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ツヅキック(都築龍太の試合分析)

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起点はあまり作れなかったが、勝点を取れるサッカーになってきた(J1第35節・横浜FM戦)

浦和レッズで活躍された元日本代表GK都築龍太さんが試合を解説。聞き手は、サッカー専門新聞『エルゴラッソ』の沖永雄一郎記者です。


RP:10月30日(水)に日産スタジアムで行われた明治安田生命J1リーグ第35節、横浜F・マリノス戦は0−0の引き分けに終わりました。

都築:内容としては悪くなかったと思いますが、マリノスのほうがバイタルでの仕掛けが多かったのと、点を取る意識はマリノスのほうが高かったのかなというのはあります。レッズもチャンスはあって、ブライアン・リンセン選手が3人目になって抜け出したシュートや松尾佑介選手がオフサイドになったシーンなど、攻撃の形を作ろうとはしていました。

ただ、マリノスのほうがアイデアを出して崩しに来ていましたし、アンデルソン・ロペス選手が起点になっていて、そこを徹底的に使う特徴がありました。レッズはどちらかというとカウンター気味でしたね。

お互いビルドアップをしようとしていたので、中盤でいかにいい状態で受けられるかがポイントだったと思いますが、マリノスはサイドをよく使って展開していました。レッズのほうはやっぱり、サミュエル・グスタフソン選手がいるとゲームが落ち着きはしますね。

その中で決定機をどう作っていくかですが、起点になるところがあまりなかった。マリノス側のロペス選手的な存在、そうした動きをする選手がいない感じはありました。ただ、ディフェンスはしっかり守れていたいたし、ヴェルディ戦のように何もできなかったわけではありませんでした。

ボールのポゼッションはマリノスのほうがかなり高かったと思いますが、レッズもいいタイミングでいい攻撃に入る形は何本かありましたし、失点しないことも実行できていて、勝点を取るサッカーにはなってきていると思います。

それでもやっぱり、得点のところ、最後のバイタルのところは相当足りないですよね。マリノスのGKを脅かしたのは、リンセン選手のシュートと、二田理央選手がオフサイドになったシーンくらいですかね。

RP:ボール保持率やゴール期待値はマリノスが大きく上回りましたが、データ的にも終盤は盛り返した印象です。

都築:中島翔哉選手、二田選手が入ってからは、ペナルティボックス内でのプレーがより多くなったと思います。ただ、サンタナ選手が受けてさばいて動きなおして中に入っていてもボールがこなくて、サンタナ選手が中盤で受けているときはいい感じではないですね。

リンセン選手がプレーしている時も、彼が下がってくる裏のスペースを使うことが大事だと思いますけど、その意識がないというか、彼が下がってくる意味がないですね。それであれば、彼を前線に残しておいて攻撃に入ったほうが形になると思います。

少し空回りというか、シュートの意識は高かったと思いますが、彼が入ると守備面ではいいところもあるけど、攻撃は機能してないところが残念ながらあると思います。サイドを崩したときと高い位置で奪ったときはシュートで終わっていましたが、サンタナ選手が入っても、そこまで脅威になっていません。

特に原口元気選手は気になりますね。前のポジションに入ってもゲームを作ろうとしています。受けてさばいてで仕掛けない。あれだったら、彼じゃなくていいと思います。牙の抜けた虎みたいで、見ていても面白くないです。

なぜあんなプレーヤーになってしまったのか。強引に仕掛けて行くべきだと思うし、それができないのだったらいらないというか、それだけ求められているものは大きいと思います。それに応えられないのだったら彼じゃなくていいですし、ボールを持っている時間が短すぎます。

松尾選手についても、仕掛けようとしているけど確率は低い。仕掛けて何かを起こせる選手がいないですよね。勝点1を取れたのはよかったですが、点が取れる雰囲気がなかなか期待できません。いい形がたくさんあって決め切れなかったわけではないですから、チーム力としてはいあまは低いと思います。

守備に関しては、マリウス・ホイブラーテンが出場停止でしたが佐藤瑶大選手も体を張っていて、最後のところのブロックで守ることはできます。だけどそこからいい形にならないし、ビルドアップをしても相手をかわしきるプレーがほぼありません。

今年はこれでしょうがないというか、これ以上の進化はないんじゃないかと思います。来年に向けてゼロからチーム作りをしないといけませんし、そのためには残留しないといけません。残留してもらって来年にかけるという感じですかね。

RP:原口選手は復帰後初のウイング起用になり、二田選手がオフサイドになったシーンでチャンスは作りました。

都築:(そのシーンは)パスですよね。あのシチュエーションだとあのプレーしかないと思いますし、僕もあそこで仕掛けて欲しいとは言いません。ほかのシーンで、左サイドで受けた際に何の迷いもなく味方選手に渡していましたが、動きなおしがなかった。

さばいてゲームを作ろうとしているプレーが多いですけど、彼のいいところは縦に勝負してだと思いますし、無駄なランニングというか受ける動きもありませんでした。彼が若かったころ、一番よかったころは、前に前に要求してこなかったらキレて文句を言っていましたけど、いまはそういう選手が欲しいと思います。

これは僕が文句を言っているというより、みんなが感じていることじゃないかと思いますけど、いまこそ昔の原口が求められていると思います。相手やレフェリーに対してすごく大人な対応をしていますけど、そんなのはいらないですよ。

海外からシーズン途中に加入して、チームに求められてるものもわかっていると思うんですけど、大人になった感じでおとなしいプレーになっていて、そういう原口だといらないですし、昔のがっつくようなプレーをみんな観たいと思っていると思います。

加入してかなり時間も経ったので、コンディションを言い訳にもできないです。この調子だと、がむしゃらに裏へ裏へという二田選手のほうが新鮮に見えますよ。彼も結果が出ていないですが、わかりやすいし常に泥臭く裏へ行こうという姿勢は見えます。

原口に関してのこの話は極論ではありますが、彼が仕掛けてゴールに近づいていけば何かが起こる可能性はあるし、それがなければ何も起こらないわけですから。そこはちょっと整理してやってもらいたいですね。

RP:このあとはまた試合間隔が空いて、次戦はサンフレッチェ広島とのホームゲームです。

都築:広島はやっているサッカーの質も個の能力も高いです。何とか戦うしかないですし、優勝争いで広島にアシストしないように戦ってもらえればと思います。

RP:ありがとうございました。

(サッカー専門新聞『エルゴラッソ』沖永雄一郎記者)
 
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都築龍太 -profile-
1978年4月18日生まれ。
2003年にガンバ大阪から浦和レッズへ加入。2010年に湘南ベルマーレへ期限付き移籍後、現役を引退。日本代表としても6試合に出場した。

(c)REDS PRESS