最終節は勝利飾れず。来週は皇后杯
10月23日(日)、浦和レッズレディースはホームの浦和駒場スタジアムで『2016プレナスなでしこリーグ1部』最終節の日テレ・ベレーザ戦を迎えた。チームは前節のジェフユナイテッド市原・千葉レディース戦で勝利し、最低限の目標である残留を確定させた。
一時は6連敗を喫し、「降格」の二文字が頭をよぎる中、選手たちは「絶対に落ちてはならない」という重圧と長く戦ってきたが、今節はようやくフレッシュな気持ちで試合に臨むことができた。振り返れば、開幕戦の相手はベレーザだった。1−1のスコア以上に力の差を感じた試合だった。また、リーグカップ準決勝で対戦した時には0−4で完敗。来週10月30日(日)から登場する皇后杯、そして来季につなげるためにも、今季の優勝クラブを相手に何ができるのか。現在の実力を知るための重要な試合となった。
前節フル出場の左サイドバックDF北川ひかるはももの張りを訴え、欠場。同位置にはMF塩越柚歩が入った。最終節を最後に期限付き移籍期間の満了で退団することを発表したFWエミリー ギルニックはベンチスタート。72分からピッチに立った。
0−0で迎えた64分、浦和は右サイドバックDF栗島朱里に代わり、臼井理恵を投入。1人目の交代を行った。さらに72分にはエミリーを投入。181センチの長身FWを立たせることでターゲットをしぼり、前線に起点が生まれ始めた。79分、最終ラインのセンターバックDF乗松瑠華からのロングフィードを前線でエミリーが受けると、相手DF2人にマークを受けながらもマイボールにし、シュート。試合が動き始めた中で、守備陣はワンチャンスがあることを信じ、体を張った守りを見せてきた。
だが、86分に浦和はベレーザの底力を痛感することになる。左サイドからのクロスボールにニアサイドで合わされ、頭で落としたところに途中出場のベレーザMF三浦成美が入り、ペナルティエリア右からシュート。右ポストをたたき、救われたかに思えたが、こぼれ球はベレーザMF阪口夢穂の足もとに入る。最初のシュートの対応をしていたGK池田咲紀子が戻りきれず、阪口に冷静に左足で決められた。さらに後半アディショナルタイムに入ってからも、ベレーザMF阪口からFW長谷川唯とつなぎ、最後はMF隅田凛が落ち着いてゴール右すみに追加点を決め、試合の勝利を決定付けた。
今節は2052人のファン・サポーターがスタンドを埋め、選手へ声援を送った。試合は0−2の完封負けで勝利を届けることができなかったが、終了後には大きな温かい拍手に包まれた。ピッチ上では、その後に最終節セレモニーが行われ、浦和レッズレディースは今季8位で終了。苦しい時期もともに戦ったファン・サポーターに全選手で感謝の気持ちを伝えた。
早くも来週からは皇后杯の戦いが始まる。
2016プレナスなでしこリーグ1部 第18節 日テレ・ベレーザ戦
日時:10月23日(日)13:00キックオフ
会場:浦和駒場スタジアム(埼玉県)
試合終了:0-2(前半0-0)勝利
観客数:2052人
主審:坊薗真琴
副審:桐原純子・上田千尋
第4の審判員:遠藤かおり
浦和レッズ
監督:吉田靖
《出場メンバー》
GK:池田咲紀子
DF:栗島朱里(64分→臼井理恵)・乗松瑠華・長船加奈・塩越柚歩
MF:柴田華絵・筏井りさ・猶本光・加藤千佳(89分→遠藤優)
FW:後藤三知・白木星(72分→エミリーギルニック)
《SUB》
GK:平尾知佳
DF:高畑志帆
MF:木崎あおい・三谷沙也加
□得点□
86分 阪口夢穂(日テレ)
90+2分 隅田凛(日テレ)
《吉田靖監督》
優勝した日テレ・ベレーザ相手に、ある程度、互角以上の戦いができたが、最後のところで失点して負けた。まだまだいろいろなところに弱さがあると思う。(リーグカップ戦の準決勝で)4−0で負けた時に比べれば、進歩している。内容もほぼ互角近かった。
(10月30日から)皇后杯が始まるが、次に向かっていける。失点してからは攻めなければいけないので、バランスを崩していかなければいけなかったので、2失点目は仕方がない。粘り強く戦う中で、浦和が何回かチャンスがあったのを決められず、最後に向こうに決められたのは決定力の差。全体としては4−0のゲームよりは格段に良くなっている。今後につながる試合だったと思う。
(ハーフタイムには)「今のままで良い」と伝えた。仙台戦もそうだったが、疲れてくると運動量が減り、甘くなる。最後にクロスから失点したが、内容自体は悪くはない。きょうのゲームは今シーズンの中でも満足のいくものだった。厳しい苦しいシーズンだった。最初に1分けから6連敗し、自信を失った。その中でもう一度、立て直した。後半は安定したゲームができるようになり、勝ち星がだいぶ拾えてきた。トータルとしては力不足。反省し、もっと強いチームにならなければいけない。苦しんだ分だけ、選手たちは得たものはいっぱいあったと思う。
すぐに皇后杯。何としても2つ勝って、上に残りたい。エミリーはもっともっと使ってあげたかった。特長はあるが、全体のバランスが崩れることがある。きょうは早めに使おうと思った。途中から入ってきて、我々にとっては良い刺激になった。日テレ・ベレーザと比べると、(ベレーザの方が)切り替えも早いし、プレッシャーの中でもボールを動かす力もあるし、きょうみたいに得点する力もある。トータル的に優勝チームによりは劣っている。基本的なところも含めて、上げていかなければ。互角に勝負した時に勝ちきれない。
《キャプテン後藤三知》
流れの中でゴール前に迫るチャンスを作れたことはチームとして良かったこと。ただ、90分間粘り強く戦う中で、チャンスをモノにしたかった。たくさんの負けを経験し、もっと勝てるチームになりたいと思った。前線で起点になるプレーは出来た点と納得がいかなかった部分がある。特に攻撃になった時、人数をよりかけられる攻撃ができれば、もっと得点の可能性を高めることができたと思う。勝利につなげるプレーをもっとしたかった。皇后杯は負けたら終わりの戦い。今シーズン、試合を重ねてきた中で、自分たちがやってきたことに目を向けながらチャレンジしていきたい。エミリー選手はチームに良い影響を与えてくれたし、それもあって残留という結果もチームとして出すことができた。感謝している。皇后杯はエミリー選手とお別れしてしまうが、チームとして1戦1戦戦っていきたい。
《筏井りさ》
前回がやられたイメージだったが、守備でも2失点したが粘れたし、相手の裏のボールやセカンドボールを拾うことができていた。浦和のチャンスは本当にチャンスになりきっていたかと言うと、そこまで攻撃の形を作ることはできなかったが、慌てずにやっていけば、点を取れるかなと思っていた矢先のもったいない失点だった。
今季の途中で「残留」を決めることが目標になってしまったが、最後は何回も対戦して負けている相手に負けられないと、勝つことを目標にプレーした。ただ、現実は勝ちきれなかったので、今季はまだそこが甘いかなと思った。皇后杯にむけて、トーナメントを勝ち抜くために勢いが必要なので、しっかりとやっていきたい。
(ボランチは)少しずつできることもあったが、チームのプラスになるためにはもっと成長しなければならない。攻撃のスイッチになるようなパスや、守備でしっかりと安定させることなど、もっとできることはある。成長していきたい。
《乗松瑠華》
前からいくというよりは、少しラインを設定し、そこに進入してきそうになったらFWを限定しに行くことを意識した。リーグの開幕戦の時よりは縦の攻撃を早くなっている。蹴られてボールを拾われることが嫌なので、背後のケアなど、前半からコンパクトにできていたと思う。我慢強く戦えていたので、相手のミスを誘えたり、良いボールの奪い方からチャンスを作ることもできていたが、決めきれなかった点と、ボールの失い方が悪かった点があり、失点につながってしまった。
1失点目は逆サイドにふられた時にカバーに入ることができていれば、防げたのではないかなと思う。そこは課題として、代表や皇后杯で生かしていきたい。サポーターの方が泣いてくれていたので、それを見たらもらっちゃいました。リーグが始まり、なかなか勝てない時期もあったが、アウェイでもサポーターの方が来てくれて、自分たちはサポーターのためにも何とか残留をと思い、一体感が生まれ、何とか立て直せたのではないかなと思う。
《猶本光》
開幕戦は引き分けだったが、ボールを握られていて、準決勝ではやられたい放題だった。今回は自分たちの守備がしっかりとオーガナイズされて、失点するまでは良い感じでプレーできている手応えがあった。チームとして守備のやり方がはっきりとしていた。試合前にみんなでこういう時はこうすると話し合って入ったので、大きく崩れた場面は少なかったと思う。2失点した結果は受け止めたい。
(ボールを奪った後の展開は)個人的には、相手がボールサイドに人数をかけてくるので、それを1枚でもはがせればと思って、前半は2本くらいボールを運ぶことができた。それを得点につなげたかったという点と、後半もう少しできれば良かったなと思う。
《白木星》
点を決めたかった。(前半14分の抜け出したプレーでは)自分だけで行かず、サポートを待ってしまった。その選択をしてしまった自分がいた。個人的な練習ではペナルティエリア外からのシュートを打っているが、今までの積み重ねで、シュートを打ってこなかったというのが癖として試合に出てしまう。“積極的にシュートを打つ”その意識付けが必要だと思った。それでも試合に出続けて、自信になった。去年に比べたら、成長できた部分もあるなと思うので、皇后杯から来季に向けて、最初から自分を出していければと思う。
(有賀久子)
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