多角的な視点で浦和レッズレディースに迫る「LADIESコラム」。
WEリーグカップの開幕から3試合を消化した。三菱重工浦和レッズレディース(以下・浦和)は1勝2分の勝点5。6チームで争うグループAで得失点差で首位に立っている。
3試合を振り返ると0−2から終盤、MF猶本光とMF塩越柚歩の個人技で引き分けた大宮戦。
先制されるも地力を出し4−1で勝った新潟戦。
早々に先制したものの、逆転され劣勢に立つなか、後半DF高橋はなのミドルシュートで追いついた長野戦とさまざま。
カップ戦は10月23日リーグ開幕にむけたテストの意味あいはある。さらにケガ人、コンディション不良を差し引いたとしても内容、結果とともにやや不満が残る。
今季の浦和は何を目指しているのか?そのひとつは世代交代。あるいはその準備だ。
シーズン前、DF南萌華が海外移籍するなか、その穴を埋める補強はなかった。
補強は競争意識を高めるなによりの刺激。しかしクラブは補強ができなかったというより、あえてしなかったと言っていい。理由はここ数年培ったポジションにこだわらない相互補完のサッカーがベースになっているからだ。
できあがった戦術。たとえ代表クラスを獲得してもフィットするかどうか、いずれにしろ時間がかかり、即戦力とは言えなくなる。
それよりも下部組織で育てた選手を昇格させるほうが確実で効率的。
昨季限りで退任し、育成に定評のある森栄次総監督がアカデミーダイレクター専任になったこともうなずける。
これを踏まえての世代交代だがそう簡単ではない。
単純に若手への切り替えだけでは性急すぎてチームに不協和音が起きかねない。その例は枚挙にいとまがない。
チームとしてはなるべく戦績を落とさず、ある程度、時間をかけ、スムーズな世代交代、その準備を進めようとする、その姿勢はある。
開幕3試合を見ると2試合フル出場したGK山?琳をはじめ、DF?橋美紀、DF河合野乃子、MF角田楓佳、MF丹野凜々花が。また昨季、ほぼ出番のなかったDF上野紗稀が3戦先発。FW植村祥子が短い時間ながら起用された。長期離脱者が多いため、起用しやすかったといえる。
ただ、昨季までの主力組と比べれば、ミスからの失点。決定機を逃すなどまだまだ。インパクトはなかった。
「チャンスは与える。でもそのチャンスをつかまなければならない」と楠瀬直木監督。
このカップ戦でどれだけ主力組から信用を得るかにかかっている。
またU-20女子W杯に臨んだGK福田史織、DF石川璃音、FW島田芽依の起用が見込まれるなか、若手内での競争が激しくなりそうだ。
もうひとつはさらなる攻撃力とさらなる守備力の強化。
楠瀬監督の言葉を借りれば、攻撃ではゴール前、アタッキングサードでのアイデアを増やすこと。守備ではDF南の穴をどのように埋めるか。
この2つを解決すべく、大宮戦・新潟戦と4-3-3の布陣を敷いたものの、長野戦では昨季の4-2-3-1に戻した。
フォーメーションはあくまで数字の配置だが、ここに試行錯誤が見える。
長野戦後、コロナウイルスに罹患した監督に代わって会見に登壇した正木裕史ヘッドコーチが布陣の変更をこう語った。
「4-3-3では自分たちの個の強さを発揮できる形。4-2-3-1は今までの経験も含めてボールを動かすところで前進していくという良さを持っている」
「もう一度、4-2-3-1にトライしようということであり、4-3-3をやめたわけではない。今週の練習から4-2-3-1でやってきたが長野対策ではなく、自分たちの特長をもう一度出すため。4-3-3でも4-2-3-1でも使えるようにと布陣に幅を持たせたかった」
自チームの陣容または相手の出方を見ながらの併用なのか。最終的に目指すのは4-3-3なのか。
いずれにしろ、こうした変化は選手に良い刺激に与えている。
これまでのやり方をベースに新しいやり方にトライすることで「何か新しいものが生まれれば」と楠瀬監督の狙い。そのプロセスにDF上野・DF佐々木繭のセンターバック、MF遠藤優の右サイドバックのコンバートがありそうだ。
数年後を見越しながらの確実な世代交代と攻守の強化を進める、いまのチーム。この3試合で判断は難しいが、できそうでできない難業を監督・選手は悩みながら進んでいる印象だ。
・・・・・・