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ツヅキック(都築龍太の試合分析)

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怠慢すぎるパスが失点につながった。 それに、競らないなら邪魔してほしい (J1第22節・湘南戦)

浦和レッズで活躍された元日本代表GK都築龍太さんが試合を解説。聞き手は、サッカー専門新聞『エルゴラッソ』の沖永雄一郎記者です。


RP:7月6日(土)に浦和駒場スタジアムで行われた明治安田生命J1リーグ第22節、湘南ベルマーレ戦は3−2で逆転負けを喫しました。

都築:うーーーん…。残念としか言いようがないですね。試合の入りというか、武田英寿選手のシュートあたりから動きは出てきていて、ビルドアップから中盤で伊藤敦樹がどフリー受けられたようにスポットがあったので、そこをもっと使えればなと思いました。このシーンのようにズルズルと下がってくれていましたから。

あまりチャンスにはならなかったけど、サイドを崩したあとのセカンドラインも湘南はルーズになっていました。ブロックを作っているのでDFラインは固いけど、動かしたあとに間に入ってくるボールなどへの守備は甘いかなと思っていました。伊藤選手のミドルシュートもありましたが、ああすると前に出てこざるを得ないのでバランスは崩せたかなと思ったのですが、それ以降は決定的なシーンがあまりなかったですね。

湘南は攻撃でも、最後の2点は置いておくにしても、自分たちの形があまり見えてこなくて、リアクションサッカーでした。相手のミス、バランスの悪いときを狙いながら少ないチャンスで点を取ろうとしていたとは思います。失点シーン以外は危ない場面はなかったので、シュート3本で3点取られたくらいのイメージです。

そこをうまく決められましたし、チームとしてなにかルーズですよね。1失点目の伊藤選手のパスは何なんですかという話だし、あそこで3人集まっていて奪われたら、中が足りなくなります。最後の石原広教の対応にしても、サプライズで相手の攻撃になったからかボールウォッチャーになっています。あんなに間をとる必要はなくて、走りこんできて選手を見るポジションにいてもよかったのですが。

なんにしても伊藤選手の、何と呼べばいいんですかね…。適当なパスからなので、あれはちょっと怠慢すぎます。ましてやキャプテンになったのですから。ただ、そのほかのシーン、攻撃ではしっかり絡んでいて悪くはなかったので、気が緩んでしまうところがまだまだあるんですかね。

今シーズン序盤も相手に目の前に入られるシーンが目立ちましたし、一瞬気が抜けちゃうのかな。それでは致命的なので自覚をもって直さないといけませんし、失点シーンで怒っているのはマリウス・ホイブラーテン選手だけというのも。人数的にはレッズのほうが多かったので、1失点目は怠慢ですね。

それでも、後半に入ってからはいい形がつくれていました。そこの切り替えはよくできていたと思います。逆転するんだという気持ちも見えましたし、交代選手も使いながら逆転したのは評価すべきだと思います。

RP:まず62分にチアゴ・サンタナ選手が1点返しました。

都築:シュートの局面は先制されたシーンと似ていましたね。相手ボールを奪ってからサイドを崩して、安居海渡選手が中で受けて展開してという形でしたが、完璧な崩しだったと思います。

2点目についても、相手ボールを奪ってから渡邊凌磨選手が持ち運んでのカウンターでした。最後のパスの質も非常によかったと思います。感情をむき出しにしてやっているのは彼とホイブラーテン選手くらいじゃないですかね。

こうして逆転したところまでは非常によかったと思っていましたが、そのあとは最悪でしたね。逆転してから、もう試合が終わったような雰囲気になっていました。

RP:90分、90+2分と立て続けに失点してしまいました。

都築:2失点目については、競らないのだったら邪魔してほしいボールでした。西川周作選手のロングボールからでしたが、前田直輝選手のほうがボールに近かったですから。すらすか相手に体をぶつけるのはできたはずで、あそこで負けられると、キーパーからはもう彼にパスできません。

セカンドボールへの対応もルーズだったので入れ替わった形になり、得点した石井久継選手のスピードも速く見えましたね。ホイブラーテン選手の最後の対応も厳しかったと思いますが、やっぱり前田選手に何かして欲しかった。

少なくとも、体をコンタクトしておけばああいう失点にはならなかったんじゃないかな。マイボールからの失点でしたし、競るべきところで戦ってないのは残念でした。そういうミスが起きたり戦わなかったりすると、失点につながるというのは覚えておかないといけません。

3失点目は、時間帯も含めて守備が難しかったとは思います。引き分けでもいいやという考えもあったんじゃないかと思います。まず、ホイブラーテン選手がアタックにいけなかったので、DFラインを上げられませんでした。

中にシュート気味のパスが入ったときも潰しに行けなかったですし、最後にルキアン選手に渡ったときに、石原選手がラインのどこにいたのか。なんであそこにいるの、という感じでしたが、ずるずる下がっちゃうとそうなってしまいます。

西川選手も声を出さないといけないと思いますし、人数も足りていたと思うので、ホイブラーテン選手も下がるべきではなかったと思います。プレッシャーに行くべきだったし、行っていればDFラインを上げられたと思います。それにしても、石原選手が深い位置に居過ぎて、彼がラインに並んでいればオフサイドでした。

試合の流れを読むというか、あと一歩、二歩のところを「大丈夫だろう」と思ってやっているとオフサイドも取れなくなります。石原が警戒していたと思われる選手はルキアンの前にいましたし、守備のオーガナイズというか守り方というか、厳しい言い方をするとわかってないのかなと思ってしまいます。

もちろん、難しい局面ですよ。追いつかれたときにいやな雰囲気になったと思いますし、そこからもう一回という気持ちはあったにしても、行動に移せませんでした。ラスト2、3分の内容を見ると、やられてもしょうがないメンタル状態だったんじゃないかと思います。

そこをピッチ内で解決できる人間がいてほしいと思いますし、逆転したことに関しては評価できますけど、最終的な結果からは「だから何なんですか」となってしまいます。プロである以上シビアに評価しないといけませんが、選手はわかっていると思います。

2点目を取って逆転したあとの運藤量の少なさと、それが再逆転につながったのが最大の反省点だと思います。メンタルの問題もあると思うのでしっかりやってほしいです。

RP:磐田戦では快勝して、勢いに乗れると思ったのですが…。

都築:今年はそういう年なんだと思いますよ。たぶんこれ以上も以下も無いんじゃないですか。せっかくの久々の駒場で、雨は降りましたけど雰囲気も最高だった。もちろん、全試合勝ちに行くのですが、これだけは負けちゃダメだというが年に何試合かある中で、いまはそこで負けちゃう。そうするとお客さんもだんだんと減っていきます。

RP:次節もアウェイの京都サンガ戦で、下位チームとの対戦が続きます。

都築:もうなんも言えないというか、内容と結果を見てコメントするしかないですね。「こうしないといけない」と話しても、期待以上のことをやってくれる試合もあれば最低限もできていない試合もあります。

正直、対戦相手は関係ないと思いますし、内容で圧倒できるチームもあんまりないんじゃないかな。五分五分の戦いの中で、勝ちたい意識が高いほうが勝つと思いますし、レッズに足りていないと感じますね。

RP:ありがとうございました。

(サッカー専門新聞『エルゴラッソ』沖永雄一郎記者)
 
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都築龍太 -profile-
1978年4月18日生まれ。
2003年にガンバ大阪から浦和レッズへ加入。2010年に湘南ベルマーレへ期限付き移籍後、現役を引退。日本代表としても6試合に出場した。

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