ここを再スタートに
アルベルト・ザッケローニ監督率いる日本代表が横浜国際総合競技場で試合に臨んだ。今回の代表メンバーに浦和レッズ所属の選手の名はない。あるサポーターは「レッズの選手がいるのといないのでは、日本代表を応援する熱が違う」と話す。正直な胸のうちだろう。
振り返れば、あれはジーコ氏が代表監督を務めていた時期だ。昔から、浦和のファンやサポーターは日本代表に関してドライな反応を見せていると感じてきたが、生え抜きの山田暢久が代表に選出されたときに“それは違う”と感じたのを覚えている。「海外遠征は食事が合わないから嫌だ」と言っていた山田暢久が、「ジーコに選んでもらえてうれしい」と子どものように喜ぶ姿を見せ、先発の一角に入る活躍をすると、浦和のサポーターたちは熱心に声援を送った。
その変化を間近に触れ、このとき“浦和のサポーターは日本代表に興味がないのではなく、心から浦和レッズが好きなのだ。だから、選手が輝く場がJリーグならばJリーグを、代表戦ならば代表戦を熱く応援するのだ”と感じたものだ。福田正博、岡野雅行、小野伸二、坪井慶介、山田暢久……。浦和から数々の日本代表選手を輩出したが、その時々、たしかに浦和のサポーターは代表チームに“我がチーム”の選手がいることに誇りを感じ、見守ってきた。
今回の代表発表時、浦和からの選手選出がゼロと聞かされた山田暢久は「チームが輝けば、選手は輝く。選手が輝けば、チームは輝く。もう一度、輝くようになれば選出される。それだけの選手はいる」と寂しそうに話した。U-22日本代表に選出され、オーストラリア代表戦に出場した原口元気は絶句した。そして、しぼりだした言葉は「マジで……?」。自分の代表選出があったにもかかわらず、喜ぶ顔は一切見せなかった。原口はただ、「(U-22で)点を取る」と意志のこもった言葉を残した。
クラブは、この現状を厳しくとらえる必要がある。今後、有望な新人選手は海外をも視野に入れて自分が歩む道を選択する。あえて厳しい環境に身を置くのだ。国内であれば、代表選手をどれだけ抱えているか、AFCチャンピオンズリーグのような国際試合の経験を積めるクラブであるかなど、やはり日本におけるクラブのレベルを判断基準とするだろう。今の浦和にはその魅力が欠けている。
だが、これで終わりではないはずだ。再燃の鍵はある。柏木陽介の魅力はまだ発揮されていない。彼自身が乗り越える壁だが、選手の心の中にある葛藤を軽くさせることはできるだろう。それは、現場のトップに立つゼネラルマネージャーの仕事だ。現在、U-22日本代表に選出されている原口元気、濱田水輝には与えられた場で存在感を見せて欲しい。そして、A代表への道をつかんでもらいたい。梅崎司、高橋峻希、山田直輝、小島秀仁……とまだまだ浦和には才能あふれる選手がいる。彼らもまた大事に育てる必要がある。
今夜、チェコ代表戦が行われた横浜国際総合競技場のチケットは完売となり、6万5856人が集まった。彼らは一つ一つのプレーに立ち上がり、一喜一憂した。こうして見ると、サッカー人気は残っている。それだけにこの場に浦和の選手の名前がないことが残念でならない。ピッチの上には、日本中に浦和レッズをアピールするチャンスが散らばっているのだから。
日本代表は選手の誰もが憧れる最高のポジションだ。浦和のサポーターから見れば、いや、筆者の目から見ても、キャプテンの長谷部誠もベンチに座る細貝萌も、“浦和”の選手だ。だが、一般から見れば、彼らはVfLヴォルフスブルクの長谷部誠であり、FCアウクスブルクの細貝萌である。この先、代表のメンバー表に『浦和』の文字が数多く並ぶ日をイメージし、ここが再スタートとなることを願ってスタジアムを後にする。
(有賀久子)