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ツヅキック(都築龍太の試合分析)

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一番のポイントは荻原拓也選手。特に後半、相手の脅威になっていた(ACL GS第5節・武漢三鎮戦)

浦和レッズで活躍された元日本代表GK都築龍太さんが試合を解説。聞き手は、サッカー専門新聞『エルゴラッソ』の沖永雄一郎記者です。


RP:11月29日(水)に埼玉スタジアム2002で行われたAFCチャンピオンズリーグ・グループステージ第5節、武漢三鎮戦は2−1でレッズが勝利しました。

都築:いい結果でしたね。最後の最後のチャンスで、勝たないといけない中でホセ・カンテ選手の素晴らしいシュートが決まって、いい形で勝てたというのがこの試合の最大の結果だったと思います。

武漢の選手はフィジカルが強くて特に得点したダヴィドソン選手には手を焼いていました。スピードもあってタメも作れるいい選手ですね。彼が起点になっていましたが、完全には防ぎきれずに、ポイントになっていました。

レッズとしても、ボールを動かせるタイミングではよく動かせていたと思いますし、相手のディフェンスラインも1対1は強いですが、組織として連携が取れていないところもありました。2列目など、ボールを持っていない選手がつかまえづらい動きをもう少しやっていければよかったですね。

この試合のレッズでいちばんポイントになったのは、荻原拓也選手だったと思います。彼の攻守の推進力というか、守備も頑張れるし、前にも行けるところは特に後半、脅威になっていたのかなと感じました。

前半、大畑歩夢選手がけがをしてしまって、スプリントで上がったときにやってしまったのかなと思いましたが、そこまではサイドの上りが少なかったですよね。相手も狙ってきていた感じがあって、守備に追われるシーンが多くなっていました。大畑選手が交代するまでは右サイドが起点になっていた感じでしたが、交代して関根貴大選手が入って、荻原選手は左にポジションが変わりましたが、より攻撃的になりました。

RP:37分にはアレクサンダー・ショルツ選手のPKで先制しました。

都築:?橋利樹選手のゴールがオフサイドになったシーンなど、2人目、3人目の動きが出てきて連動して崩せている感じはあって、最後のフィニッシュの質のところまではきていました。PKになったシーンは、荻原選手が頑張って折り返してからでしたが、微妙な判定でしたけど、先制点を取れたのは大きかったですね。

おそらく、武漢のDFの選手が競る位置がない感じでブロックしに行ったのだと思いますが、ブライアン・リンセン選手がよく競りに行った面もありました。前半に関しては非常にいい形でしたね。

武漢も弱いチームじゃないですが、前半はピンチがほぼなかったですね。19分のCKからの流れを西川周作選手が防いだくらいですか。あのシュートは西川選手も見えなかったというか、マリウス・ホイブラーテン選手が足を出すんじゃないかというところを、ギリギリまで粘って待ったシーンだと思います。DFとしては、こぼれ球にプレッシャーに行きたかったですね。

前半終了間際に、?橋選手がああいう形で交代してしまったのは残念でしたね。オフサイドで得点にならなかったシーンもそうでしたし、そのあとも貪欲にゴールに迫るいいところを見れました。イレギュラーな交代が続いて難しかったと思いますが、ギリギリまで枠を3枚残して、失点した後になりましたが勝たないといけない姿勢を見せられたかなと思います。

どう評価するか難しいところはあるのですが、大久保智明選手はもっとやり切って欲しいですね。仕掛けてトライしているのはわかるのですが、上げ切ってというシーンもありましたけどやり切れなくて、そのあとピンチになるところもありました。

シュートで終わるのか、クロスで終わるのかもはっきりしたいですね。かわすところの能力は高いと思いますが、そのあとにどうするのか。比べたくないですが、福岡の紺野選手などは徹底している感じがあります。

大久保選手も、9割くらいは勝負にくると読まれていますから、一度間合いをとって、味方を生かすようなシーンも増えてくれば相手も守りにくくなると思います。いまの状態だと、(右サイドハーフは)関根選手でもいいのかなと思いますね。

後半はちょっと攻撃のバリエーションが減ったかなと思いますし、リンセン選手も頑張っているのですが、起点になりきれてない、収まらないところはなかなか変わってない感じがあります。もうちょっとFWらしい仕事、ゴールやシュートなど決定的なチャンスに絡むシーンを見たい選手ですよね。

RP:後半はちょっと流れが悪くなり、68分には同点に追いつかれてしまいます。

都築:失点の前にもダヴィドソン選手にシュートを打たれていますが、けっこうルーズになっていた時間帯でした。危険な選手ですから、もう少し間合いを詰めたかったですし、GKから見えなかったと思いますのであぶないシュートでした。

失点シーンは、トラップミスになったのが上手く言った感じもありますが、ホイブラーテン選手が油断してたというか、ショルツ選手が滑ったことで対応が遅れました。崩されたというよりも、個人の能力に対応しきれなった、今季なかなか無かったシーンでした。

西川選手も、動き出しが早かったですね。非常に難しいシチュエーションですけど、福岡戦もそうしたシーンがありました。イレギュラーなので準備をしておくのも難しい場面ですが、いいときであれば、防げないにしても止まって反応することができたと思います。

GK目線だと、先に動いてしまっているのはもったいないですね。ただ言うのは簡単ですけど、対応が難しい状況ですね。予期できないことまで予想しなければならないのですが、ショルツ選手が転んでホイブラーテン選手の対応も中途半端だったので、難しいシーンではありました。

展開されて崩されたというよりも、シンプルにダヴィドソンに当ててというシーンだったので、そこでしっかりマークできていなかったのは問題ですし、遅れて滑ってしまい、カバーしにいった選手も軽すぎたのが失点につながりましたね。

RP:そうした中で、最後はカンテ選手のゴールで勝ち越しました。

都築:ゴールの前にも、アレックス・シャルク選手のミドルシュートもあって、攻撃的になっていました。お互い勝たないといけない、難しい状況の中で素晴らしいシュートで勝ち切れたのは良かったですね。
ちょっと気になるのが、中島翔哉選手ですね。トラップが決まらなかったり収まらないというか、ボールロストが多すぎます。コンディションの問題もあるのかもしれませんが、代表のいいときの印象が強いですし、サッカーを知っている選手という印象があったので物足りなさがありますね。

この試合はとにかく、勝たなければいけなかったので勝ててよかったです。次に勝ってもまだ突破できるというわけではないですが、10ポイントに乗せて他グループの結果を待ちたいですね。可能性をつなげられて良かったです。

RP:次戦はまた舞台が変わって、J1最終節の札幌戦になります。小野伸二選手引退試合ということで札幌ドームは満員になりそうです。

都築:最終節は成績がよくないイメージがありますが、3位の可能性があるわけなのでしっかり狙って欲しいです。伸二の引退試合ということで、札幌的には最高の雰囲気になると思いますが、この試合のレッズには関係ないので。

あとは、ずっと言っていますがセットプレーからの得点が見たいですね。CKの数はけっこう多いですし、そこで得点できるようになれば楽なんですよね。守備ができるチームはなおさらそうです。

RP:ありがとうございました。


(サッカー専門新聞『エルゴラッソ』沖永雄一郎記者)
 
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都築龍太 -profile-
1978年4月18日生まれ。
2003年にガンバ大阪から浦和レッズへ加入。2010年に湘南ベルマーレへ期限付き移籍後、現役を引退。日本代表としても6試合に出場した。

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