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ツヅキック(都築龍太の試合分析)

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失点はありえない形。来季は我慢しながらのシーズンになると思う(J1第34節・G大阪戦)

浦和レッズで活躍された元日本代表GK都築龍太さんが試合を解説します。聞き手は、サッカー専門新聞『エルゴラッソ』の菊地正典記者です。


RP:12月7日(土)に埼玉スタジアム2○○2で行われた明治安田J1第34節、ガンバ大阪戦は、2−3で浦和レッズが敗れてしまいました。
都築:今シーズンを象徴するような残念な試合だった。点の取られ方も含めて、すべてがチグハグというか、やられるべくしてやられたというか…残念だった。シーズンをとおしてこういうコメントしかなかったというか、修正できずにズルズル来てしまったシーズンの象徴だった。試合の入りはモチベーションも高かったと思う。ただ、どういうサッカーをするのかという具体的なもの、確固たるものがないチームだった。だからこそ、どうやって攻めればいいか、結局は個人で打開することしかできない。だからマルティノス選手がトップに入って「いけるんだったらいってこい」みたいなサッカーだから、あれじゃちゃんとした形はできないし、厳しい言い方をするとそれを求められている選手、マルティノス選手が試合を壊してしまった。中途半端にいく、いかないとか、そこで絶対に取られちゃいけないというところで取られたり、そういうプレーばかりだった。

RP:失点も早い時間帯にしてしましました。
都築:1失点目は何やってんだっていう話。G大阪はショートカウンターぎみに来ていたけど、ビルドアップするというか中盤でボールを回せていた。それもレッズが取りにいかないから回せるけど、最後の1本の縦パスでいいボールが入ってピンチになる展開ばかりだった。いいボールが来ればしっかり前を向いてプレーを終わらせていた。枠の外でもシュートを打って終わったり、サイドに展開してクロスで終わったり。レッズは最終的に奪われてカウンターを食らう。それを1失点目が物語っていたけど、細かく崩していこうとした時に引っかかって、縦パス2本でやられている。見ていた人は分かると思うけど、最後のパスを出された時に1対1だった。ああいうシチュエーションはありえない。縦につながれて最後は1対1で宇佐美(貴史)選手にはマークがついていなかった。バランスがどうなっているのか。ありえないんだけど、ああいうことが起こり得るチームということ。

RP:自分たちのバランスを崩してでも相手を崩しにかかったはいいけど奪われ方が悪かったという形でしたよね。
都築:しっかりバランスを取るのか、崩しにかかるならやりきらないと、ああいう形になってしまう。本当にありえない形。いいパスが入った後、守備が完全に後手でG大阪が主導権を握った攻撃をしていた。それに至るまで、どこでボールを取りにいくかとか、どうやってボールを奪うのかがまったく明確ではない。回させている感じはしたけど、実際には回されている。それでピンチになるというか、矢島(慎也)選手がいいパスを出して西川(周作)選手がよく防いだシーンも、遠藤(保仁)選手から縦パスが入った。あの位置まで来ているのに遠藤選手に簡単にパスを出させてしまうということ、矢島選手に前を向かれていること、その後にアデミウソン選手についていけなかったこと。全部が後手だった。チームとしてボールを回させながらサイドに追い込んで取るとか、遠藤選手が出す縦パスに対してはしっかり潰しにいくとか、そういうコンセプトがあっての守備だったらいいけど、ただ回されていいパスを出されてやられているシーンばかりだった。

RP:意図のある守備ではなかったということですよね。
都築:ああやって的を絞らせない守備をしている以上、ああいう試合になってもまったく不思議ではない。レッズは前にいこうとしていたけど、最後は奪われてまた同じ展開。G大阪は多彩というか、遠藤選手にボールが入った時に周りが動き出すという攻撃の形をしっかり持っていたけど、そこまで守りづらいとは思えなかった。ゴール前まで来たらG大阪も少ないタッチで細かくつないで崩していくのは得意だと思う。だからいかにペナルティーエリアの近くにボールを運ばせないかっていうところだったんだけど、それができない。サイドに追い込むこともコースを限定することもできない。まずはファーストDFが全然機能していなかった。途中まではマルティノス選手じゃなくて柏木(陽介)選手と長澤(和輝)選手がやらないといけない状況だった。一人じゃ守れないし、ディフェンスラインだけでも守れない。ボランチだけでも守れない。チーム全体で守る。それは基本的なことだけど、その徹底がまったくできていない。

RP:最終節にしていろんな問題が露呈した試合でしたね。
都築:でもそれは今に分かったことではなくて、シーズンをとおしてそうだった。それを考えるとお粗末すぎたというか、どういう戦いをするかが最後まで見えなかった。これまで何回も言っていたと思うけど、基本的に「責任問題」と言うのは好きじゃない。ただ、戦わないのが一番の問題だけど、ああいう試合を見ると選手を戦わせるための方向性を決めていない監督、現場スタッフにビジョンがないということになってしまう。今回の選手の選び方を見ると、マルティノス選手に「いってこい」というような形にしか見えなかった。後半に柏木選手がボールを触る回数が多くなった時にテンポが出てきた。テンポが出てきた時は柏木選手がワンタッチ、ツータッチでどんどんさばいていくことができていた。それがベースになってこないといけない。

RP:柏木選手が持ち味を出せればチームもよくなってくるけど、チームとして柏木選手を生かせていませんよね。
都築:今回は柏木選手がマルティノス選手の一つ下だったから、少しやりづらさもあったのかなと思う。真ん中で構えて常にボールを受けてさばく、人を動かすのが彼の持ち味だと思う。前半の終わりぐらいにワンタッチでつないでゴール前で柏木選手がロブボールを出して槙野(智章)選手が折り返したシーンがあったけど、それはいい形だった。そういうシーンが何回かは見られた。その流れで後半に入って、FKを取って柏木選手が決めて追いついたぐらいまでは柏木選手も何とかボールに絡もうとしていた。彼がボールを持ったら動き出さないと。彼がボールを持って「どこに出そう」と考えているようでは遅い。柏木選手がボールを持ったらすぐにパスを出せるような環境作りをしてあげれば彼は生きるし、それがチームのいい攻撃につながる。それができなかった。

RP:一度は同点に追いつきながら、すぐに失点してしまいました。
都築:そのCKもまたお粗末というか、槙野選手が完全に外してしまって、三浦弦太選手に合わせられ、最後はアデミウソンに決められてしまったけど、その前のヘディングシュートもフリーだった。人数が足りていても守れない。なかなか厳しい失点だった。セットプレーも宇佐美選手が何度もいいボールを蹴っていたから怪しいと思っていたけど、うまく外されてフリーでヘディングを打たれた。しっかりマークについていないといけないし、セカンドボールも集中しておかないといけない。そういう基本的なこと。それができていなかった失点だった。同点に追いついてからのいい雰囲気が5分も続かなかった。

RP:さらに失点を重ね…。
都築:3失点目は山中(亮輔)のポジションも悪かったけど、彼は裏を突かれるのが苦手なんだろうね。パスを出した選手が出しやすかっただろうなと思うのは、サイドで1対1の状況だった。福田(湧矢)選手が一旦、外に逃げてから中に入ってきたところで山中選手のポジションが悪かったというのもあるけど、あそこまでフリーでパスを出させてしまうと、的は絞れない。「一人で守れない」というのはそういうこと。前の選手がコースを限定してくれるからDFはポジションを取れる。そういうことができていない。裏を取られて簡単に入れられて、ラスト3分ぐらいで3−1。そこで勝負はついてしまった。最後にファブリシオが最後に意地を見せたけど、3−1になってからG大阪の守備が緩かったのでああいう形を作ることができた。結果として3−2だけど完敗というか残念な試合だった。

RP:苦しかったシーズンを苦しい試合で終えてしまいましたね。
都築:来季はこういうことを教訓にしないといけない。尚史さん(土田新スポーツダイレクター)のコメントも出ていたし、大槻(毅)監督が続投ということも決まった。来季がどうなっていくかは分からないけど、今年の経験は必ず生かさないといけない。ビジョンを明確にしようとしてはいると思うので、それを追求していくことが大事だし、すぐにはよくならないと思うので来季は我慢しながらのシーズンになると思う。それも含めて、戦えるチームを作ってほしい。どういうサッカーをやるのかが分かるチームになってほしい。個人の能力だけじゃ今はやっぱり勝てない。個人の能力プラス、チーム力。戦術も含めてしっかり立て直していってほしい。

RP:今シーズンも1年間、ありがとうございました。

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(サッカー専門新聞『エルゴラッソ』菊地正典記者)

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都築龍太 -profile-
1978年4月18日生まれ。
2003年にガンバ大阪から浦和レッズへ加入。2010年に湘南ベルマーレへ期限付き移籍後、現役を引退。日本代表としても6試合に出場した。

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