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ツヅキック(都築龍太の試合分析)

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スローインの流れからの1失点目がいらなかった(J1第6節・川崎F戦)

浦和レッズで活躍された元日本代表GK都築龍太さんが試合を解説します。聞き手は、サッカー専門新聞『エルゴラッソ』の沖永雄一郎記者です。


RP:3月21日(日)に埼玉スタジアム2002で行われた明治安田生命J1リーグ第6節、川崎フロンターレ戦は0−5の大敗となりました。

都築:前半と後半で全然違うサッカーになってしまいましたね。最初にビルドアップでミスをしてピンチはありましたけど、そこに関しては、いまは過程としてミスはあると思いますから、そのミスが起こったあとに失点しないことが大事です。この場面では失点せずに、西川周作選手のセーブだったりで防げていたのは良かったと思います。

それができたのは、奪われたあとのリスクマネジメントというか、意識が高かったと思うんですよね。それがあったので失点せずに、その後もレッズがつないで、前につないでいこうという意識がありました。小泉佳穂選手が起点になって、いい形になったシーンも…チャンスというかシュートは少なかったと思いますけど、前半はアグレッシブさが見えました。

小泉選手が受けて前を見れる、流れの中でゴールに向かってボールを受けられていましたし、これは失点のあとですけど、前半終了間際に左サイドから小泉選手が勢いを止めずに受けられてシーンだったり、動きの中でいい受け方が出来ていた。前半は良かったかなと思います。

ただ失点したころが…あの失点がいらなかったです。その後の失点でもありましたけど、スローインからなんですよね。スローインを投げて、あのボールが良かったか悪かったかはありますけど、受け手からすると厳しいボールでした。それが奪われて、画面で見ているとよく分かったんですけど、汰木康也選手が、クロスを上げた山根未来選手についていくのをサポってしまった。

サイドハーフですから、(相手のサイドバックが)動き出したときに少なくともついていかないと。追いかけることによってほかのDFも守りやすいですから、それを目の前で動き出しているのを分かっていてついていかなかったですからね。それで右サイドに展開されて、次は山中亮輔選手ですけど、ここも厳しく言うともう少し(間合いを)詰められたかなと。取りには行かなくても、体を張って上げさせないなどアクションを起こさないといけない距離でしたね。

最後はレッズが中に4人いて小林悠選手は一人ですよ。引き付けてスペースを作って動き出すという、小林選手の動きは上手かったですけど。結局フリーで、プレッシャーなく上げさせてしまえばああいう良いボールが上がってしまうんですよ。というところで、前半の内容は良かったんですけど台無しになってしまいました。

RP:後半は一転して、立て続けに失点しました。

都築:後半については…ちょっとこれは3プレーくらい前まで見ないと失点の原因がよくわからないんですけど。まずレアンドロ・ダミアン選手のボレーシュートは、伊藤敦樹選手の縦パスが奪われましたけど、そこからサイドへ展開されるときに切り替えをだれもやっていない。クロスを上げた小林選手に対しての槙野智章選手のプレッシャーが甘い。伊藤選手も追いかけてはいたけど取りに行くような追いかけ方ではなくて遅いですよね。

ここも簡単に上げさせていて、最後のところは個人の対応力なのでしょうがない部分もありますよ。ただ二人いたら、つぶしに行っても良かったのかなとは思います。懐深い選手だからああいうプレーは得意だと思うので。ただああいうシチュエーションまで持って行かれたのが問題だし、シュートはダミアン選手がうまかったということですね。

以降の失点も、奪われた後の切り替えがまったくできていないのがすべてですよ。ピンチも多かったけど、決定的なピンチが全部失点につながってしまっています。3点目はスルーパスからですけど、これもスローインからです。

スローンからキープできずに奪われて展開されて、ボールをつながれてるのを追いかけているだけのような守備になってしまっている。あのスルーパスはすごかったですけど、レッズの選手は皆待ち構えられてるんですよね。パスを出したジョアンシミッチ選手にプレッシャーがないのも問題ですけど、ディフェンスラインが絞れていなくて、宇賀神友弥選手が追いかける形なってしまっている。

RP:確かに、DF同士の距離が気になるシーンが多いです。

都築:このシーンではレッズのサイドバックとセンターバックの距離が、相手にとって微妙にいい感じになってしまっていると思います。完璧に通せる、というほどではなくて、通れば決定的にチャンスになるという距離だった。恐らくですけど、宇賀神選手が良いポジションを取っていれば岩波拓也選手も対応が変わっただろうし、岩波選手からすると宇賀神が良い距離、良い待ち構え方をしていたと思っていたんじゃないかと。

本当はレッズからすると左サイドの守備がポイントなんですけど、今回は右でした。やっぱり真ん中を詰めないときついですよね。それもスローインを繋げなかったというところから始まってますから。3プレーくらいたどると原因が見えてきますね。

4点目はレッズの左サイドで囲めてるんですけど奪えずに中に展開されて、そこから長谷川竜也選手がクロスでしたけど後手後手の守備になっています。中の選手は足りていましたけど折り返しまで見れなかった。やっぱりサイドに追い込んでいるときは取りに行かないと厳しいかなと思います。逆サイドまで行ってからはまさにフロンターレという崩しですね。一気に局面を打開するような崩しで、あそこまで揺さぶられると守備はしにくいですよね。

最後の失点は槙野のクリアも問題ですけど、大久保智明選手がもう少し頑張らないと駄目ですよね。フロンターレが奪われた後にすぐに取り返しに来るのは分かっているわけですから。もう集中力が切れていたのはあると思いますけど、あそこは自分たちの攻撃につなげないときついです。

RP:後半ここまで崩れてしまうのは予想外でした。

都築:試合全体を見ると、前半は自分たちのビルドアップでミスは起こり得るかもしれないけど、そうなることを予想してポジショニングも取れていて、体も張れていたかなという印象はありますけど、後半は切り替えが遅くなっていた。大事なとこでミスをして、そこからつながれるとこうなってしまいますよね。後半最初の失点の時点で立て直さないといけなかったですけど、誰か声を出していたのかな?とは感じます。監督のコメントを見たら「映像を見返さないとわからない」という内容でしたけど、決定的なミスじゃないからそうなってしまうんじゃないかと。

最後の失点のようなミスならわかりますけど、最終的な川崎の崩しのレベルが高いので、レベルの高い失点をしている。相手を褒めないといけないシーンもありますけど、それに至るまでのプレーのところでやってはいけないミスが多すぎますよね。スローインなんかは自分達で投げられるボールですから。加えて、それでへこんじゃって攻撃に行けなくなってしまったのかなと。

やっぱり攻撃のところでトライしないと始まらないですよ。最低でも前半くらいのプレーをしないと、あれが最低ラインだと思う感覚じゃないと。良かった前半でも崩しにかかるまでのプレイはほぼなかったですからね。川崎は決定的なシーンが全部得点につながりましたけど、それ以外にはお互い、印象に残るシーンはなかったかなと思います。西川選手がいいセーブをしたりDFが防いだというシーンもなかった。そういうシーンは全部失点になってしまっている。課題というか、フロンターレとの差は相当大きいですね。上位に行くために、ちょっとしたところを改善して埋めていかないといけない。

RP:ここで一旦連戦が終わって、次は1週間後にルヴァンカップの柏戦です。

都築:メンバーを変えるのかな。大体皆さん出ているので変えるメンバーもあまりいないですけど。とにかくアグレッシブに行って欲しいですよね。積極的なミスはアリにして表現していかないとこういう結果になってしまいますから。改善するところもはっきりしていて、1対1の戦いなどからですから。僕らから見ると簡単なところにある課題を修正していくのは非常に難しいのかなと思います。

RP:スローインの改善は難しいイメージがあります。

都築:チーム全体のことですからね。少なくとも奪われた後の切り替えなんかは最低限だと思わないと。奪われるというのは常にあるリスクですし、局面で相手のほうが上手くて得点されることなどは試合中に絶対にありますから、そこからの切り替えを徹底していかないと。

ひとことで言うと本当に「緩い」ですよね。それに対して感じていない、周りが何も言わないという…言っているのかもしれないですけど、そういうアプローチがないように見えてしまうので。新しい監督でやっているわけですから、トライして失敗して、失点してしまった負けてしまったとうほうが前向きですよ。

まあこれをいい教訓にしないと、結果を追うのも大事ですけどまだ1勝しかしていないですからね。今は優勝やACLよりも降格のほうが近い位置ですから。監督が変わって、監督のスタイルが見えるところと見えないところがまだありますけど、トライして失敗というのが見えないのもあるかもしれません。最初から上手くいくことなんかないですから、アグレッシブなミスをして、考えてやっていくことが成功の近道だと思います。

RP:ありがとうございました。

(サッカー専門新聞『エルゴラッソ』沖永雄一郎記者)

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都築龍太 -profile-
1978年4月18日生まれ。
2003年にガンバ大阪から浦和レッズへ加入。2010年に湘南ベルマーレへ期限付き移籍後、現役を引退。日本代表としても6試合に出場した。

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