
失点する前までは自分たちのゲームができたと思うが、失点した後も変わらずにチャレンジしていければ、チャンスはまだあったのかなと思う。もったいなかった。もっとシュートシーンを作れるんじゃないかと思う。自分自身、後半の1本だけだったのが反省。
きょうは守備がポイントだと思っていた。守備だけでも良いというくらいの勢いで試合に入ったので、うまく表現できた。全体的にも良い距離感で守備ができたのだと思う。
(1失点目の形は)千葉戦も、きょうと同じようだった。きょうのディフェンスラインはとても集中し、ラインコントロールもしてくれていたが、一瞬のスキがあった。話を聞いたら、少し段差ができていたらしいのだが、そういう少しのところで失点してしまったので、90分間通して後ろがラインコントロールできるように、中盤もセカンドボールを拾わなければいけないし、みんなでやっていきたい。
≪猶本光≫
1本で流れが変わった。決めきるか、決めきれないかの差が出た。守備側も頑張ってくれた。良いところで(ボールを)取ることができていたから、前にエネルギーを使うことができて、良い形があった。距離感も良かった。あとは得点だけだった。点を取られても、戦い方を変えずにいこうと思っていたが、連続して入れられてしまい、立て直すことが難しくなってしまった。積極的にゴールを狙っていこうと思って狙っていた。点が欲しかった。
≪木崎あおい≫
前半は、練習していた形が出たと思っている。左足のクロスボールの精度も上がってきたかなと思っている。前半のチャンスで決めなければいけない場面はあったし、自分自身もシュートチャンスがあったと思うので、次から迷わずに打っていきたい。
仙台については印象でしかないが、高さがあり、身体の大きい選手が多いので、そこは自分らしい対人のやり方で、まず1対1で負けないようにしたい。チャンスをもらっている今、どれだけ自分を出せるかが大事だと思っている。自分は負けず嫌いなので、1対1では絶対に負けたくはない。そこを意識して、練習からプレーしている。
≪吉良知夏≫
(決定力を上げるためには)落ち着いて、自分を見失わないように、相手に合わさないように、そこだけだと思う。きょうは流動的で、常に近くにパスコースがある感覚もあったし、見えていた。ストレスはなかった。自分が前を向ける時もあったし、(菅澤)優衣香との関係性も、練習以上にきょうの試合で見られた気がするので、もっと練習からコンビネーションを意識していきたい。もっとできると思うので、2人で崩せるようになっていきたい。
失点の場面よりも、得点しておけば勝てたという部分が大きいと思うので、(きょうの結果は)そこだ。
きょうは前から行こうと話していて、(前線がゴールに向かって)行くことによって後ろも付いてきてくれて、1回目、2回目でボールが取れなくても3回目で取ることも、ズラすこともできた。後ろを気にせずに行けたし、後ろからも「行っていいよ」と言ってくれていた。本当にきょうは(攻守の)切り替えが早かった。誰かが余っていたら付いたりとか、声を掛けたりとか、流れた選手に対して声を掛けたりとか、ピッチの中でできていた。
≪菅澤優衣香≫
今年一番ゴール前で仕事をする回数が多かったと思うが、個人としてもチームとしても決定力という課題が大きく出た試合だった。選手同士の距離感やコンビネーションの回数も多く、良かった。それは今週、ずっと準備してきたことがうまく試合に出せたことになる。あとは決定力だ。
失点してから、相手のペースになってしまった。FWとして、ボールを引き出したり、動きをもう少し付けてあげられたり、工夫できれば良かったのかなと思った。やっているサッカーは間違いなく良いと思うので、決定力をこの1週間で準備していきたい。
(有賀久子)
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