「REDSインタビュー」はトップチームやレディース選手、監督、スタッフ、関係者などを深堀りし、その言葉を掲載するコーナーだ。
今回は三菱重工浦和レッズレディースの菅澤優衣香選手に聞いた。
勝ちきれるチームに
※写真は12月に撮影
RP:今季、ここまで菅澤選手はWEリーグカップ5試合で3得点。リーグでは6試合3得点。うち2得点は、途中出場からのゴールでした。
そこで聞きたいのは、これまでもそうですが、なぜ、それほどゴールを決められるのか。ご自身の持つ方程式のようなものがあるのか。それとも感性なのか。そのミックスなのか。その比率に、変化はあるのか。そうしたことをお聞きしたいです。
菅澤:自分の中では、それほどゴールを決めている感覚はありません。もっと点を取りたいのが自分の理想です。
ただ、今のコンディションを踏まえて、試合の途中から出場し、短い時間で結果を残す、1点でも良いから点を取ろうと思い、ピッチに立っています。
相手が疲れている時間帯に、自分が入ってプレーする。その時の楽しさがあります。今までは先発が基本だったので、途中からプレーする時、どんなプレーをすれば良いのかを分かっていませんでした。もちろん、点を取ることですが、そこまでの動きやゲームの流れを読むことなど、十分にできていませんでした。
試合の途中から出場する中で感じたのは、特に動き方、点を取るまでの持っていき方などがハッキリしたことです。チームが押し込まれている時、自分がピッチに出た時、前でボールをキープして、チーム全体が押しあがるプレーをした中での得点が求められています。その役割ができているから、得点できていると思います。
RP:選手の多くが途中から出場する難しさを話しますし、菅澤選手の場合、その中で点を決める難しさは、やはりありますね。
菅澤:自分が起用される時は、0対0や0対1の時なので、やることはハッキリしています。自分が入る=周りの選手は、私にボールを集める。そしてセカンドボールを拾うという全体の動きがハッキリします。だからこそ、もっとゴールに近いところでプレーできている。点をとることをメインで考えられる。なので、点が取れるんだと思います。
と同時に、相手選手からの警戒が強くなります。そうなると、ほかの選手が空いて、フリーになることで得点できるようになります。
RP:方程式という言葉を使いましたが、理詰めなのか、あるいは感性なのか、菅澤選手としては、どちらの要素が多いですか。
菅澤:感性ですね。
RP:なるほど。菅澤選手のゴールは、何か空中をとらえているというか、ある特定のポイントでとらえているというか、そうした得点シーンが多い印象です。なので、方程式のようなものが強いのか、と想像していました。
菅澤:たとえば、安藤(梢)さんのクロスからゴールする時は、空間においてくれるというか、「このあたりにあげれば、決めてくれる」と安藤さんには見えるそうなんです。(猶本)光も、フリーキックで、自分がヘディングで決めた時は「あのへんにボールを入れれば、決めてくれるでしょう」とか。
自分自身も、安藤さんや光がボールを持った時に、あるいは蹴る時には「だいたい、このあたりに蹴ってくれるから、このへんに位置をとっておけば良いな」と思っています。
RP:これは3人にしかわからない世界ですね。それでは、相手選手も対応は難しいですね。
菅澤:また、清家(貴子)のクロスもありますし、(柴田)華絵はボランチですが、浮いたボールを出してくれる時は、「このあたりに出して」と伝えていますし、華絵も何となく分かってくれています。それが合った時は、だいたいゴールになっています。
また、みんなも「自分ならこのあたりかな」と。自分も「このあたりかな」という感じでやっています。
RP:たしかに浦和に加入して7年目ですし、そのあいだで培ったものはあります。一朝一夕にはいかないですね。またチームも、毎年10人抜けて10人加入するような大きな入れ替えがほぼない分、連係は自然と深まりますね。とともに、そもそも技術が高い選手ばかりなので、「このあたり」というプレーができますよね。そのなかで、新加入の伊藤美紀選手はどうですか。
菅澤:本当、うまいですよ。「体力オバケ」ですし、どのポジションもできます。両足のキックが上手なので、自分としては、ボランチならボランチ、トップ下ならトップ下と、真ん中にいてほしいですね。
サイドも良いですが、真ん中なら、左右にボールを散らせて、スルーパスもできるので、できれば、真ん中にいてほしいなと思う選手です。でも、このポジションは、多くの選手がいますからね。
RP:伊藤選手のフィットの速さに驚きを感じると共に、皇后杯準決勝のサンフレッチェ広島レジーナ戦を見て、改めて地力を感じますし、ここ数年、「うまいチーム」から「強いチーム」になってきていると感じます。菅澤選手から見て、チームの成長をどう感じますか。
菅澤:勝ちきれるチームになりましたね。
加入する前のレッズレディースの印象は、個々が上手だなと感じていました。だからこそ、レッズレディースでプレーしたいと思いました。加入した2017年は、点は取れるけれど、試合の終盤に失点して勝ちきれず、優勝できませんでした。しかし、森さん(森栄次/総監督、監督などを歴任)が監督に就任してから、点も取れて、守れて、なおかつ勝ちきれるチームになってきました。個々だけでなく、チームとして強くなってきました。もちろん、今も個々の選手はうまいですが、ひとつにまとまったら、強固なものになってきます。7年間、レッズレディースでプレーさせていただいていますが、1年、1年、積み重ねて、変わってきたところですね。
RP:昨年、楠瀬直木監督が、菅澤選手について「代表を目指してほしい」という趣旨の話をしていましたが、その点をどう受けていますか。
菅澤:ワールドカップ前くらいに、楠瀬監督から「オリンピック、ワールドカップに行けると、俺は思っている」と言ってもらいました。自分自身、サッカーをやっている上で、代表を目指していないわけではありません。もちろん、「もう一回、代表のユニフォームを着たい」と思っています。その中で、今のなでしこジャパンのプレースタイル、池田太監督の考えがあり、今の自分のプレースタイルだと、なかなか難しいところがあるのかな、と感じています。かといって、自分のプレースタイルを変えようとは思っていません。
代表で、自分のような選手が必要ならば、声は掛かるでしょうし、そうでなければ、掛からないでしょう。呼ばれた時に、自分のプレーを出しきれるように、コンディションを整えておかないといけないと思います。
RP:加えて、楠瀬監督はある試合後、島田芽依選手について「まだ菅澤選手には届かない部分がある」といった趣旨の話をしていました。菅澤選手から見た島田選手は、どう映っていますか。
菅澤:シンプルにできていると思います、島田芽依は。試合によって、遠慮している部分を感じるところはあります。試合慣れしていないこともありますし、緊張している時もあるみたいです。表情には出ていませんが、そこは近くにいるので分かります。
皇后杯準決勝・S広島R戦は久しぶりに1トップに入って、緊張していたようですが、試合になれば、緊張もなくプレーできています。自分との距離を感じることはありません。シマ(島田)にはシマの良いものがありますし、自分にないものをシマは持っているので、自分もシマのプレーに刺激を受けます。
たとえば、シマ(島田)はボールを受けた時のターンがうまく、自分はあまりターンが得意ではないので、シマ(島田)のプレーを見ていると「ここでこうターンするんだ。なるほどね」と思うところが練習からあります。試合に出ている時もそうですし、自分も見習わないといけないと思っています。
今までやってきた分、もちろん、負けたくない、じゃないですが……まだ、譲らない気持ちは持ちながらも、シマは(島田)年々、成長しているなと感じます。
自分がレッズレディースをやめる時、背番号9は、シマ(島田)に託そうと勝手に思っています。クラブの考えは分かりませんが、自分はそう思っています。シマ(島田)は、絶対にレッズレディースのエースになれると思います。
RP:あらためてチームの話になりますが、本当に簡単には負けなくなりました。うまいチームから強いチームになりました。相手の研究、対策を打ち破る試合もあります。
ただ、その中でも、今のチームはここが伸びる、ここは修正したいという点はありますか。
菅澤:攻撃に目をむけたいところですが……どうしても失点が多いなと感じます。守備では、前半の終わりの方で失点が多いので、前半の締め方ですね。皇后杯準決勝・S広島R戦では2対0で進んだのに、前半アディショナルタイムで失点しました。そこでゼロで終われたら、違った試合になっていたでしょう。決して気が緩んでいるわけではないですが、それでもどこか集中が切れて失点しているんじゃないかと思います。前半45分の戦い方は修正しないといけないですね。
攻撃では、前半のスタートから仕掛けて、ゴール前まで攻めていますが、シュートチャンスがあるなか、シュートが決めきれない。惜しいで終わっています。そこを決めきる、スコアにするところは、チームでもっと突き詰めないといけないと、今季、より思います。自分もスタートから出場したなら、前半のうちに1点、2点と取って、ゲームを落ち着かせたいです。また、前半の戦いからの後半の立ち上がりのところ。皇后杯準決勝・S広島R戦ではメンバーが替わったこともあり、いまひとつ定まっていないなと感じました。たとえ、メンバーが替わってもやることは変わらないので、軸はブラさずにいかないといけないですね。
RP:前半の戦い方について触れていましたが、試合を取材していて、前半、うまくいかなくても、後半、追いついたり、逆転したり、何とかできちゃう。それだけ力がある証拠ですが、そうした成功体験が、前半の戦いかた、締め方に影響を与えているように感じます。
菅澤:ここ最近、前半は負けているけれど、後半、できちゃっている部分はあるかもしれません。ただ、実際できているので。
RP:このチームはまだまだ伸びしろを感じますし、強くて、もっと面白いチームになると思うんです。
菅澤:やりようによってはもっと面白くなると思います。たとえば、今、コンディション調整中の船ちゃん(長船加奈)が復帰したら、守備陣はさらに揃いますし、最終ラインを、今の4バックから3バックにしても良いと思います。
今まで3バックをやったことがなくても、みんなならできると思いますし、3バックにすれば、前にもっと人数をかけられます。もっと流動的に、攻撃的にプレーできるので、ひとつのオプションとして、3バックをもっていても良いと思います。いろいろな選手を使って、いろいろな組み合わせをしても、みんなできるので、それも良いかもしれませんね。
(聞き手:佐藤亮太)