「REDSインタビュー」は、トップチームやレディースの選手、監督、スタッフ、関係者などのインタビューを掲載するコーナー。今回は三菱重工浦和レッズレディースから、MF遠藤優選手にビデオ通話アプリ「Zoom」を使い、インタビューを行った。
(佐藤亮太)
塩越柚歩には「絶対に負けたくない」
RP:遠藤優選手は、ユーティリティプレーヤーのイメージが強くあります。以前は、右サイドバックでプレーしていました。こうしたユーティリティ性は、最初から備わっていたのですか?それとも、必要に迫られて身につけたのか。その経緯を教えて頂けますか?
遠藤:小学校の頃は、ずっとFWでやっていました。浦和レッズレディースジュニアユースに加入した時も当初はFWで、その後シャドーのポジションでもプレーしました。U—17日本女子代表に招集された時に、急きょサイドバックを任されました。経験のないポジションでしたが、スピードを生かして対応できたこともあり、その後ずっとサイドバックで起用されました。浦和レッズレディースのトップチームに昇格した時は右サイドバック、サイドハーフでプレーするようになりましたね。「このポジションで」と言われた位置でプレーするだけですし、「やってみよう」という気持ちが強いので、対応できているのだと思います。
RP:宇賀神選手が遠藤選手について、「自分と同じような、ゴリゴリ系のプレーで、決して器用ではないタイプ」と話していました。先ほどのユーティリティ性と乖離しているのですが、実際はどうなのでしょうか?器用な選手のイメージが強いのですが。
遠藤:その点では、自分もその通りだと感じます。宇賀神選手が話した「器用じゃない」というのは、ボールタッチや判断の器用さだと思います。柔軟性はないかもしれけれど、自分のストロングポイントを分かっていて生かせている感じだ、と考えます。
RP:昨シーズンもそうですが、今シーズンはWEリーグ開幕戦の日テレ・東京ヴェルディベレーザ戦やノジマステラ神奈川相模原戦では、試合の流れを変える働きがありました。
遠藤:試合を観戦していると気がつくと思いますが、試合の中には、良い流れの時と、攻められている時の流れ、それぞれあります。自分のチームが攻められている時に私のようなガツガツと前に来る選手がピッチに入ったら、相手は嫌だと思います。そのタイミングを見て、森さん(森栄次総監督)は投入するのだと思います。自分もそこに期待されていると分かっているので、みんながなるべくプラスになるようなプレーを心掛けています。
RP:途中投入される時の考えは?
遠藤:考えすぎて「あれもしなきゃいけない」「これもしなくちゃならない」となると手つかずになってしまいます。流れを変える上で、縦へのスピードを頑張るとか、何かひとつに決めてピッチに入ると集中できてうまくいきます。だから、考えすぎは良くないです。「うまくボールを回さなきゃいけない」「シュート打たなきゃ」と考えると、全部やらなければとも思ってしまいます。周りの選手を使って自分が縦に行こうとひとつ決めることで、ミスを恐れずにできます。
RP:試合の流れを変える途中出場よりも、流れを作る先発の方が楽とも聞きます。
遠藤:自分は途中から試合に出ているので、そう思うかもしれませんが…。流れを変えるということは…たとえば、60分間試合を作ってきてくれた雰囲気の中に入って、そこで1分も満たない選手が流れに乗ることは難しいこと。流れに乗らなければいけない気持ちはありますが、まずは自分に何ができるのかという気持ちでピッチに入っています。流れに乗らなきゃ、合わせなきゃと思うよりも、この状況で何ができるかを考えます。近くのポジションの選手もそれを理解していますし、実際みんな縦にパスを出してくれます。
RP:遠藤選手が、よりスタメンに近づくには、何を足していきたいですか?
遠藤:スタートから出たいとみんながそう思っています。私もそうです。では、スタートから出るために何が必要か?と聞かれると、正直、まだ明確ではありません。ここがこうだからと分かっていませんが、スタメンの選手と違うのはプレーしている時の落ち着きや、冷静な判断ができること。私のように最初からガツガツと行くことは大事なことですが、そうなると流れを作ることが難しくなってしまう。最初から100パーセントだとずっとテンションの高いままのプレーになってしまう。興奮状態になってしまう、と思います。最初は60で、次に70、80と、段々とあげることが必要だなと感じます。私は常に100パーセント、フルパワーなので、もう少し落ち着いて60、70の部分を入れていければ良いかなと思います。それに90分間、そう戦っていくとやはり疲れてしまいます。ボールを回して落ち着かせるところと、縦に行くところの判断、そうした部分が足りないと自分は思います。
RP:ただ遠藤選手のユーティリティ性を考えれば、サッカーIQは高いと思うので、できないことではないと感じます。
遠藤:自分のことを信じないと発揮できません。自分ならばできると常に思いながら練習しています。
RP:相手にはともにプレーした選手が数多くいます。やりにくいものですか?
遠藤:お互いにプライドがあるので、絶対に負けたくない!という気持ちはあります。マッチアップする場合は「1対1では絶対に負けない!!」と、この気持ちでお互いにやっています。バチバチはしちゃうかもしれません。意識しすぎてのやりにくさはあると思います。お互いのプレースタイルが分かるので。「ここで取られたらどうしよう。絶対負けたくないけれど」という、変なプレッシャーはありますね。やりにくさは他の選手以上にありますが、それ以上に燃えるものがあります。たとえば、大宮アルディージャ・VENTUS戦では4点目を決めた際、瑠華さん(DF乗松瑠華選手)がマークについていました。私は絶対に決めるとシュートを打ちました。瑠華さんがとても悔しがっていました。ただ、ピッチを離れれば仲間です。
RP:東京オリンピックに選ばれた塩越柚歩選手について、公私ともに仲の良い遠藤選手はどのようにご覧になっていましたか?
遠藤:昨シーズンから、(塩越)柚歩のコンディションは上がっていました。自分が一番近くで見ているので、それを肌で感じていました。チームメートであり、ライバルでもあります。応援したい気持ちの反面、やっぱり負けたくない気持ちは常にどこかにあります。宇賀神選手に「俺だったら、悔しい」と言われましたが、「いや、わたしも悔しい!」と思いました。悔しいですがそれを全面に押し出しても仕方がないというか、どこかで割り切って自分はできることをやらなくちゃ、と思っています。その分、(塩越)柚歩が代表に呼ばれている間にチームで頑張る、とか。絶対に自分には頑張れる部分はある。もちろん、応援していましたが、自分も負けていられないぞ、という気持ちで去年は一緒に戦っていました。東京オリンピックはともかく応援していました。チームにいる時は負けたくない。そうした気持ちは大事ですし、私にもプライドはあります。でも、プライベートでは全く一切ありません。お互いに刺激になっていますし、頑張る優の姿を見て、柚歩も頑張るみたいな。まぁ、良い関係ですね。
RP:今日はありがとうございました。
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