白地に大きく「10.09 新宿開催。」と書かれ、バックには国立競技場の一枚の写真。とくれば、JFLクリアソン新宿。そのクリアソン新宿は、10月9日、三浦知良が所属する鈴鹿ポイントゲッターズ(以下・鈴鹿)と対戦する。
大一番を前に、10月4日、新宿区内にある練習場に行き、取材した。
クリアソン新宿のメンバーの多くが一般企業で働いている。そのため、全体練習は夜に行う。
取材したこの日、練習前に、大学の同好会かあるいは地域クラブなのか、グラウンドを使っていた。
彼らの撤収を待つまで、三々五々に集まった選手たちは、おのおのウォームアップに余念がなかった。
ある選手はコンクリートの上で体幹トレーニングを行えば、ある選手は電話ボックスを背もたれにし、上半身のストレッチと限られた環境と時間のなか、できる範囲で思い思いのメニューをこなしていた。
今季、JFLに昇格1年目のクリアソン新宿はいま厳しい戦いを強いられている。
開幕後6連敗ののち、初勝利は第10節・ソニー仙台戦までかかった。
仙台戦から5戦負けなし(3連勝からの2引き分け)。JFLの戦いに慣れたかに思われたが、5連敗を経て、8戦未勝利(1分7敗)。前節、MIOびわこ滋賀に2−1で勝ち、11戦ぶりの勝利。現在23試合消化し4勝4分15敗。勝点16。16チーム中、15位。
このままの順位でいけば、地域リーグへ自動降格が決まる。
残り7試合。14位のソニー仙台との勝点差「6」と厳しい状況に立たされている。
クリアソン新宿の試合を数試合見て感じたのは、最後まであきらめない、頑張る姿勢だ。しかし、決めるべきときに決められず、守るべきときに守り切れない印象が強く、特に守備面での課題がみられた。
そうしたなか、迎える国立競技場での鈴鹿戦。
かつて浦和レッズに所属したGK岩舘直にクリアソン新宿の現状と国立決戦の意義を聞いた。
《岩舘直》
Q:国立競技場で試合を行うことを聞いたときはどう感じましたか?
A:国立競技場で試合をやれる機会をもらえたことに驚きましたし、国立で試合をやる選択をしたクラブ・会社の意志にも驚きました。
僕らのチームはJFL1年目の立場。正直、新宿区内の認知でもまだまだのチーム。
自分たちの実力の足りない部分で背伸びするようなチャレンジです。
それでもやろうと踏み切った意志、会社の勇気はやっぱりすごいですね。
Q:その勇気や意志をいろんな人に伝えること。そのことが勝敗を別にした開催の意義のひとつかもしれませんね。
A:選手として、ひとりの社員として、会社にとって国立開催は一大イベント。こければ赤字になりますから、社員として覚悟をもって臨んでいます。
なので、いままで以上に地域活動に力を入れています。ここ数カ月、認知を広める活動にも意を決して臨みました。
Q:活動のなかで新宿の街のかたの反応はどうですか?
A:活動の甲斐があって、いままで関われなかった方たちと関われるようになりました。クラブに興味がなかった方たち、知らなかった方たちに、国立競技場で試合をするチームというところで「なら試合に行ってみよう」と興味を持ってもらえました。
新宿区内のイベントとして前向きに考えてくれる方もいて、いいキッカケになればと思います。
Q:だからこそ、良い試合を見せたいですね。
A:これまでのことを踏まえて、自分たちがどうプレーするかというピッチの上のこと。そして、ピッチ外というか、せっかく試合に来てくれた方にその日、その場をどう楽しんでもらえるか、そこは僕らが求めているものです。当日の場内、場外のイベントにむけ、準備を進めています。いまできる最大値のおもてなしのかたち、最大値の表現ができればと思います。クリアソン新宿が新宿の街の一部分として存在していることをいろんな方が感じられる、そんな日にしたいです。
Q:鈴鹿といえば、三浦知良選手がいますね。
A:当日は、多くのメディアのかたが来ると聞いています。そうですね、カズさんの蹴ったボールを触ってみたいですね笑。
前節、体調不良でベンチ外となった岩舘が国立のピッチに立つ。
もうひとり、浦和にゆかりのある選手がいる。MF須藤岳晟(すどう・たかあき)27歳。須藤は浦和レッズユース出身。MF関根貴大とはユース時代の同期。小学校1年生からの旧知の仲だ。須藤は高校卒業後、中央大学を経て、2018年、クリアソン新宿に加入。今季から主将を務めている。
《須藤岳晟》
Q:なかなか勝ち切れない試合が続いていますが、現状、どのようにとらえていますか?
A:惜しいで終わった試合ばかりでした。僅差といえば僅差ですが、惜しいで終わってしまっているのは、必ずそれなりの理由があると自覚しています。なにかを変えていかなければならないとみんなで試行錯誤しています。自分たちが大切にしてきたことを大切にしながら、プラス変化しなければならないことがあります。そのことをみんなで模索しながらやってきました。
Q:大切にしてきたこととは?
A:戦う。走る。声を出す。これはプレーというより我々の在り方です。
歴代の先輩たちを見てきたなかでのものです。サッカーはミスがつきもののスポーツです。
そのなか僕らができることとして、戦う、走る、声を出す この3つを表現しています。
また、つながりをずっと大事にしてきました。仲間との信頼関係、意思疎通を深めるのが僕らの強みです。その前提として強い個があって、つながりが出るとより強いチームになることを感じています。
Q:国立開催が決まった際、どう感じました?
A:驚きというか・・・そうなかなかあることではなく、どれだけ大きいことかを理解するなかで、そう簡単に実現できることではないなと感じました。
新宿の方など、いろんな方が一緒に戦ってくれ、応援してくださるなか、徐々に実現した背景を認識しています。楽しみな部分もありますが、その分、重みのある試合と捉えています。
Q:鈴鹿戦について
A:多くの方々が観に来てくださって、注目してもらういい機会になります。
チームみんなでつながりあって、戦って、走って、声を出す、最後まであきらめず、全力を出し続ける、そうした姿を見せることで会場が一体になって、僕らの理念である感動を大きく作れる1日になると思います。新宿という場所を世界に広げたい。それを体現できる1日にしたいです。
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