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ツヅキック(都築龍太の試合分析)

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監督がやりたいサッカーを示せた。試合は完璧にレッズが支配していた(J1第1節・FC東京戦)

浦和レッズで活躍された元日本代表GK都築龍太さんが試合を解説します。聞き手は、サッカー専門新聞『エルゴラッソ』の沖永雄一郎記者です。


RP:2月27日(土)に埼玉スタジアム2002で行われた明治安田生命J1リーグ第1節、FC東京戦は1−1の引き分けとなりました。

都築:今季の形が見えたのかな、という試合でしたね。全員が非常にアグレッシブで、監督がやろうとしているサッカーを表現しようとしていました。切り替えの早さや、ポゼッションの流動性というか動きを多くするような形だったと思います。

杉本健勇選手がディフェンスをしているときは他の選手が前線に入れ替わったり、小泉佳穂選手がかなり下がっているときは明本考浩選手がバランスを取りながら。ポジションは決まっているけど流動的に、特に明本選手や小泉選手はどこにでも行くというスタンスがかなり見えました。

ペトロビッチ監督時代とは少し違うと思うんですけど、細かくビルドアップしていきながら周りが動く。その動いている選手を活かしながらゴール前まで行こうとしているのは印象付けられました。ひとことで言えば攻撃的なサッカーで、それに見合った選手を、良い補強をしてきているのかなと感じました。

RP:新加入の明本選手、小泉選手の印象について詳しく教えてください。

都築:明本選手は運動量が多くて、リカルド監督はああいうタイプの選手が好きなんでしょうね。ひとり二役じゃないですけど、ポジションはあるけどどこにでも行く。そういう選手が増えると相手はマークもつかみづらいし、守りにくいですから。攻撃ではそこまでインパクトは残ってないですけど、彼の運動量はかなりチームに貢献してくるんじゃないかと思います。

小泉選手については、(プレーの)イメージは分かるんですけど、もっと慣れないといけないかなと。今のところは正直、J2でやっていたレベルのプレーですね。運動量は多いですけど、動きの中でボールを受けた後のプレーや、自分が行かなければいけないところ、キープや切り替えの判断は遅いと思います。けっこう潰されてたシーンもありましたし、攻撃のスイッチを入れるタイミングや、相手がどこまで寄せてくるかなどがまだJ2の間隔なのかなと。ただ、どこまでポテンシャルがあるかにもよりますけど、慣れてくればフィットしてくると思います。やろうとしているプレーの中身はよくわかるので、あとはそのプレーの質ですね。

この二人に加えて、両サイドバックもかなり高い位置を取っていました。両サイドが同時に上がっている場面もありましたけど、そこのバランスを阿部勇樹選手が上手く取っていましたね。阿部選手と組んだ伊藤敦樹選手もどちらかというとバランサー型かなと感じましたけど、2人でバランスを取るところは上手くいっていたと思います。

そして昨年までと違うなと思ったのが、1トップの杉本選手が守備に追われたり、裏に抜けようとした流れからサイドに残っているシーンなどがあったのですが、その場合でも攻撃の人数が足りていたんですよね。昨年まではFWがサイドに流れるとゴール間に誰もいなくなっていましたけど、そういったことがなかった。

本当に流動的に動けているなというのと、皆がボールをもらいたがっている点はアグレッシブに見えましたね。また2人目・3人目の動きは空振りに終わる可能性もあるわけですけど、それを惜しまずによくやっていたのも良かったと思います。

サイドチェンジで広く攻めることもできていたので、後半は山中亮輔選手から良いクロスも上がっていました。宇賀神友弥選手のほうはあまり良いのが上がってなかったですけど(笑)、両サイドの選手が高い位置を取って攻撃的にやれていました。

RP:引き分けではありましたが、レッズのゲームだったと言ってもいいでしょうか。

都築:全体的に見て、試合は完璧にレッズが支配していたと思います。あとはフィニッシュのところですよね。フィニッシュも含めたプレーの質はこれからの課題になってくると思います。もっと精度を上げていく必要はありますけど、全体での守備もできているし、場面によって奪いに行く位置を下げたりもできていた。特に印象的だったのは、明本選手や小泉選手の攻から守への切り替えの早さですね。そこで遅らせていたし潰せていました。そこからどうやって攻めるかですけど、VARオンリーレビューでオフサイドになったシーンのような攻撃ができると良いですよね。

ディフェンスラインだけで守っているような感じではなくて全体で守れていたので、守備に関しては評価できると思います。これは続けていきたいですけど、相当な運動量が必要になります。90分通して持つか持たないかは重要になってきますね。

まだ始まったばかりなので、スタメンも選手交代も変わってくるでしょうし手探りな部分もあるでしょうけど、監督がやろうとしているサッカーについては、1試合目にしてはかなり示せたかなと思います。見ていてかなりインパクトはありました。パスを出した後の受け方や、出した後に止まるのではなくて常に動いているのは印象的でしたね。

RP:得失点シーンについてはいかがでしょうか。両方ともセットプレーでした。

都築:得点・失点のところに関しては特にはないですけど…あのコーナーキックを取るまでの過程などは良かったと思います。トライしてコーナーを取ったわけなので。得点に関しては阿部選手が最後にいいところにいたというですかね。

後半は少し左サイドからクロスを上げられていましたけど、そこは体を張って守れていました。課題としては失点シーンの、フリーキックの守り方ですかね。ここはポイントだったとは思います。

まあ惜しい試合で、悔しい試合だったと思います。ただ、レッズのほうも決定的なチャンスが何本もあったわけではないので、崩しの形に持っていけそうな雰囲気はありますけど、フィニッシュのところはまだまだ高めていかないと厳しいですね。

あとは杉本選手のところはやっぱり気になりますね。今年は特に1トップですし、やっぱり彼はゴールに近いところにいたほうが良いと思います。1トップの選手があそこまで守備をすると得点を取る人がいなくなってしまいますから。

RP:この試合は、FC東京が元気がなかったようにも見えました。

都築:そこはレッズのサッカーを受けちゃったのかなと思いますね。特に後半は、レッズがあまりにも上手く行き過ぎたのかなと。FC東京はちょっと、前線の外国籍の3人頼るサッカーなので、その選手へのパスに厳しく行くのは大事ですし、アダイウトン選手なんかも強引な突破が持ち味ですけど、上手く抑えられていたと思います。FC東京が悪かったというよりもレッズが非常に良かったのかなと思います。

RP:次は中2日でルヴァンカップGS第1節・湘南戦になります。

都築:メンバーがどうなるかわからないですけど、フレッシュな選手に変えてくるんじゃないかと思います。ただこの試合のようにやりたいサッカーを示せれば、あとは選手が合わせていくだけなので。昨年までのように、出てくる選手でサッカーが変わってしまうのは絶対にあってはならないですから。監督がやりたいサッカーを表現できない選手はだんだんと脱落していくと思います。開幕戦を見る限りは、監督が好きな選手というかベースはやっぱり、運動量があって攻守の切り替えが上手く出来る選手だと思いますね。

RP:ありがとうございました。

(サッカー専門新聞『エルゴラッソ』沖永雄一郎記者)

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都築龍太 -profile-
1978年4月18日生まれ。
2003年にガンバ大阪から浦和レッズへ加入。2010年に湘南ベルマーレへ期限付き移籍後、現役を引退。日本代表としても6試合に出場した。

(c)REDS PRESS