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ツヅキック(都築龍太の試合分析)

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一人か二人での崩しになってしまった。相手には守りやすかった(J1第1節・京都戦)

浦和レッズで活躍された元日本代表GK都築龍太さんが試合を解説します。聞き手は、サッカー専門新聞『エルゴラッソ』の沖永雄一郎記者です。


RP:2月19日(土)にサンガスタジアム by KYOCERAで行われた明治安田生命J1リーグ第1節、京都サンガ戦は0−1で敗戦となりました。

都築:結果は残念でしたね。(コロナの影響で)いろんな条件があったと思いますが、一作シーズンからどのチームにもそのリスクがある中での戦いで、レッズもついに、それに当たってしまった。

コンディションも含めて、試合に挑むにあたっていい準備はできなかったんだろうなと思いますし、それが聞こえてくるところもありました。非常に難しい状況の中での試合だったと思います。さらに、相手が昇格してきたチームというのも難しいことですから、いろいろ重なってしまった中で結果が出せなかったという試合でしたね。

RP:レッズは長いボールの攻撃が多くなりました。

都築:もうちょっと余裕をもって、ボールつないだりできたとは思います。京都はすごくラインが高くて、中盤で厳しく来る。それをどうかいくぐって攻めていくかですが、試合を見ると裏に抜けて勝負しにいくシーンがほとんどありませんでした。

最初のほうはサイドに展開して、明本考浩選手がシュートまで行くシーンもありましたが、もうちょっと裏に抜けたり、2列目の飛び出しなどのバリエーションが必要だったかなと。結果、ゴールを脅かすような本当に決定的なシーンはあまりなかったかなと思います。

それは京都も同じで、奪ってから速く攻めようというのは見えましたが、最終的なところはピーター・ウタカ選手頼みのような形もありました。ここをしっかり抑えていれば、追い越してくる選手にプレーさせないこともできたと思います。

ただ、ウタカ選手はリズムが独特なんでしょうね。飛び込めずに、前を向かれていいボールを出されてしまう。周りもそれがわかっているから、そこで連動できるというか、J2を戦う中で形が出来ていたのだと思います。

映像を見ても分かるように、京都の裏のスペースは相当ありました。そこを突けたと思うのですが、なんで裏に抜けるプレーをあまりしなかったのかなと。相手をゴール前まで戻させて、崩しに掛かったり勝負したりというのがあまり見えなかったですね。

中盤で厳しいプレスにあっていたのはありました。京都のファーストシュートもそうでしたが、奪うタイミングで厳しく来て、そこから2本くらいのパスでシュートまで行く。京都にとってはいい展開だったと思いますが、そこでしっかり(プレスを)交わしきる、前を向くことをしていかないと。

1点取られた後からそういう展開がどんどん出てきてはいましたが、それまではなかなか前を向けないプレーも多かった。明本考浩選手の最初のシュート(9分)のような、右サイドから真ん中、逆サイドまで展開して勝負するような、ピッチを大きく使う形がもっとあったほうがいいのかなと思います。

レッズは結局、一人か二人の崩しになってしまっていました。個の力で行こうとしてしまったのか、相手には守りやすかったでしょうし、裏をあまり狙っていかなかったのもポイントになったのかなと思いますね。

そんな状況ですから、やはり失点してはダメでしたね。あの失点で京都のやるサッカーも大きく変わってしまった。守りに入るというか、遅らせていこうという形になりました。

RP:ただ、後半は惜しいシーンも増えました。

都築:いちばんいいシーンだったのは、(52分の)犬飼智也選手がビルドアップのところからドリブルを仕掛けて、左の明本選手へと展開して最後は江坂任選手のシュートまでいったところ。あそこは決定的でした。

犬飼選手が仕掛けることによって2人くらい置き去りにして、いい展開でしたね。こういうシーンをどんどん出さないといけないと思いますし、フロンターレ戦とは逆の展開になってしまいしたが、そういう試合にも対応していかないといけません。

RP:失点シーンはいかがでしたか。

都築:厳しく言わなきゃいけないところですが、スローインからの展開で人数は足りていました。まず一人目を潰せなくて、武田選手に縦パスが入ったときに伊藤敦樹選手が抑えられてなかった。ここで馬渡和彰選手が行ったことによって、伊藤選手も止まってしまって、簡単にここを崩されてしまいました。

そのあとに川崎選手に犬飼選手が対応に行ったところは間違っていないですが、中に残っていた酒井宏樹選手と岩波拓也選手のどちらかが、ウタカ選手について行きたかった。ここでフリーになっていたのでシュートを打たれ、GKからすると逆にブラインドになってしまいました。

押し上げるというか、マークにしっかりつかないとああいう形になってしまいます。シュートはそんなに難しいコースではなかったと思いますし、岩波選手があそこでウタカ選手に行くべきでした。選択肢はあそこしかなかったので、見ておかないといけないシーンだったと思います。

そこからレッズの攻撃がいい展開になって、失点がきっかけにはなったんでしょうけど、この失点は大きかったですね。京都は挑戦者というか、昇格チームとしてどんどんトライしてきていたので、最初から余裕をもって展開できればというところですが。

(レッズの)メンバーが替わったことはあまり言い訳にならないかなと思います。ただそのメンバーも、コンディションがどうだったのか。チームとしてちゃんと練習で来ていたのかについては配慮するところはありますが、やっぱり昇格してきたチームに負けるのはいいことではないですね。

RP:次節は中3日、神戸戦です。

都築:相手に合わせてどうやって戦っていくのか、チームの中でできるようになっていかないと、勝ち切ることは難しいでしょうね。それとセットプレーがあまり脅威になっていなかった。フロンターレ戦ではいい形が出来ていたので、もう少し工夫できればとは思います。

あとはキャスパー・ユンカー選手がいたら裏へ抜ける動きが増えて、また違った展開になっていたと思います。ただどんなチーム状況の中でもやっていかなければいけない。今季はそこの戦いが大きくなってくるでしょうね。

RP:ありがとうございました。

(サッカー専門新聞『エルゴラッソ』沖永雄一郎記者)

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都築龍太 -profile-
1978年4月18日生まれ。
2003年にガンバ大阪から浦和レッズへ加入。2010年に湘南ベルマーレへ期限付き移籍後、現役を引退。日本代表としても6試合に出場した。

(c)REDS PRESS