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ツヅキック(都築龍太の試合分析)

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西川周作は絶対的に計算できる選手。僕たちのときの37歳の選手とは違う(笑)(J1第12節・横浜FM戦)

浦和レッズで活躍された元日本代表GK都築龍太さんが試合を解説。聞き手は、サッカー専門新聞『エルゴラッソ』の沖永雄一郎記者です。


RP:5月6日(月)に埼玉スタジアム2002で行われた明治安田生命J1リーグ第12節、横浜F・マリノス戦は2−1でレッズが勝利しました。
 
都築:マリノスのターンオーバーに助けられた部分はあるとは思いますが、後半にヤン・マテウス選手が入るまではゲームをほぼ支配していました。最後の失点はいらなかったなとは思いますが、順当な結果だったと思います。
 
マリノスはアンデルソン・ロペス選手がいるかいないかでかなり差があると思うのですが、この試合では前のタメがまったくないので、縦に速いサッカーでした。若い選手が勢いよくくるようなプレーはありましたが、残念ながらマリノスのクオリティは低かったかなと思います。
 
ターンオーバーも大事なのですが、10人も変えると全く違うチームになってしまいます。そこに関してはレッズに分がありました。そこをうまく突いたのと、中島翔哉選手がかなりよくなってきています。
 
彼のシュートへの姿勢、シュートまでもっていく動きは評価すべきだと思いますし、足りないのは得点だけかなと思います。ブロックされてカウンターという可能性もあるのですが、シュートを打ち切るのは大事なことです。相手が出てこざるを得なくなる面もあります。
 
ただ、左サイドは中島選手の能力に頼っているところもあって、渡邊凌磨選手が出ていく スペースがなくなっている場合もあります。いちばんいいのは、中島選手がカットインしたときに渡邊選手が上がっていくバリエーションが増えることですが、中島選手がやりきっちゃうので。
 
彼は『打つ』と決めたら、どう打つかを考えずにイメージで持って行く選手だと思いますが、それもいいんですけど、渡邊選手が上がっていってもなかなかパスが出ない。彼が打ちやすいタイミングを作るためにも、渡邊選手を使う選択肢がもう少しあったほうがいいと思います。
 
RP:大久保智明選手と中島選手は相性がよさそうに見えます。
 
都築:絡むシーンは何回かありましたが、大久保選手は止まってから勝負しようとするので、プレーが遅れることがありました。その選択肢もいいのですが中島選手とスピード感のギャップがあるのかなとも思いました。
 
中島選手は、止まってから勝負にいくとあまりシュートまで持ち込めなくて、スピードに乗りながらシュートの体勢にもって行く感じなのでギャップがあるなと感じます。ただ、先ほども言ったようにやりきってしまえば、相手もゴールキックからリセットになります。
 
そこの連携を深めていければと思いますが、ちょっと攻撃が左サイドに集中しちゃっていますね。前田直輝選手があまり勝負にいけてないですが、やっぱり両サイドを使えるほうがいいですから、右も成熟していかないとですね。
 
中盤では、サミュエル・グスタフソン選手が高い位置で、低くなり過ぎない位置でプレーしている間はゲームを支配できる感じですが、この試合はそのとおりに、ほぼレッズがゲームを支配していたと思います。
 
RP:レッズのペースのまま、42分に伊藤敦樹選手のゴールで先制しました。
 
都築:このゴールはチアゴ・サンタナ選手が効いてましたね。彼が走ることによって、マリノスの選手が「右サイドもあるぞ」となって伊藤選手が走りこむスペースが空く効果があったと思います。
 
中島選手のドリブルからでしたが、サンタナ選手にも出せる、自分でもシュートを打てる体勢の中で、伊藤選手がギャップに走りこみました。中島選手の選択も良かったですが、あそこで伊藤選手がそのままシュートまでいけてしまうのは、マリノスの守備が緩いのかなと思いました。
 
それでも、うまく抜け出して得点しましたし、そういうシーンが多かったですね。2点目も同じような形でしたが、いいパスがスペースに出て、そこにいいランニングをしてというのが続くと得点の匂いがしてきますね。
 
マリノスのプレスがどうだったかなというのもありますが、GK西川周作選手からビルドアップをして、相手に触られずにゴール前まで行く形が得点シーンも含めて2本ありました。
 
そのあたりをかなり意識してできていたんじゃないかと思いますし、2点目のシーンはまさしくそうでしたね。石原広教選手からグスタフソン選手、グスタフソン選手からサンタナ選手でもよかったと思いますが伊藤選手に入って。
 
マリノスの選手が誰もシュートに対応しなくて、レッズでも見られる失点するときの形です。ずるずる下がってしまうと、GKもシュートが見えなくなってしまいます。
 
あとはコーナーキック、セットプレーも、得点にはならなかったけどこの試合では脅威を与えていたと思います。折り返しからのマリウス・ホイブラーテン選手のヘディングなど、バリエーションが見えました。
 
ただやっぱり、守備の連携も含めて、マリノスの全体的なクオリティが低かったんじゃないかなとも思います。中盤のプレスもそんなに来なかったので、逆にいやな相手だったかなとも思いましたが、しっかり勝ち切ったことは評価していいと思います。
 
唯一悪かったのは失点シーンですね。あそこのコンビネーションだけはさすがマリノスという感じでしたが、しっかり人数はいたので。あれだけ(守備の)人数がいて、得点した加藤聖選手につききれなかった。
 
失点シーンは唯一だめだったところかなと思いますが、試合全体の主導権は完全に握っていたので非常によかったと思います。ただ本当に、これを継続していかないとそろそろ取り返しつかなくなります。結果を出してほしいですね。
 
RP:この試合で、西川選手が通算600試合の大記録を達成しました。
 
 
都築:本当にすごいなと思います。いま37歳で、楢崎(正剛)くんや(川口)能活さんも長くやっていましたが、40歳に近づいてくるとどうしてもプレーのスピードが遅くなって、経験でカバーしてという形になってくるのですが、彼はまだ成長しています。
 
鈴木彩艶とのライバル関係もあってだと思いますが、この年齢でもうひと段階成長しました。怪我も少なくてミスも少なくて、絶対的に計算できる選手です。僕たちのときの37歳の選手とは違いますね(笑)。歴代1位になるにはもう2シーズン以上やる必要がありますが、怪我さえなければ十分可能だと思います。
 
RP:次は中4日で、アウェイのアルビレックス新潟戦になります。
 
都築:新潟は細かいサッカーをしてきて、ビルドアップもしっかりしてくるのでボールの取りどころをどうするのかが大事になってきます。やりづらい相手ですが続けて結果を出して欲しいですね
 
RP:ありがとうございました。

(サッカー専門新聞『エルゴラッソ』沖永雄一郎記者)
 
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都築龍太 -profile-
1978年4月18日生まれ。
2003年にガンバ大阪から浦和レッズへ加入。2010年に湘南ベルマーレへ期限付き移籍後、現役を引退。日本代表としても6試合に出場した。

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