back

ツヅキック(都築龍太の試合分析)

top
気になった前半の内容。やりにくそうだった、左のショルツ(天皇杯3回戦・山形戦)

浦和レッズで活躍された元日本代表GK都築龍太さんが試合を解説。聞き手は、サッカー専門新聞『エルゴラッソ』の沖永雄一郎記者です。


RP:7月12日(水)にNDソフトスタジアム山形で行われた天皇杯3回線、モンテディオ山形戦は1−0でレッズが勝利し、4回戦へと駒を進めました。

都築:前半はかなりよくなかったですね。チャンスを作れなかったですし、攻撃の起点もつくれませんでした。関根貴大選手へのスルーパスやポストプレーなど、興梠慎三選手らしいところもありましたが、当てる前にかなりカットされていました。

そこからカウンタ―を受けたりしていましたが、相手の攻撃の質に低さに助けられたところもあります。山形の出足もよかったと思いますが、つなぎにいったところでミスが怒っていて、前半は攻撃らしい攻撃がほぼなかったんじゃないかなと思います。

よくあるパターンですが、みんなが受けたがらなくなって、ボールをもっている選手がパスコースを探す時間が長くなっていて、球離れが悪くなっていました。ボランチは平野祐一選手と岩尾憲選手のコンビでしたが、前回言ったような、その一個前でのチャンスメークが欲しかったですね。

二人が横の関係にもなっていて、ボールを失わずにセーフティにつなげるのは良いところですが、起点になれてない感じはありました。パスも良くはなかったですが、トップ下の安居海渡選手がつかまって奪われて、というシーンもありました。失ってはいけないところでロスとしてしまい、らしくなかったですね。

山形もけっこうプレスに来ていて、攻撃では右サイドのイサカ・ゼイン選手がぐいぐい前にきていました。シンプルな攻撃ではありましたが、奪ってからが速かったので苦戦はしましたね。失い方が良くないとこうなってしまいます。

RP:後半は雰囲気が変わりました。

都築:頭からホセ・カンテ選手、伊藤敦樹選手など3人を代えてきましたね。半々くらいでしたが、カンテ選手がボールを収める動きをしていたので、預けて押し上げていくことができていました。

伊藤選手もボール奪取能力を見せて、高い位置でボールを奪っていました。そういったところから、後半はある程度できたのかなと思います。ただ、得点は伊藤選手のほぼ個人技によるものだけでした。

天皇杯なので、こうした渋いゲームというか、難しいゲームになることはわかっていたと思いますから、勝ち切って次に進んだのが成果だと思います。ただやっぱり、前半の内容は気になりましたね。

?橋利樹選手など、試合に絡めてはいえるけどもっとインパクトを残さなければいけない選手が、チャンスをものにできていません。プレーと試合の内容が比例しちゃっているのかなと感じました。

守備陣ではちょっと、アレクサンダー・ショルツ選手がやりにくそうにも見えましたね。岩波拓也選手とのコンビでしたが、今季は左利きのマリウス・ホイブラーテン選手が左にいることが多かったからかもしれません。ああした選手は特殊ですし、重要性がわかりますよね。

ショルツ選手の縦パスが、左からだとあまり入らなかったですし、受けに来る選手も少なくなっていました。奪われる可能性もありますが、リスクのあるパスを入れることで一枚はがせることもあります。ちょっと慎重になりすぎてる節はありますね。

山形の選手も頑張ってましたが、質はちょっと落ちるのかなと思いましたし、それによって『最後のところで守ればいい』となってしまっていたかもしれません。攻撃に関しても、『いつか取れるだろう』という感じに見えましたが、前半で『これはやばいな』となったんじゃないかと思います。

前半はシュートをほとんど打てなかった(※公式記録では3本)ですし、決定機も特にありませんでした。天皇杯は内容と結果を両立するのは難しい大会で、下のカテゴリのチームには負けたくない大会ですから、勝ち切ったことは良かったと思います。

RP:鈴木彩艶選手のプレーはいかがでしたか。

都築:安定していたと思います。ビルドアップなどキックの成功率は西川周作選手ほどではないかもしれませんが、高いレベルでできています。難しい試合で、見せ場らしい見せ場はなかったと思いますが、しっかり無失点に抑えました。

ルヴァンカップなど、彼もなかなか勝利が少なかったのですから、勝ち切ったことは彼にとっても良かったです。ほかのチームに行ったらもっと出場できるだろうし、いまはモチベーションを保つのが難しいと思います。

そこに、いい意味で雑音になるのかわからないですが、ああいう話(移籍関連)が出てきている中で、自分をアピールもしないといけないし勝たないといけない。期待されているが 故のプレッシャーはあると思いますが、安定していたし結果につながったと思います。

RP:次は中断前の最後の試合、アウェイのセレッソ大阪戦になります。

都築:セレッソも波がある感じですが、ここ最近はちょっと相性が良くないですよね。そこはチーム力で勝っていくしかないですし、メンバーも固定されてきています。ある程度決まった枠の中で先発を判断しているようにも見えますね。

だけど、まだまだシーズンはこれからですし、いま出てない選手がどのようにモチベーションを高めて、どう復活して出てくるかが楽しみですし、それがまたチーム力の底上げにもつながってきます。


RP:ありがとうございました。


(サッカー専門新聞『エルゴラッソ』沖永雄一郎記者)
 
・・・・・・
会員登録はこちら

都築龍太 -profile-
1978年4月18日生まれ。
2003年にガンバ大阪から浦和レッズへ加入。2010年に湘南ベルマーレへ期限付き移籍後、現役を引退。日本代表としても6試合に出場した。

(c)REDS PRESS