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ツヅキック(都築龍太の試合分析)

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クロスの対応は大いに問題。狙われるだろうが、勝って修正できるのはいい(J1第1節・湘南戦)

浦和レッズで活躍された元日本代表GK都築龍太さんが試合を解説します。聞き手は、サッカー専門新聞『エルゴラッソ』の田中直希記者です。


RP:2月21日(金)にShonan BMWスタジアム平塚で行われた明治安田生命J1リーグ第1節、湘南ベルマーレ戦は3-2で浦和レッズが勝利。開幕戦を飾りました。

都築:結果はOK。それでも、前の試合ほどアグレッシブさがなかった。湘南は前からプレッシャーを掛けてきて、後手に回るシーンが多くなっていた。要所でいい攻め上がりを見せることはあったが、基本的には相手が主導権を握っていて、サイドの選手などはあまり上がれなかった。

RP:3ゴールは奪いましたが、たしかに内容については課題も多かったですね。
都築:まず中盤に関して。ボールを奪ったあとの運動量はある。それは皆が意識はしているんだろう。それでも、奪ったあとの速い攻撃については前回の仙台戦のほうがよく見られた。仙台は守備であまりプレッシャーがなかったから、という要素は十分にあるが、前回のほうが自由にやれた。
また気になったのは、興梠慎三選手とレオナルド選手のタイプがカブること。私見でいえば、興梠選手が必死に合わせようとしていた感じだった。2トップの動き方として、一方が下がったらもう一方が裏に抜けるなどの意識がないと、攻撃の形がなかなかできない。

RP:2失点を喫した守備面については。
都築:課題は、間違いなくクロスボールの対応にある。失点シーン以外にもあったが、相手のサイドバックに攻め上がられたとき、プレッシャーが弱くて簡単にクロスを上げられてしまっていた。そして、逆サイドからクロスを上げられたとき、山中亮輔選手の中への“絞り”に甘さもある。最終ラインも引き過ぎ。もう少しラインを上げていれば、山中選手も相手選手に対してマークにつけるスペースがある。でもラインが下がると、相手についていくのが難しくなる。全体的に下がってしまうと、DF間に入ってこられた選手にマークをつくのが難しく、結果的にやられるというサイクルになる。
例えば1失点目。山中選手が相手の前に入っていないといけないシーンだ。確かにポジショニングとして絞ってはいるが、絞りながらマークにつかなければならないわけで。そこで簡単にやられすぎ。
2失点の前にも、簡単にサイドにやられ、橋岡大樹選手の前からクロスが上げられている。前半にあった、タリク選手がクロスに合わせたシーンだ。あれも危なかった。
クロスボールの対応については、本当に改善しないといけない。ただ、勝っているなかでの課題修正となった。だからこそ、勝ったという結果は本当に良かった。

RP:攻撃面については。
都築:まず、得点シーンは良かったと思う。1点目は汰木康也選手のクロスに興梠慎三選手が合わせて、そのあと押し込んだというもの。ビルドアップから崩したというよりも、相手のディフェンスが甘かったところを突いた。最後、汰木選手の良いパスに、中で興梠選手がよく詰めた。でも、クロスに入っていく枚数が足りない。
サイドでは、汰木選手が非常にアグレッシブだった。2点目は、クロスに合わせたレオナルドがうまかった。山中選手の上げたボールも良かったし、レオナルドもよく狙っていた。レオナルドは、ゴールの嗅覚をもっている選手と感じる。

RP:レオナルド選手は連続ゴールでしたものね。
都築:2点目をとって同点としたあとも、展開は同じ感じ。レッズが組み立てて主導権を握っていた場面はほとんどなかった。お互いが奪ってからの速い攻撃を意識していた。湘南は攻守の切り替えが速いし、レッズはうまく崩せなかった。
決勝点となった3点目は、マルティノスがお膳立てした。マルティノスはこの4−4−2だと特長が生きる。守備のことをあまり考えなくていいから、前にいきやすい。やはり、彼の前にスペースがあるときは迫力がある。得点場面はカウンターからの流れだったけど、関根貴大選手がよく決めきった。個人技が素晴らしかった。
湘南は良いサッカーをしようとしていた。ただ、フィニッシュに質が低い。それにレッズは助けられていた。縦に速い攻撃で攻め込んでも、ゴール前で決められない感じ。

RP:全体的なバランスをみて、感じたことは?
都築:得点以外のチャンスはそんなに多くなかった。いまの4バックは、サイド攻撃に対して以外は守れている感じはある。相手に主導権をにぎられたとき、最終ラインを4人でラインを作っているから、対応する人数は多かったと思う。相手にスペースを与えずに守れた。ただサイドに振られたときの対応がうまくいっていない。

RP:選手個々を見て、気になった点はありますか。
都築:柴戸海選手。彼はいま、柏木陽介選手とボランチで組んでいて、どちらかと言えば、奪ったあとにまずみんながパスを預けるのは柏木選手のほう。彼の広い視野から攻撃につなげられるが、そうなると柴戸選手はボールを奪いにいくとか、バランスをとるところで特長を出すべきだろう。柏木は前を向いていてナンボ、というタイプ。そのぶん、柴戸の役割は大きいが、それでも、奪ったあとに彼が奪われるシーンが散見された。そこは気になった。

RP:ほかの選手はいかがですか。先ほど、山中選手がいる左サイドについては少し触れられていましたが、では橋岡大樹選手がいる右サイドは。
都築:相手がレッズの右サイドを攻めてきたときは、橋岡選手がいるので安心感がある。ただ、山中選手のところは狙われている。彼が意識を変えないと難しいと思う。先程も取り上げた1失点目は、やはり相当最終ラインが低かったから対応しにくいが、もう少しラインが高ければ、ファーにいた相手選手のマークを捨てて石原直樹選手につけた。石原直選手のようなうまいクロスへの入り方をされると、受け渡しできない。それでも、ついていかないといけないんだが…。
間に入られないようにしたいが、相手もこれから狙ってくるだろう。それに、質の高いボールを上げさせないこと。マークに付ききることはとても大事。

RP:狙われるのは怖いですね…。
都築:でもね、勝っているときにああいう課題が出るのはいいことなんです。これからもっと得点力の高いチームとやると、あれではもっと失点を食らう可能性がある。開幕戦を勝てて、そこをしっかりと修正したい。
相手がボールをもっているときの、守備の意図は見えた。ただ、前で奪えないときに、最終ラインで最終的に守るという形になっていて、全体がずるずると下がった。高い位置で守ってショートカウンターをしかけたい意識は高い。そのために、できればサイドで追い込みたい。それをチームとしてどこまで徹底できるか。運動量を多くしないと、それができない。そこが一番のポイントだ。

RP:プレスを外されると…。
都築:いまのままでは簡単にクロスを入れられ、失点は増える。とにかく、修正して、結果を出して、自信をつけていくこと。レオナルドの運動量は多くないが、結果は出す。点を獲るミッションは遂行できる選手だ。だから、計算はできる。

RP:今後に向けては。
都築:選手層が厚いほうがいい。競争があってうまくなるから。

RP:ありがとうございました。

 
(サッカー専門新聞『エルゴラッソ』田中直希記者)

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都築龍太 -profile-
1978年4月18日生まれ。
2003年にガンバ大阪から浦和レッズへ加入。2010年に湘南ベルマーレへ期限付き移籍後、現役を引退。日本代表としても6試合に出場した。

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