2016年4月からなでしこジャパンを率いた高倉麻子監督が、任期満了に伴い今月いっぱいで退任することが明らかになった。高倉監督は18年女子アジアカップとアジア大会の2冠に導く一方、19年女子ワールドカップフランス大会でベスト16敗退。期待された今夏の東京オリンピックは準々決勝で敗れた。
約50分のオンライン会見で高倉監督は「この5年間、日々、日本の良さはなにか、世界と戦うためにどんな武器が必要なのか、模索する日々だった」と振り返った。
高倉監督に課せられたのは2011年世界一の再現。しかし、世界女子サッカーの進歩は想像以上に速く、急激だった。この歩みについていくべく必死だったが、結果、追いつけなかった。
世界的な女子サッカー進歩の始まり、それは2011年なでしこジャパン優勝。高倉監督の言葉を借りれば、そうして撒いた種が世界に運ばれ、それぞれの国で花が咲いた。それを境に強豪国はすでに手にしていたフィジカルの強さに加え、テクニック、俊敏性、献身性といったなでしこらしさを10年かけ身に着けた。
フィジカル+なでしこらしさ。「そうしたものに日本は挑戦してきたのかもしれない」。いかに難しいミッションだったのかがわかる。
さらに困難にさせたのがコロナウイルスの世界的感染。世界との差を縮めるべく、強豪国との親善試合を思うように組めず、チーム作りが進まなかった。
「(東京大会初戦を振り返り)1年半、親善試合ができず相手のスピードやパワーをうけてしまった。そういう難しさがあった」
「強いチームと対戦できず、強豪国を体感できなかったことはマイナス」
「世界の強度に対応できず、試合が終わってしまった」
加えるなら、ヨーロッパでは隣国同士でさかんに手合わせができたが、日本は地理的にマッチメイクしづらかったのは間違いない。
それでも収穫はあった。高倉監督は東京オリンピック・スウェーデン女子代表戦を挙げ、「勢いのあるチームに対して、日本らしいサッカーはできた。最後まで勇気をもって戦ってくれた。わたしが考えてきた日本の技術、戦術理解、献身性、アジリティーなど、丁寧にパスをつないでいく、相手を壊すのではなく、自分たちがサッカーを作っていくところでは良いチャレンジができた。すべてを否定するのではなく積み上げてきたものを信じて、しっかり立ち上がって、前に進んでいくことが大事」と語った。
また課題について、ペナルティエリア内での仕事。つまりFWでは決めきる力。そしてDF、GKでは打たせない。やらせない力。この2つを養うことだ。
これらを実現するためにも、WEリーグの役割は大きくなる。
「ネガティブなことではなく、次にバトンを渡す感じ」と高倉監督。今後については「まったく白紙」と語っている。思うような結果には届かなかったが、時折、見せる笑顔からはやりきった充足感と重責を離れる安堵感があった。
この会見で気になることがあった。退任会見が始まる前、日本サッカー協会・今井純子女子委員長、手塚貴子女子副委員長がオンライン会見に登壇したが、発言は高倉監督をねぎらう言葉のみ。これまでの検証や次期監督についてはまったく触れられず、さらに質疑にも応じず、6分間で終了したこと。新監督就任のタイミングで語るつもりだろうが…とても残念だった。
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