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ツヅキック(都築龍太の試合分析)

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酒井選手は、いい意味でも悪い意味でもちょっと気になる(J1第3節・C大阪戦)

浦和レッズで活躍された元日本代表GK都築龍太さんが試合を解説。聞き手は、サッカー専門新聞『エルゴラッソ』の沖永雄一郎記者です。


RP:3月4日(土)に浦和駒場スタジアムで行われた明治安田生命J1リーグ第3節、セレッソ大阪戦は、2−1で浦和レッズが逆転勝利を飾りました。

都築:良い試合だったかなと思います。1、2戦目に比べるとある程度形も見えましたし、どうやってサッカーをやりたいのかはなんとなく見えたかなと思いました。ただちょっと、全体的にはやっぱり、人数をかけて攻めるところはまだまだですかね。奪ってからもビルドアップしてからも、攻撃に入れる選手が限られていました。

安居海渡選手の決勝点のシーンでは、人数をかけて攻めていたような感じはありましたが、1点目のPKに繋がった興梠慎三選手が抜け出したシーンのように、スルーパスに対して1人がみたいな攻撃が多かったかなと思います。ただ、どんどん裏を狙う動きは出てきているので、そこをうまく使えるようになるといい形になってくるのかなと思います。

得点シーン以外にも、前半のモーベルグ選手がドリブルで中に持ち込んで、最後は小泉選手がシュートを打ったシーン。あそこがいちばん良かったかなと思いましたね。個人の能力の部分もありましたが、人が多く関わっていて、ああいう形で崩しにかかれると非常に面白いですね。

ああやって、ショートカウンターやロングカウンターであれ、ビルドアップから裏を抜けるプレーであれ、やっぱり人数をかけて攻撃で来ているかが大事だなと思います。そうした右サイドの崩しもありましたし、伊藤敦樹のシュートがポストを叩いたシーンでは左サイドを崩しました。この試合ではいい形が見えましたね。

これを継続させて、ああいった形を常に作ろうとする動きをしていかないと、また方向性が見えないところに戻ってしまいます。1、2戦目であまりにも形が見えなかった中で、しっかり示してしっかり勝てたところはよかったと思います。

守備についても、うーん、前半はちょっとピンチもありましたけど。クロスバーに当たったシーンやCKからヘディングされたシーンなど、何本かは危ないシーンもありましたけど、そこはしっかり粘っていました。後半も、VARで取り消されたシーンなどはもっと集中しなければいけませんが、全体的にはしっかり守れていたと思います。

酒井選手については、いい意味でも悪い意味でもちょっと気になります。彼が攻撃に絡んだときは、いい形になっているんだけど実らないというか。相当高い位置を取っていて、使ってこうとしていると思いますけど、リスクもあるので攻撃をやりきらないと非常に危ないです。

そこをもうちょっと徹底してやっておくべきかなと思います。彼は運動量も多いし、スプリントもできるのでわかるんですけど、攻撃のあとのリスクマネジメントをやりながらじゃないと、レッズにとって逆に穴になります。この試合だけではなくて、開幕2戦もかなりアグレッシブに前に行っているので、バランスも意識してやったほうがいいかなと思いますね。


RP:この試合では興梠選手や安居選手など、初スタメンの選手や交代選手が得点に絡みました。

都築:代わって入った選手が結果を出したことはチームにとってもプラスになるでしょうね。安居選手は今季初のメンバー入りでしたし、まだ選手を見極めているような状態なのでしょうね。

安居選手が入ると、伊藤敦樹選手や岩尾憲選手とはまた違ったアクセントになるし、実際に結果も出しました。こういうことの繰り返しはおそらく、前半戦というかある程度落ち着くまではけっこう行われるのかなと思います。

興梠選手が入ったことで、開幕2試合とも変わりました。彼が入ると、ある程度矯めもできるし裏にも抜けられる。彼も意識していると思いますけど、守備でも非常に頑張っていました。

これで、ブライアン・リンセン選手はまた結果を出していかなきゃいけないことになります。しばらくは様子見みたいな感じで動いていくとは思いますが、どこかで固定されてくると思います。前線で矯めを作れるという意味では、今は興梠選手いいのかなとも思いますね。


RP:サイドの選手の調子が上がり切っていない感じもあります。

都築:大久保智明選手もアクセントにはなっていると思いますが、もうちょっと仕掛けて欲しいですね。モーベルグ選手も、いい状態であればもっと仕掛けていけるのだと思いますが。例のやつというか、カットインしてからのプレーが少ないですねモーベルグ選手が出ているときは、酒井選手が上がっていかないと右サイドからのクロスがなくなっってしまうので、それも含めての高いポジション取りだとは思います。


RP:失点シーンについてはいかがですか

都築:ある程度守れていた中で、失点シーンはちょっとよくなかったですね。西川周作選手もビルドアップをしなくて、前線を狙って蹴ったセカンドボールからやられていますが、あそこはもう致命的なピンチになるんですよね。

繋ぐのか大きく蹴るのか、はっきりしていないといけなかったシーンだったと思います。チーム状況がまだ定まってない中で、先制されてしまうのは影響が大きいですから、失点しないということころからまず入っていかないと、自分の首を絞めてしまいます。そういう細かい修正はまだまだ必要だろうと思います。


RP:この試合は、20年ぶりの駒場ホーム開幕でもありました。

都築:駒場だからとか埼スタだからいうのは、僕はあんまり僕は意識はしないですが(笑)。やっぱり、ホームで勝てたのは非常に大きいことでした。というか、セレッソがあまりよろしくなかったですね。

いいキッカーがいるのでセットプレーが怖いなとは思いましたが、なんとなく、セレッソのサッカーじゃないように見えました。そうした要素もあったと思いますが、何にせよ、勝ち切ったのは非常にいいことです。


RP:今回はスタメンを1名変えましたが、序盤はあまり変えずに行くのか、どんどん変えていくのかはどちらも難しいように思えます。

都築:興梠選手だけではありましたが、2試合勝ちが無くて無得点だった中では、変えざるを得ない状況だったと思います。そこで変えないといけないポジションがが、リンセン選手には申し訳ないけどはっきりしていたんじゃないですか。

なので今から、彼は途中から出ることが多くなるかもしれませんが、先発に返り咲くために結果を出していかないといけない状況になったと思います。これには関してはどのポジションでも争いがありますから。

やっぱり、監督がやろうとするサッカーをしっかり表現できる選手が残っていくと思いますし、それは誰が監督であったとしても同じです。今回に関しては、選手交代から流れをつかみましたし、ブレてるわえではないけど定まってもない状況だと思います。

RP:次は第4節の前に、水曜日にルヴァンカップがあります。大きくメンバーを変えてくることも予想されますが。

都築:それがあってしかるべきですし、競争を楽しみに見られればと思います。いまはまだたくさんの線があって、それをどこに合わせていくかというようなことをやっている段階だと思います。そこを合わせていくのが監督の力だと思いますから、もうちょっと長い目で…長い目で見ていい範囲のあいだは見て行っていいと思います。

まあとにかく、勝てたことが良かったですし、内容にあれっというところがあっても、勝つことで波に乗るのもサッカーです。いいサッカーをしながら勝てずにずるずる行くよりも、悪いサッカー、やりたいことを表現できなくても、勝ち続けられればそれはそれで正解です。

勝ったときのサッカーのほうが良いサッカーとも言えますし、そこは解釈の違いだから何とも言えません。良いサッカーをすることでも結果を出すことでもチーム力は上がっていくと思います。

RP:ありがとうございました。

(サッカー専門新聞『エルゴラッソ』沖永雄一郎記者)
 
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都築龍太 -profile-
1978年4月18日生まれ。
2003年にガンバ大阪から浦和レッズへ加入。2010年に湘南ベルマーレへ期限付き移籍後、現役を引退。日本代表としても6試合に出場した。

(c)REDS PRESS