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ツヅキック(都築龍太の試合分析)

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岩尾選手の位置をもう少し高くして、小泉選手との距離感もよくして欲しい(ACL GS第4節・浦項戦)

浦和レッズで活躍された元日本代表GK都築龍太さんが試合を解説。聞き手は、サッカー専門新聞『エルゴラッソ』の沖永雄一郎記者です。


RP:11月8日(水)に浦項スティールヤードで行われたAFCチャンピオンズリーグ・グループステージ第4節、浦項スティーラーズ戦は1−2の敗戦となりました。

都築:結果は残念でしたが、内容は前回の対戦よりも良かったと思います。シュートも打っていてアグレッシブだったと思いますが、なんとなく攻めさせられていた感じもけっこうありました。明本選手が右SBに入って、前に前にという流れはありましたが、彼はサイドの起点となるタイプではないので、どうやって攻めていくかというところは多少課題があったかなと思います。

浦項はそこまで上手いとは思わないのですが、強いなと感じるチームですね。勝負どころもわかっている感じがありますし、守りも固いというか、レッズからしていやな守り方をしてきます。GK使ってのビルドアップを試みたりもしていましたが、基本的には難しいことをしてきません。

ビルドアップのミスからレッズのチャンスになりそうなシーンはありましたが、基本的にはミスが少ないチームです。守備でコースを切るところと体を張るところも徹底されています。GKも含めて安定しているチームだなと思いましたし、レッズとしてはそこを崩しきれませんでした。

RP:いい試合の入りから、今回はレッズが先制しました。

都築:いい形の攻撃でうまいシュートでした。左サイドが起点になってからホセ・カンテ選手のシュートというシーンが序盤からありましたし、前回より良い攻めが出来ていました。ただ、先制ゴールが(浦項にとって)重い得点にならなかった感じがありますね。相手に決定力のある選手がいたのと、いまはちょっと勝負強さが足りないのかなとも思いました。

それは守備と攻撃の両方で、取られてはいけないタイミングで失点してしまい、決めなければいけない場面で決められない。勝負という点で相手のほうが上手だったかなという感じはあります。球際や中盤の攻防で負けないことが大前提だと思いますが、そこで五分五分にもっていけなかった感じもあります。

相手のチャンスや決定機にしても、PKになったシーンもアンラッキーとは言えないような感じでしたし、最後の失点もそうですね。明本選手の退場で数的不利になっていましたし、厳しい言い方をすると、引き分けでよかった試合で相手に勝ちを譲ってしまいました。ACLの、しかもリーグ戦で逆転1位を目指すなら勝ちたかったところではありましたが。

ブライアン・リンセン選手が決めてくれれば、とも思いましたが、彼がフリーになっていた時間帯は相手がボールに食いついて、レッズが数的不利なのに人が空いていました。リンセンが前に張っていたこともありましたが、そこで決めきることが出来ませんでした。

レッズとしては、同点に追いつかれた直後は勝ちに行こうとしていましたが、退場になってからは行っていいのか行かなくていいのかが難しかったと思います。ただ、引き分けでいいという方針であれば、もうちょっと守備に回っていてもよかったと思います。最後の失点シーンも、レッズの左サイドが1対1の状況でした。

浦項がかなり人数をかけてきていて、勢いの差もありました。個で打開することがなかなかできなくて、この2回の対戦で、浦項も強いいいチームだなということがわかりましたね。あとは2位狙いしかないですが、残り2試合は絶対に勝利が必要なので、そのための戦い方を考えないといけません。厳しいながらも可能性はあるので、最低限勝つということにフォーカスしないといけないですね。

ちょっといまは勝ち切るのが難しいんですかね、チーム状況もよくないのか。

RP:全体的にかなり疲労がたまっているようです。

都築:ただ、相手も過密日程ですし、韓国のアウェイは極端に言えば沖縄に行くよりも近いですから。そして、このスケジュールを承知のうえで戦っていますから。だからこそメンバーを変えながら戦っているわけですし。

コンディションの管理はしっかりやっていかないと取り返しがつかなくなりますし、やっぱり、決めるタイミングで決められる選手がほしいですね。今季は逆転負けはほとんどなかったですし、もう少しチーム状態がよければとも思ってしまいます。

ルヴァン決勝の負けを払拭するいいチャンスでしたが、結果につながらなかったですね。ホームでの対戦よりは攻撃も出来たと思いますが、崩し切ってというところは先制点のシーンくらいでしたかね。それも最後はカンテ選手の個人技でしたから、もうちょっと人が絡んでいきたいですね。

それと、アレクサンダー・ショルツ選手が出場しなかった理由も気になりますね。

RP:はっきりとはわからないですが、今回は帯同せず、ルヴァン決勝の前もあまり状態が良くなかったようです。

都築:岩波拓也選手が悪いとは言わないですが、最終的なところで守り切れてないのはいままでと状況が違うので、ショルツ選手の不在は少なからず影響していると思います。

あとは毎回言っていますが、中盤のため、落ち着かせるプレーが欲しいですね。岩尾憲選手の位置が低いのはずっときになっていて、あれが戦術どおりなのであれば、いい形を見せてほしいですね。彼がロングボールを蹴っているのはあまり良い形ではないと思います。

両サイドを上げて彼が最終ラインに下がることと、攻めてるときに彼が後ろでバランスを取って守っていることが多いですが、ビルドアップで岩尾選手が低い位置にいると、攻撃の起点がなくなって長いボールばかりになってしまいます。そこで小泉佳穂選手を起用する意味が出てくると思うのですが。

フィニッシュを期待されているわけじゃないと思いますし、ゲームを作ることができる選手です。明本選手など前に行ける選手がいるわけなので、もっと高い位置から追い越す動きをさせてあげるためにも、中盤でのためが必要になります。言い出すとキリがないですが、岩尾選手が下がる形での意図、こうやって攻めるんだというのを見たいですね、

中盤の攻防があまりないですが、今のメンバーで良いと思いますので、岩尾選手の位置をもう少し高くして、小泉選手との距離感もよくして欲しいなと思いますね。サイドチェンジも効果的ですが、毎回だと毎回だと読まれてしまいますし、サイドに渡ってからの中の守備をしっかり固められてしまいます。なんにせよ、残り2試合全部勝たないといけないプレッシャーはありますが、しっかり戦ってほしいなと思います。

RP:次戦は再びリーグ戦に戻り、いよいよ神戸との直接対決です。

都築:もう最後の意地、じゃないですけど、神戸の優勝の手助けをする必要はないですから。戦って勝ってほしいと思います。

RP:ありがとうございました。


(サッカー専門新聞『エルゴラッソ』沖永雄一郎記者)
 
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都築龍太 -profile-
1978年4月18日生まれ。
2003年にガンバ大阪から浦和レッズへ加入。2010年に湘南ベルマーレへ期限付き移籍後、現役を引退。日本代表としても6試合に出場した。

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