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ツヅキック(都築龍太の試合分析)

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ホリ(堀之内聖SD)のマネジメントにもかかっている(J1第38節・新潟戦)

浦和レッズで活躍された元日本代表GK都築龍太さんが試合を解説。聞き手は、サッカー専門新聞『エルゴラッソ』の沖永雄一郎記者です。


RP:12月8日(日)に埼玉スタジアム2002で行われた明治安田生命J1リーグ第38節、アルビレックス新潟戦は0−0の引き分けに終わりました。

都築:興梠慎三選手のための試合のようになっていましたが、それではだめだという中で試合に臨んでいたと思います。彼の最後の試合ということで、モチベーションは高かったと思います。

レッズでは一緒にプレーしていませんが、僕も代表では一緒になることがありました。野性味あふれるというか、あまり努力しないマインドの選手(笑)だったと思いますが、まずはおつかれさまでしたと言いたいですね。

ただ、厳しい見方をすると、さすがに全盛期からは相当力が落ちていました。受けるタイミングなどはめちゃくちゃうまいんですけど、体とイメージがあってないような。もっと落ち着かせられる選手でしたよね。

そうはいっても、ブロックされて打てませんでしたが興梠らしい抜け出し(16分)もありました。彼が攻撃のスタートとなったシーンでしたし、起点となる動きが得意な選手です。ゴール前の一瞬の入り方、動き出しや動きなおしなど画面に移らないところでも非常にいいプレーヤーでした。

引退は残念ですが、次のステップに言ってもらえればと思います。営業をやりたいと言っていますが、それが次のステップなのかはわからないですけど、レッズにとってはスポンサーが集まるだろうし良いでしょうね。

指導者をやりたいとは聞いていたので、セカンドキャリアがどうなるか楽しみです。理詰めで何かをやるというよりも、感覚を持っている選手だと思っていたので、そういう指導者がいても面白いのかなと思います。

試合の話に戻ると、お互いに悪くはなかったと思います。中盤で戦っていましたし、ゴール前までいくタイミングも良かった。新潟のほうが崩しの質は高かったかなとは思いますが、原口元気選手も久々に目立っていました。

これまでよりも仕掛けていて、裏に抜けるプレーも意識してやっていました。特に後半は起点になっていたと思います。(54分に)裏に抜けたシーンはハンドじゃないかなとも思いましたが…。このシーンも含めて原口選手の仕掛けるシーンがけっこうあったので、見応えはありました。彼がボールを持つと雰囲気がかわる部分もあります。

守備のバランスもお互いがよかったと思います。前半は新潟のほうがモチベーションが高かったと思いますが、後半に入る前に他会場の結果を聞いていたのかな。後半の最初は新潟攻めましたが、お互いがあまり無理をせずに、チャレンジしやすくもなったのかなと思います。

レッズもピッチを広く使って攻めようというところは見られたので、あとは攻撃の質ですね。フィニッシュ、ラストパス、縦パスをどうやって入れるかの質で決まってくると思います。ただ、最終節も今季を象徴して点が取れない試合になりました。

改善の余地はたくさんありますから、来年に向けてしっかり準備してほしいですね。シーズンを通して安定感のない試合が多かったですし、この試合も悪くはなかったですが、決定的なシーンを何回作れたかというとそう多くはなかった。

守備も安定はしてきたけど、相手に助けられている部分もあります。(83分の)ヘディングシュートがポストに当たったシーンもそうですが、あそこでマークにつき切れていないと危ないシーンになります。

クラブワールドカップのことも話題になってきていますが、その前にやらないといけないことが多いと思います。サミュエル・グスタフソン選手に自陣でのパスミスがあったりしましたが、ああいう細かいミスを突かれてしまうでしょうから。

来季はマチェイ・スコルジャ監督でゼロから再スタートになりますが、まずは守備だと思います。昨シーズン(2023年)にできていたような守備をつくりながら、攻撃をどうアレンジしていくかのチーム作りになると思います。

あとは、何かを変えられる選手、圧倒的に試合を動かせる選手がいないですね。マテウス・サヴィオ選手の獲得が決定的という報道がありましたが、彼が獲れれば中盤でのアクセントが相当増えます。渡邊凌磨選手の役割も分散できるというか、彼がやるべきことにより集中できるようになると思います。

何にせよ、先を見据えるのもいいですが、来年に向けてしっかりやってほしいなと思います。補強すると言っていましたから、出て行く選手もいると思いますが、ある意味ではこの時期がいちばん面白いですよね。

RP:最終節はセレモニーなどもあり、どうしても試合の雰囲気が穏やかになる印象があります。

都築:最初に言ったように、お互い悪くはなかったと思います。ミスは少なくて、チャレンジするところはした。それが得点に結びつかなったのはありますが。興梠選手がスタメンということで、そうしたゆったりした色合いがついた試合にもなりましたが、それでもしっかりやっていました。何もできなくなった状態で引退するわけではなかったですし、宇賀神友弥選手もそうでした。

RP:スコルジャ監督が再任となりましたが、今季も守備は立て直しながら攻撃は物足りないイメージになりました。どのような選手を獲ってくるのか注目されます。

都築:選手が全然いないわけじゃなくて、メンツはいるんですよね。ただ、けが人も多くて使えてないところがありました。安部裕葵選手などは、置いておいていいのかという判断もしないといけないと思います。

(年俸が)高いのか安いのかはわかりませんが、1年半何もできない選手をこれ以上置いておくのかと。厳しいプロの世界ですし、そこの椅子をあけてくれよという選手もいると思います。めちゃめちゃ上手いんだという評判は聞くのですが、試合で使えないのであれば…。

本間至恩選手や中島翔哉選手、大久保智明選手も含めて、個で打開するタイプの選手はいますが、結果を出しているかというと。中島選手が出続けていた時期はレッズとしても良い時期だったと思いますし、怪我もつきものではありますが、もうちょっと試合に絡む回数を増やして欲しいです。

現時点では誰が来年もいるのかどうかわかりませんが、ホリ(堀之内聖SD)のマネジメントにもかかっていると思います。強化部も変わると聞いていますので、期待したいですね。

チアゴ・サンタナ選手の生かし方も課題でした。クロスマシーンのような選手も欲しいですし、それができれば生きる選手だと思います。例えば、サンタナ選手の下に渡邊選手とサビオ選手を置いて、両ワイドにクロスが得意な選手を置けば、中からも外からも崩せると思います。カットインは多いのですが、クロスボールの数が少ないですよね。前田直輝選手が右サイドで、左サイドも右利きの選手が起用されていることもあります。

RP:6月にクラブワールドカップが挟まるので、意外と難しいチーム作りにもなりそうです。

都築:堀之内SDとスコルジャ監督がどう考えるか、そこにどんな選手を獲って当てはめていくかですが、とにかく選手層を厚くしないとですね。

RP:ありがとうございました。

(サッカー専門新聞『エルゴラッソ』沖永雄一郎記者)
 
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都築龍太 -profile-
1978年4月18日生まれ。
2003年にガンバ大阪から浦和レッズへ加入。2010年に湘南ベルマーレへ期限付き移籍後、現役を引退。日本代表としても6試合に出場した。

(c)REDS PRESS