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ツヅキック(都築龍太の試合分析)

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この勝ち上がり方は大きい。小泉選手が起点になっていた(ルヴァンカップ準決勝第2戦・横浜FM戦)

浦和レッズで活躍された元日本代表GK都築龍太さんが試合を解説。聞き手は、サッカー専門新聞『エルゴラッソ』の沖永雄一郎記者です。


RP:10月15日(日)に埼玉スタジアム2002で行われたYBCルヴァンカップ準決勝第2戦・横浜F・マリノス戦は2−0でレッズが勝利し、合計スコア2−1で決勝戦に進出しました。

都築:レッズとしては相当いい試合だったのかなと思います。内容も結果もですね。マリノスがちょっと、最後の精度のところがうまくいってないのかなというのはありますが。良い攻撃ができるチームといい守備ができるチームの戦いで、2試合の合計ではありますが、最終的にはレッズが上回りました。

そうなった要因として、守備のいいチームが、ペナルティーボックスやバイタルエリアでの仕掛け、フィニッシュの意識でマリノスを上回ったからじゃないかなと思います。全得点がPKではありましたが、勝ち上がったチームのほうがこのレギュレーションで強かったということになります。

1戦目に続いて、お互い堅い試合ではなかったと思います。見応えのある攻防でした。特にレッズは、いい形の勢いのある攻撃を2戦とも見せてくれました。お互いメンバーを欠いていて、レッズは関根貴大選手の右SB起用など、想定していなかったことをしないといけない試合でしたが、崩しのところでいい攻撃ができた試合だったと思います。

特に、ペナルティーボックスに進入していくときのサイド選手の動きが非常に良かったですし、PKを取ったシーンもそうですが、味方を追い越していく動きが非常に多かったですね。

こういう中盤の攻防が激しい試合で、ビルドアップできない中でいかにバイタルまでボールを運んで崩しきれるか。レッズはいままでなかなかそれがなかったのですが、マリノス相手に…マリノスの守備が簡単にやらせてくれた面もありましたが、それにしても両サイドが良かったと思います。

荻原拓也選手は2戦とも攻守に頑張っていましたし、彼の勢いある上がり、追い越して入っていく動きが良かったですね。また、お互いミドルシュートの意識が高かったなとも思います。永戸勝也選手がクロスバーを叩いたシーンや、ホセ・カンテ選手がやや強引なシュートなどで、フリーで打たせては危ないと出てこざるを得なくなったところに裏を狙うような攻防もありました。

打たずにパスをつないでおいたほうが、というシーンもあったかもしれませんが、シュート意識が高くなってきたなと感じました。サイドの崩しの意識も高くて、ただクロスを上げるだけではなく、切り込んでからニアに入るなど、攻撃のバリエーションや可能性が非常にあったと思います。

RP:先制点もサイド攻撃がPKにつながりました。

都築:荻原選手のクロスの質はそれほど高くなかったのですが、微妙にGKが対処しづらいところに上がりました。ただ、このシーンもサイドを崩してのものでしたし、こぼれ球に早川隼平選手が素早く反応していましたね。

2点目のPKもサイドからでしたし、相手にとって浦和のサイドの崩しはかなり効いていたと思います。攻撃の形を多く作れたのはレッズのほうで、マリノスは結果的にミドルシュート頼みのような形になりました。

マリノスは守備もあまり機能していないというか、下がっちゃいますね。レッズがよく崩せていたように見えますが、マリノスはボックスの中に人数が多いながらも、マークにつき切れずにレッズに入りこまれていました。

RP:見事な逆転勝ちでした。

都築:この勝ち上がりかたは大きいですよね。マリノスも強烈だったのですが、最後のフィニッシュが雑というか、レッズの両CBの守り方がうまいですね。攻撃時のミスが少なくて、カウンターを受けることがあまりなかったですし、中盤での攻防にしてもクロスにしても、コーナーを取るなどやりきっていた、いい形で攻撃を終わらせていたのが良かったと思います。

あとは、小泉佳穂選手がこれまでよりも起点になっていたと思います。フィニッシュ前のスルーパスを出していることが多かったですし、細かいところにスペースを作ってボールを出すのは得意なプレーだと思いますが、あそこまで持っていく、あの高さの位置で受けることがなかなかできていませんでした。

ゴールに近いところで受けたときのアイデアはある選手ですし、これまでできていなかったところができてきているなという感触は多少あります。まだまだですが、少しずつよくなっていますし、けが人が多い中でよくやったと思います。早川選手もよく出場しましたし、関根選手もポジションを変えてプレーしました。チーム全体で勝った感じですね。

RP:マリノスのスタイルとかみ合ったこともあると思いますが、攻守のバランスも良かったように見えました。

都築:マリノスが急ぎ過ぎているのかなという感じも受けましたね。ああいうサッカーだったかなと。極端に言えば、西村拓真選手、アンデルソン・ロペス選手、エウベル選手だけで攻めていました。いい時はサイドの選手がもっと高い位置でプレーしていたと思うのですが。

いまのマリノスは攻守がはっきりしている感じもあって、個人頼みのサッカーという印象も受けました。攻撃のポイントが絞れるチームは個人勝負も多くなるし、レッズにとって戦いやすいですからね。前半のミドルシュートのような、サイドをえぐってくるシーンがあまりなかったですよね。

レッズがトーナメントの戦い方をうまく行ったという試合でもあったと思います。結果が出たのはいいことですし、すぐに決勝を意識して戦う必要はないですが、ここまで来たので優勝して欲しいですね。勝ってほしいのは毎試合そうですけど(笑)。

RP:決勝の前に、またリーグ戦に戻る難しさがありそうです。次はホームで柏レイソル戦になります。

都築:現状は優勝の可能性がちょっと少ないかもしれませんが、1試合勝てばまた雰囲気や状況が変わってくると思います。ここで勝って、上のチームがコケてくれれば直接対決も生きてきます。そこがモチベーションになると思いますが、レッズはもうコケられないので、頑張って欲しいですね。

RP:ありがとうございました。


(サッカー専門新聞『エルゴラッソ』沖永雄一郎記者)
 
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都築龍太 -profile-
1978年4月18日生まれ。
2003年にガンバ大阪から浦和レッズへ加入。2010年に湘南ベルマーレへ期限付き移籍後、現役を引退。日本代表としても6試合に出場した。

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