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ツヅキック(都築龍太の試合分析)

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苦しい中で追い付いての勝点1というのは、ある程度評価していい(J1第28節・鹿島戦)

浦和レッズで活躍された元日本代表GK都築龍太さんが試合を解説。聞き手は、サッカー専門新聞『エルゴラッソ』の沖永雄一郎記者です。


RP:9月3日(土)にカシマサッカースタジアムで行われた明治安田生命J1リーグ第28節、鹿島アントラーズ戦は2−2の引き分けに終わりました。

都築:どちらかというと、アントラーズのほうが戦う姿勢が見えましたね。特に、前半に2点を獲るところまではアントラーズのほうがよかったと思います。球際の攻防や、動きの質というか運動量、中盤のプレスの掛け方にしても、アントラーズがかなりアグレッシブにきた前半でした。それを受けちゃったのかなと。

特に試合の入りは、レッズとしては攻撃が全然機能しない展開が続きましたね。1失点目もそうですが、小泉佳穂選手が奪われるシーンが目立ちました。なんともないパスを、カットされたというかぶつけたというか。

ひっかかってサイドに展開され、数的不利ではなかったですが良い状態で守れませんでした。クロスをフリーで上げさせてしまい、画面で見ていてもカイキ選手がヘディングにきたところにレッズのDFが二人余っていました。

戻りきれていませんでしたし、大畑歩夢選手も競りにいかないと、ああなっちゃうかな。相手のヘディングもうまかったですが。まずは小泉選手が失ったところが非常にルーズでしたし、攻撃の起点になるか以前に自分で失ってしまっています。

鈴木雄磨選手にミドルシュートを打たれたシーンも小泉選手のロストからでしたし、あそこで失ってしまうと守備の陣形が整ってない状態で攻められるのできついですね。ただ、アントラーズの出足も良かったですし、サイドを起点にしてクロス、クロス、クロスと。

カットインしてからのクロスのほうが質が高かったかなと思いましたが、徹底していましたね。そこを受けちゃったというか、わかっていたけどサイドを起点にされて、前半はやられてしまいました。

2失点目も完全に左サイドに起点を作られて、中に展開されました。最初のアルトゥール・カイキ選手から鈴木優磨選手に落とそうというところで、ボールウォッチャーになってしまい、2人くらい引き付けられたところで真ん中が空いてしまいました。

常に後手後手で、後ろから追いかける選手もいなかったので、カイキ選手にまったくプレッシャーを掛けられませんでした。最終ラインからも出ていけなかったですし、クロスを警戒していたのか、ちょっと自由にやらせすぎていて、守備の厳しさが足りなかったかなと思います。

鈴木彩艶選手のプレーも残念でした。ボールはそれほど速くなかったですが、GK的には当たったところが手のひらじゃなくて、手首側というか、思ってた感覚と違ったんでしょうね。そんなに難しいシュートではなかったと思いますから、防いでほしかったですね。ただ、打たせるところまでの流れのほうが問題でした。

RP:しかし、直後に1点を返しました。

都築:途中からよくなった理由として、アントラーズが少し引いてプレスが弱まったのはあります。小泉選手がバイタルエリアに入っていけるようになっていました。バイタルで厳しいプレーができたので、今度は鹿島がボールウォッチャーになっていました。

小泉選手が落としたあとは関根貴大選手に4人くらいきていたと思いますが、それだけ引き連れていたので、岩尾憲選手は次は松尾佑介選手に出すと決めていたと思います。それくらい食いついてくれましたし、あそこで打てばなにかが起こりますから。

相手に当たってのゴールではありましたが、非常にアグレッシブな、いいプレーだったと思います。ああやってバイタルエリアに入れるようになってからチャンスが出てきていましたし、そのあともけっこう継続できていました。

ちょっと気になったのはクロスの質ですかね。相手GKにカットされるボールが多かったです。本当は中の選手にもっと入ってきてほしいところもあるでしょうけど、そこは上げるほうと入り方の質と、お互いが足りなかったかなと思います。それもあって、1点返してからは五分の展開でしたが決定的なチャンスはあまりなかったですね。

後半も前半と似た内容でしたが、ちょっと大味というか。鹿島はとにかくサイドでしたが、鹿島の右SBは広瀬治さんの息子でしたけど、クロスの質の低さに助けられましたね。けっこうクロスを上げられましたが、上げさせたうえで守ろうとしていたのかな。中盤の攻防もある程度厳しいものでした。

RP:ビハインドの展開で、キャスパー・ユンカー選手が途中で交代になりました。

都築:松尾選手もユンカー選手もカウンターで生きる選手ですが、二人が一緒に出ているとあまりよくないのかもなと思いましたね。ユンカー選手が起点にならないところがありますし、守備の貢献もあまり。点さえ取ってくれれば良いっていう扱いになっちゃってるんですかね。現状だと先発で使うのは難しいのかな。

レッズはスタメンがかなり変わっていましたが、選手交代も考えながらやっていたのかな、と。同点になってからは、鹿島はどんどん選手を代えていました。レッズも点を取るために交代をしていきましたが、怪我やコロナもあって苦しい台所事情の中で、先制されて追いついたのは価値があったと思います。

こういった苦しい中ではやっぱり、セットプレーが生きますね。岩波拓也選手の素晴らしい入り方で、岩尾選手のボールも良かったです。相手に触らせない狙いがあったと思いますけど、岩波選手がすらしてゴールと、理想的な展開で同点に追いつけました。

苦しい台所事情の中で追いついた、勝点1というのはある程度評価していいのかなと思いますが、それでもちょっともったいなかったなと思いましたね。試合の入りがもっとよければという試合でした。

RP:宮本優太選手が酒井選手の代わりに先発しましたが、評価はいかがですか?

都築:崩すところに関しては、形が見えないですね。西大伍選手とまではいきませんが、彼が崩しにいくときは時間が掛かります。どちらかというと人を生かしながら崩すタイプだと思いますが、守備に追われていることが多いです。

ACLでも起点になっていた右サイドは問題ですね。ダヴィド・モーベルグ選手と酒井選手が両方いないと形が出せないのかなという感じはしました。もうちょっとアグレッシブに、彼の周りが追い越したり、彼が追い越していく動きがもっと増えてこないと、相手に脅威は与えられないんじゃないですかね。

さっきクロスの質に触れましたけど、彼のクロスでしたからね。そういうところは課題だと思うし、小泉選手も最近はロストが多いです。内容について、もっと高いものを求めていかないとと思います。

RP:次節はホームに戻って柏レイソル戦です。

都築:ルヴァンカップも含めて5連戦になりますし、コロナも出てけが人もいるということを考えると総力戦になります。そこはチーム力で戦ってほしいなと思います。

RP:ありがとうございました。

(サッカー専門新聞『エルゴラッソ』沖永雄一郎記者)
 
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都築龍太 -profile-
1978年4月18日生まれ。
2003年にガンバ大阪から浦和レッズへ加入。2010年に湘南ベルマーレへ期限付き移籍後、現役を引退。日本代表としても6試合に出場した。

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