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ツヅキック(都築龍太の試合分析)

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もっとゴール前に人数をかけなければ行けない(J1第20節・FC東京戦)

浦和レッズで活躍された元日本代表GK都築龍太さんが試合を解説。聞き手は、サッカー専門新聞『エルゴラッソ』の沖永雄一郎記者です。


RP:7月8日(土)に埼玉スタジアムで行われた明治安田生命J1リーグ第20節、FC東京戦は0−0で引き分けました。

都築:お互いに、ちょっと淡白な試合でしたね。前半はまだ、ある程度形が作れていたと思いますが、後半は惜しいミドルシュートがいくつかありながらも、お互いにチャンスが作れない、GKがあまり映らない試合でした。

序盤に酒井宏樹選手が負傷交代してしまって、荻原拓也選手が入りましたが、切り込んで右足でというシーンがあまりなかったですね。慣れない右サイドでも、運動量や守備のところでは貢献していたとは思いますが、攻撃では絡みがあまりなかったですね。

伊藤敦樹選手にボールが入ったところで興梠慎三選手が裏に抜けようとしていたり、関根貴大選手が間を作って出したパスからの興梠選手の決定機は良かったですね。関根選手は枠を捉えたミドルシュートもあって、いいトライをしようとしていました。

ただ、そこで得点にいたらないのが、いまのレッズの象徴的なところなのかなとも思いました。守備のほうでは、アレクサンダー・ショルツ選手が高い位置でねらってカットをしたり、マリウス・ホイブラーテンの1対1の対応など、いいシーンがあったと思います。

RP:序盤はFC東京のほうが勢いがありました。

都築:攻撃について、FC東京のほうが連動していたかなと思いました。松木選手の左足シュートなど、左サイドが起点になっていましたが、長友選手を追い越してクロスなど、ピッチを広く使っていたと思います。中盤の戦いでは、お互いが出足が良かったわけではなくて、なんとも表現しづらい攻防でした。

もっとゴール前に人数をかけなければ行けないシーンもけっこうありましたし、後ろからのビルドアップをやり切ることも、特にレッズには必要だったのかなと思います。ひとりの選手がボールを持つ長ければ長いほど、攻撃が遅くなることもあります。

FC東京の攻撃にしても、質が高いものではありませんでした。それに関しては、真ん中での起点を作らせなかったことがありました。ディエゴ・オリベイラ選手を抑えて、攻撃を遅らせられたのはレッズの守備でよかったところです。

ただ、見てる側からすると何とも言えない、厳しい言い方をすると凡戦でもありました。もうちょっと見せ場があっても良かったんじゃないかと思います。まあ、そうそう毎試合うまくいくわけではないですからね。

選手交代でもあまり見せ場がなく、交代した選手がなかなかチャンスを作れませんでした。なんとなくお互いが、時間が過ぎるほど『引き分けでも良い』という戦い方になっていったようにも見えました。そうなると見応えがなくなってしまいますよ。

浦和としてはやっぱり、起点になる選手が欲しいですよね。興梠選手も、裏に抜けるシーンは多かったけど下がって受けにくるシーンはそれほどなかった。岩尾憲選手のところで組み立てていますが、一個前の選手がいません。

そこが興梠選手なってしまったり、関根選手が前に来ることもありますが、その一つ前で展開するなりスルーパスを狙っていきたいです。いいときの小泉佳穂選手のイメージですね。それができる選手として、安部裕葵選手を獲ってきたのかもしれません。

ちょっと縦に縦にと速くなっているので、岩尾選手の一つ前でタメがつくれる選手が欲しいなと感じます。FC東京で言うと東慶悟選手になるのだと思いますが、東選手もちょっとプレースタイルが変わってきていて、ゲームメークという感じではなくなっていますね。

守備がよくて負けてないだけに、なかなか難しいですね。湘南戦と鳥栖戦は勝ち切りましたが、得点力のところはまだまだ課題になります。何度も言っていますが、もうそろそろ、人を変えていくこともしなければいけないかなと思います。この夏はけっこう動きそうなので、チームのアクセントになる選手の補強はポイントですね。

試合の後半は、安居海渡選手や荻原選手のミドルシュートくらいしか見せ場がありませんでした。運動量もお互い少なかったです。大畑歩夢選手も、前節にあった良いシーンがあまり見えませんでした。

攻撃のところは何か足りないという状態が続いていますし、起爆剤になる選手がもうちょっと出てきてほしいなと思います。これだけ引き分けが多いと勝点が積みあがっていかないですから、改善していきたいです。

RP:この試合は暑さの影響もあったでしょうか。

都築:暑くはなかったと思いますが、湿度は確かに高かったですかね。でもお互い同じ条件ですし、連戦でもなく、試合間隔が1週間空いた中では、暑さを言い訳にするのはどうかなと思います。

ただ、これからもっと暑くなってくるでしょうし、運動量自体が落ちてくるのはしょうがない部分はあります。そこは動きの質、パスの質でカバーしていって、考えてサッカーをしていかないといけません。

RP:次は連戦で、天皇杯3回戦・山形戦です。

都築:山形もいいサッカーしているイメージがありますし、FC東京の新監督がやりたいサッカーだと思います。レッズはメンバー変えてくるでしょうし、交代も含めてメンバーが固定されてきちゃってるので、いいところを見せてほしいですね。


RP:ありがとうございました。


(サッカー専門新聞『エルゴラッソ』沖永雄一郎記者)
 
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都築龍太 -profile-
1978年4月18日生まれ。
2003年にガンバ大阪から浦和レッズへ加入。2010年に湘南ベルマーレへ期限付き移籍後、現役を引退。日本代表としても6試合に出場した。

(c)REDS PRESS