back

ツヅキック(都築龍太の試合分析)

top
渡邊凌磨選手がいないといまのレッズはちょっと厳しい(J1第26節・鳥栖戦)

浦和レッズで活躍された元日本代表GK都築龍太さんが試合を解説。聞き手は、サッカー専門新聞『エルゴラッソ』の沖永雄一郎記者です。


RP:8月11日(日)に駅前不動産スタジアムで行われた明治安田生命J1リーグ第26節、サガン鳥栖戦は1−1の引き分けに終わりました。

都築:うーん、難しい試合というか、勝ち切れなかったですね。前半の最初はよかったのですが。ワイドも中も使いながら、バリエーション多めの印象はありましたが、決定的なシーンは試合をとおしてあまりなかったですね。松尾佑介選手がペナルティエリア内で奪ってからのシーンくらいでした。

それ以外はお互いに決定的なシーンが少なく、お互い似たようなサッカーをしている感じがありました。二田理央選手がトップに入るとゼロトップみたいな形になると思いますが、運動量が多くて守備も一生懸命やるので、レベルはまだまだですが岡崎慎司のような雰囲気があります。

負けん気も強い選手だと思いますし、アクセントにはなると思いますが、いままであまりやってこなかった形でもあるので、周りの運動量をもうちょっと増やさないと。二田選手が守備に回ったときや、奪ってからのカウンターの際に起点がいない感じがあるので、運動量が相当求められると思います。

ただ、鳥栖も最初は二田選手のところをつかまえづらそうにしていたので、ある程度はうまくいったのかなと思いますが、得点の匂いがしなかったのは残念でしたね。ただ、セットプレーではいままでなかったようなシュートまでもっていけたシーンが2回ありました。中断期間にいろいろ考えたんじゃないかと思いますし、決め切れなかったですが形は見れたと思います。

ただやっぱり得点のにおいがしなかったわけで、二田選手ももうちょっとゴール前にいられればと思います。欲しい場面でいられてないことが多かったので、運動量は多いけど起点となるようなプレーにはなっていなかったですね。

そんな中、渡邊凌磨選手が目立ちましたし、彼がいないといまのレッズはちょっと厳しいですね。伊藤敦樹選手が抜けたのも痛いです。チームのコントロールがうまくいっていない気がしますし、キャプテンの責任って何だろうと思いますけど、ゲームキャプテンだから誰でもいいんですよ。ただ、苦しいときにピッチの中で立て直せない現状があると思います。

RP:前半は0−0で折り返しました。

都築:後半の入りは受けてしまいましたね。特に最初の5分間は相手が前に前にきて崩しにかかっていました。そこをしのげたのは大きかったですが、鳥栖もあまり攻撃のクオリティは高くありませんでした。

それでも波状攻撃を受けてしまうのはセカンドボールがとれてないことと、ラインが低いですね。特にマルセロ・ヒアン選手のヘディングのシーンがわかりやすいと思いますが、ラインが低くなってしまっていて、あそこまで受ける必要はないと思います。なぜ後半の入りからああなってしまったのかも問題です。

ただ、サミュエル・グスタフソン選手のところでバランスはキープしていたので、全体的にはが悪くなかったと思います。彼がためているときに、大畑歩夢選手がアグレッシブに前に行くところも見られました。

サイドチェンジで真ん中を経由しがちで、安居海渡選手が受けてからというのが多かったですが、全部じゃなくていいのですが、相手を動かすためにもっとダイレクトを使っても良いと思いました。

緩急をつけるためにも、ロングのサイドチェンジがもっと欲しかったですね。あれがいちばん相手は苦しいですから。経由しすぎると相手も戻れるし構えられるしとなるので、ダイレクトをもうちょっと使ってもよかったと思いました。何かこう、指示待ちみたいな状況が多いですね。

松尾選手が入ってからは、より個人の戦いになってきたと思います。最初のチャンスも彼の粘りからでしたし、チームとしてよりも個人の能力ではがす感じになってきました。いまのレッズの選手もそういうタイプが多いですが、それプラスアルファが出てこないといけないかなと思います。

でも、松尾選手の個人能力によるカウンターで得点できました。これで流れが変わるかなというか、後半の序盤をしのいだあとはある程度レッズペースになっていたと思いますが、得点が足りなかったですね。畳みかける感じになりませんでした。選手交代にしても、同じようなタイプの選手が多いのでやるサッカーはあまりかわりません。
個人のはがす能力、ひとりでもやれる選手が生き残っていくのかな。

RP:しかし先制してすぐにPKを与え、同点に追いつかれました。

都築:守備固めは必要なかったと思いますが、PKの前のディフェンスにしても、ひと声で対処できるはずです。クリアでよかったですし、西川周作選手も声をかけていたのかどうか。聞こえなかったかもしれませんが、相手は120%バックパスを狙っていましたから。

ルーズなボールになってしまいましたし、相手のプレッシャーがあったにせよ井上黎生人選手の判断はないなと思いました。結果論として、西川選手がキャッチできていれば何も問題はありませんが、PKを与えたうえに退場になってしまいました。攻めに行っている途中でバランスも悪かったですかね。ルーズもルーズな感じで、自滅したかっこうでした。必要なかった失点ですね。

それでも最後に決定的なチャンスがひとつあって、行ってこいの打ち合いの中で松尾選手が抜け出しましたが、立っているGKに当てていては入りません。鳥栖にも良いシーンがありましたが、大畑選手がよく戻りました。少し先に倒れたので危なかったですが、牲川選手もよく止めました。

最後はお互いがバランスを崩して点を取りにいきましたが、結局決め切れずに痛み分けというか、もうちょっとやりようがあったのかなというチーム状況でしたね。特にレッズのほうは、これで上もないし下もないような雰囲気になってしまいそうなので、ずっとルーズな試合になっちゃうんじゃないかなと思ってしまいます。モチベーションがないと戦えないですし、個人のモチベーションだけになってしまうとうまくいかないですから

個人で言えば、関根貴大選手はよかったと思います。運動量もありましたし起点にもなっていました。言うほど年じゃないのにベテランみたいな雰囲気になっちゃってますが、まだまだやれると思います。

大久保選手は、仕掛けてなんぼで結果が出ないのが痛いですね。自身が奪われてカウンターを食らったシーンがありましたが、ああいうのがいちばんきついですから。10本仕掛けたら5本くらいは抜き切るくらいのところが欲しいですね。

RP:再開初戦は微妙な結果となりましたが、次節はアウェイの鹿島戦です。

都築:鹿島もジュビロに負けちゃってますし、いまはどこが強いのかわかんないですよね。
レッズも降格圏まではいかないと思いますが、モチベーションをもって戦ってほしいですね。このままだと、何もない雰囲気で何もないままシーズンが終わってしまいそうです。

RP:ありがとうございました。

(サッカー専門新聞『エルゴラッソ』沖永雄一郎記者)
 
・・・・・・
会員登録はこちら

都築龍太 -profile-
1978年4月18日生まれ。
2003年にガンバ大阪から浦和レッズへ加入。2010年に湘南ベルマーレへ期限付き移籍後、現役を引退。日本代表としても6試合に出場した。

(c)REDS PRESS