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ツヅキック(都築龍太の試合分析)

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前半と後半で真逆の試合になった。前半が非常にもったいなかった(J1第17節・神戸戦)

浦和レッズで活躍された元日本代表GK都築龍太さんが試合を解説。聞き手は、サッカー専門新聞『エルゴラッソ』の沖永雄一郎記者です。


RP:6月1日(土)に埼玉スタジアム2002で行われた明治安田生命J1リーグ第17節、ヴィッセル神戸戦は1−1の引き分けに終わりました。

都築:前半と後半で真逆の試合になってしまって、前半が非常にもったいなかったですね。前半は相手がプレスを欠けてきて、両サイド相当振られてしまいました。サイドからサイドへと攻撃されたときのケアが甘かったのかなと思います。

失点のシーンが特にそうですが、まずは簡単に上げさせなかったり、行くべきところに行くといった厳しいところが出来ていないと、前半のようなサッカーになってしまうのかなと思います。

最初の左サイドからのクロスを伊藤敦樹が簡単に上げさせてしまって、逆サイドまで行ったあとの中のマークも問題でした。人数は足りていましたから。大迫勇也選手が強いのは分かっているので、どこまで人をかけるのかというのはありますが。

右からのクロスもフリーで上げさせてしまいましたし、岩尾憲選手のところももう少し厳しく行きたかったです。大迫選手がアシストする前のほうが問題でした。伊藤選手の守備の緩さは、今シーズンちょっと目についてしまいますね。最低でも滑るとか、体を張る部分が見えなければと思います。あそこであんなにフリーで上げさせるのは問題でした。

最後の石原広教選手の対応についても、気持ちはわかるのですが足を出してほしいですね。GK西川周作選手からは、少しブラインドになって見えなかったかもしれません。難しい場面ですけど、僕がGKだったら滑るかもう少し足を出して欲しかったかもしれません。

攻撃面では、チアゴ・サンタナ選手が抜けてオラ・ソルバッケン選手がシュートを打ったシーンなどは形になっていましたが、前半は相手の甘さ、ミスが出たときのカウンターしかありませんでした。前田直輝選手はこの試合でも勝負ができなくて、勝負しても抜けない。ソルバッケン選手が左サイドで機能してなかったのも厳しかったですね。

前半は神戸のプレッシャーも非常に激しくて、中央で起点を作られてからの両サイドのアグレッシブな攻撃に苦しめられました。逆にレッズは攻撃の起点がなくて、形が作れませんでした。よく1失点で収まったなと思います。大迫選手のヘディングなどを西川選手がよく防いでいましたが、けっこうやられたい放題だったかなと思います。セカンドボールもぜんぶ拾われていました。

RP:ただ、後半から流れが変わりました。

都築:後半は180度変わりましたよね。監督がコメントしていたとおりだなと思いましたが、相手がかなりプレッシャーをかけてきていたので、スペースはあるんですよ。そこを後半から入った中島翔哉選手がうまく使って崩せたのと、サミュエル・グスタフソン選手が入って縦パスもかなり入るようになりました。

中島選手の仕掛けが効いていましたし、シュートまでもっていく割合も高くなってきています。後半はいいサッカーになりましたし、ソルバッケン選手は右サイドのほうが良いですね。カットインするほうが彼は生きるのかな。

左サイドだとクロスも上げられなかったですし、現状のメンバー、前田選手の状態を考えても、右サイドのほうがいいんじゃないでしょうか。いまはソルバッケン選手のほうがアクセントになりますし、得点シーンのようなアシストも期待できます。

RP:ソルバッケン選手のパスから、中島選手が決めて同点としました。

都築:いい形の得点でしたし、ラストパスまでのつなぎもいい流れでした。後半はほとんどレッズがボールを支配していて、DF陣も大迫選手をしっかりつぶせていましたし、奪った後の動きも良かったと思います。

後半は逆に、レッズがサイドを起点にして攻撃にマンパワーをかけられました。中島選手が入ってから、渡邊凌磨選手も前に行けるようになりました。この試合は選手交代が非常によかったと思います。

岩尾選手がなかなか機能しなかったですが、グスタフソン選手が入ったことで中盤もよくなりました。なかなか奪われないし、攻撃の起点になることが多くなってきたのでよかったですね。中島選手はゴールだけが足りなかったので、得点できたのは今後にもつながります。いいシュートでしたし、いい崩しでした。

前半の後半で全然違うサッカーになってしまいましたが、後半のサッカーができればもっとよくなってくると思います。いまは中島選手がキーマンになっていて、運動量多く真ん中やサイドで受けて、PKぽいシーンもありました。アクセントにも起点にもなっていて、そうなることで周りも生きていました。

あとはチアゴ・サンタナ選手ですかね。監督からすると、両ワイドがクロスというよりも カットインして、SBが上がってという当ててという形がやりたいと思うので、サンタナ選手がなかなか生きてきません。

彼を使うのであれば、もうほっと彼のいいところを出させてあげないと。足元はあまりうまくなくて、クロスにヘディングで合わせるのが得意だと思うのですが、そうしたシーンがないですよね。どんどんクロスを入れてあげて、ヘディングにパワーがあるので、速いクロスのほうがいいのかなと思います。

彼が生きるようなチーム、フォーメーションにするのも手だとは思いますが、ちょっと違うのかな。もったいなさがありますね。いまはゼロトップみたいな形でやって、負けている状況や点を取らないといけない場面で彼を入れて、クロスを増やしていくのがいいのかもしれません。そこをどう考えるかですが、あそこまで中島選手が崩せたり中で勝負する選手が多いのであれば、いわゆるセンターフォワードの選手は置かなくてもいいのかなと。

ともかく、後半はめちゃめちゃよかったと思います。得点の匂いもかなりありました。

RP:逆転までありそうな雰囲気でしたが、もう1点足りませんでした。

都築:少し攻め急いだ感はあったかもしれません。中島選手はよかったけど、もうちょっと周りを使ってもというシーンもありました。ゴールを狙っていくのが彼のよさでもありますが、もうちょっと周り使えるともっとよくなると思います。

中盤で自分がボールを持っているときは、人を使って次の動きに入って、当てて動くことができるのですが、ゴール前でも周りを使えるともっと良くなると思います。

RP:今週末は試合がなく、次節は少し間が空いてアウェーのセレッソ大阪戦になります。

都築:神戸戦の後半のプレーをやる、それだけかなとも思います。相手が変わるのでまったく同じとはいかないでしょうが、後半のプレーをベースにしていきたいですね。守備も以前ほどルーズなところはなくなってきていると思います。

あまり批判はしたくないですが、前田選手がいまはアクセントになれてないので、継続ということで右サイドはソルバッケン選手でいいんじゃないかなと思います。監督はメンバーを固定しがちですけど、大久保智明選手にしても波があります。良いときは良いのですが、よくないときは何も起こらなくなってしまうので。

アベレージのいい選手を起用するべきかなと思いますし、前田選手や大久保選手は相手が疲れてきているときのほうがアクセントになれると思います。守備をする機会も少なくてすみますし、もっと高い位置で仕掛けられるかなと思います。

これは僕だけが言っているだけかもしれませんが、同じ評価のひともいるんじゃないかな。仕掛けて勝てる確率が低くて、たまに勝った時にトリッキーに目立つので評価もされるのでしょうけど。

岩尾選手にしても、町田戦は存在感があったのですがもうちょっとですね。相手のプレッシャーが速くなると厳しくて、うまい位置取りができるといいのですが背負ってると展開できなくなってしまいます。

安居海渡選手は運動量もあって守備でも貢献しているので、代えられない存在になってきているのかなと思います。チームとして良い局面も見えてきているので、継続していってくれればと思います。

RP:ありがとうございました。

(サッカー専門新聞『エルゴラッソ』沖永雄一郎記者)
 
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都築龍太 -profile-
1978年4月18日生まれ。
2003年にガンバ大阪から浦和レッズへ加入。2010年に湘南ベルマーレへ期限付き移籍後、現役を引退。日本代表としても6試合に出場した。

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