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REDSインタビュー

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[REDSインタビュー]池田咲紀子、強みと対応力を

「REDSインタビュー」はトップチームやレディース選手、監督、スタッフ、関係者などを深堀りし、その言葉を掲載するコーナーだ。
今回は三菱重工浦和レッズレディースの池田咲紀子選手に聞いた。



強みと対応力を



※写真は12月に撮影

RP:1月20日(土)に行われた皇后杯準決勝のサンフレッチェ広島レジーナ(以下・S広島R)戦について。
前半、安藤梢選手、猶本光選手のゴールが決まり、浦和が2対1で折り返しましたが、24分に安藤選手が、後半9分には猶本選手が負傷交代となり、以降、S広島Rに押され、追いつかれての延長戦に。
さらに延長前半の立ち上がりに失点。しかし延長後半、清家貴子選手のゴールで追いついて3対3。試合はPK戦になり、池田咲紀子選手が3人目を止め、自身が4人目のキッカーを務め、さらに相手の4人目を止めて、決勝進出できました。猶本選手が負傷交代した後、1失点しましたが、よくチームは、この展開の中で耐えられたと思います。池田選手は、後半の戦いを最後尾から、どのようにチームを見ていましたか。
池田:(猶本)光がベンチに下がってから、リズムも、試合の流れも、S広島Rにわたってしまった時間が本当に長かったですね。いつもだったら、(猶本)光や(安藤)梢さんが、うまくいっていなくても「今の時間帯はこうやっていこう」とピッチの中でポジティブに声を掛けてくれていました。そうした声がないので、後ろからはセーフティーに行くところはやりますし、少ないチャンスをみんなでモノにするために「ひとつひとつ、大事にやっていこう」と声掛けしていました。本当になかなか思うようにいかない時間が長かったので、割り切って、というか、やられないことだけを考えましたし、しっかりと守りきりたい気持ちが強くありました。ただ、その中で耐えきれなかったのは悔しかったです。

RP:延長前半の立ち上がりに失点しました。あのシーンは、浦和の選手たちがはじき返していましたが、不運というべきでしょうか。S広島Rの中嶋淑乃選手のシュートが石川璃音選手に当たってしまっての失点でした。S広島Rにとっては、奇襲作戦成功という得点だったと思います。

池田:90分、みんなが走りきってくれたあとの、延長前半の入りでの失点は、疲れがあったと思います。疲れている時は、頭だけは冷静に、と思いながらも、みんな、守る気持ちが強いだけに、ゴール前に、多くの選手が守っていました。
1つ目のシュートの時、(佐々木)繭かな。足でブロックした時は、味方と重なってしまいましたが、普通の前半だったら、自分が声を掛けたことで、DFの選手はプレーせず、自分がキャッチできたかもしれません。
結果、失点してしまったので、「こうしたほうがよかった」という振り返りはありますが、あの時間に、みんなが気持ちを出してプレーを全力でやった結果なので、誰がどうこうと言う思いはありません。
また、自分も最後、シュートが(石川)璃音に当たってしまった時も、ほとんどボールは見えていませんでしたし、相手に上回られてしまったなと感じました。
でも、(失点した)時間が早かったのが良かったですね。失点した時に「やられた!」という感じではなく、みんな「まだ、残り30分ある」というメンタルだったことが、最後までいけた理由だと思います。

RP:安藤選手と猶本選手が負傷交代になって、押されながらも、最後に勝ちあがれたことを踏まえると、改めて、このチームは地力があるな、と。培ったものが、このチームにはあるな、と感じました。
池田:後ろから見ていて、全員信用できるチームメートです。「自分たちならできる!」という仲間への信頼、自分たちが表現しているサッカーへの信頼があってプレーできていますし、自分たちの実力に、プラスアルファの部分が大きいと感じます。
このチームに素晴らしい選手がたくさんいることや、最後まで走りきること、120分の中で点を取り返せる力、走力・技術があることはもちろんですが、S広島R戦に限ったことではなく、プラスアルファの力が自分たちにとって大きかったですね。

RP:S広島R戦のような、緊迫感のある試合は池田選手自身、復帰後、初めてだと思います。だからこそ、改めて自信や手ごたえになったのではないでしょうか。
池田:自分のプレーひとつひとつの部分で、やれた部分、やれなかった部分が明確になったとともに自信にはなりました。でも、最後のPKは止められてよかったとは思いますが、やっぱり前・後半90分で、あるいは120分で、試合を決めたかったです。その気持ちが大きいですし、もっとチームの力になりたかったです。
難しいことですが、決定的な場面で(GKとしての)仕事ができるかできないかが自分には求められています。ゲームコントロールやフィードは、自分の強みとしているところですが、そこは期待されていないというか……あくまでもベースになっているところなので。
難しい場面で仕事ができるかどうかが今後、自分に求められていると思います。たしかに劇的に勝ちましたが、そこまでもつれないところにもっていくのが、今の自分に足りないところ。勝てたことは、たしかに自信になりました。でも、細かいところを見ると、まだまだ自分にできることは少なくなかったと感じます。
(PK戦にもつれると)どうしてもGKにフォーカスされてしまいますが、早く試合を決められる選手になりたいです。

RP:それでも、やはりPK戦についてお聞きしたいのですが。池田選手は4番目に蹴って、ほぼノーモーションで決めていました。PKについて、楠瀬直木監督に聞きましたら、池田選手はPKで蹴るのがうまいと話していました。実際は、どうなんでしょうか。
池田:PKの練習をする時、積極的に蹴ることはなく、止めることをメインで「一応、GKの選手も蹴っておきますか」という感じで、それほど多く蹴っていませんし、得意な感覚もありません。逆の立場なので、相手がやられて嫌なこと、自分がやられて嫌なことをやるだけとなった時に、やったらうまくいったという感じでした。

RP:S広島Rの3人目・柳瀬楓菜選手を止めましたが、完全に読んでいましたか。
池田:読みはありました。表情とか、歩いている時の雰囲気などを見て、止められそうだなと。表情が硬かったので(柳瀬選手は)緊張していたように見えました。疲労もあるでしょうし、この場面で任されているプレッシャーはあったと思いますが、自分としてはいけるかなという感覚はありました。

RP:今シーズン、センターバックに石川璃音選手、長嶋玲奈選手が入り、ケガで離れる前には、ほとんど組んだことがない中ですが、ここまで大きな齟齬はなかったと見えますが。
池田:(長嶋)玲奈、(石川)璃音、タカ(高橋はな)もそうですが、センターバックが固定せず、組み合わせが替わるなかでも、毎試合、大きなミスがなく、すごく冷静にプレーしてくれているのは、シンプルにすごいなと思います。
自分も「きょうは、この選手だから」「この組み合わせだから」と緊張することが一切ないことがすごいなと。組み合わせ、配置は大事ですが、試合に出る、出ないにかかわらず、そのことに一喜一憂せず、常にベースのラインまでは絶対にやってくれる信頼感はあります。
以前ですが、たとえば、固定したメンバーにポンと入ると、どこか試合の流れに乗れなかったりしたことはありましたが、そのような波やブレがないのがセンターバックの選手たちの感心するところです。センターバックはプレッシャーがかかるポジションですが、それでも気負わず、普通にプレーできていることがすごいです。

RP:石川選手も長嶋選手も、試合や練習でミスを重ねながら、そのミスを糧にしたからこそ、プレーに安定感がでたと思います。
池田:私も、そう思います。仮にミスが起きたとして、「こういう状況でミスしやすいよね」とみんな理解していますし、周りも起きないような準備や、起きた時の準備もしています。繰り返しのミスをしないように、周りのサポートとともに、本人も絶対に繰り返さないように、ミスでの経験を糧にしています。
自分が得意なプレー、たとえば、裏のスペースに出たボールの処理などがありますが、そうしたプレーがあまりないのは、(石川)璃音がいてくれるからで、「璃音が来てくれる」と思って、別に自分から出なくても良い状況を作れています。お互いに出てしまって正面衝突という状況はよくないですし、璃音が来るだろうな、と思って理解しながら、任せられるようになりました。

RP:触れざるを得ないのですが、ケガについて。一昨年2022年6月に行われた、なでしこジャパンの代表合宿中に右膝前十字靭帯損傷(全治約 8か月)のケガを負ってしまいました。だいぶ予定より復帰の時間がかかったように思いますが。
池田:途中まで順調でしたが、ちょっとアクシデントがあって、休まないといけない状況になりました。そのため、復帰まで時間がかかってしまいました。(復帰まで)順調でも何か1つはあるだろうなと思っていたら、やっぱりあるよねと。
同じケガでも人によって、復帰へのスピードとか、復帰後の状態とか、違うものなので、そこまでの焦りはありませんでした。
早く試合に出たい気持ちはありましたが、自分がやるべきことをやるしかないし、みんなが頑張ってくれているし、自分のことに集中しようと……自分ではそこまで気にしていませんでしたが、同じケガをしている選手は気づくというか(笑)。そうした選手が声を掛けてくれたり、支えてくれたりしたので、前向きになり、そこまで落ち込まずに出来ました。自分の、ベストから60%くらいのものならば、その自分が評価されてしまいます。「復帰したらこうなのか」と思われるのは、自分としては嫌でした。なので、自分のベストまでちゃんと戻した上で復帰して、そこで評価されるのならば良いと思っていました。だからこそ、ベストまでもっていかなければ、と思っていました。

RP:今季も中盤にさしかかり、皇后杯のあと、中断期間に入りますが、浦和は現在リーグでINAC神戸レオネッサと勝ち点1差の2位です。負け、引き分けはありますが、このチームは強いと思います。ただ、今後、より勝ち点を重ねるにはどういったものが必要になると考えますか。
池田:言い方があっているかどうか分かりませんが、前半戦は、対戦相手に研究されているというか、自分たちのやりたいことを先回りされているというか……何か読まれていたり、対応されていたりすることが、昨年、一昨年より増えています。それでも押し切れる力は、少しずつ身についているかもしれません。
それでも上位争いで押し合いに勝てなかった時、試合中に全員が、今何をしたら良いのかとか、どこを変えたら良いのかとか、修正する力、やり方を変える力が欲しいですね。
ポジション柄、後ろから見ているので、全体の雰囲気、試合の流れは分かりやすい分、中に入ると、目の前のことに集中しなければならないので、難しいと思います。
この前の試合(皇后杯準決勝のS広島R戦)では、(猶本)光がいない、(安藤)梢さんがいないとなりましたが、いつ、誰がいなくなっても、誰が入っても大きく崩れない、立て直せる、うまくいかなくても(相手の攻撃を)受けっぱなしではなく、そのなかでも、自分たちでやろうとする力をもっとつけないといけないです。
対 レッズの戦い方をされた時に、いつも通りの戦い方ばかりやっていたら厳しくなります。自分たちの強みを持ちながら、「こうなったら、こうだよね」と変えられる対応力をつけたいですし、S広島R戦で、よりそう感じました。


(聞き手:佐藤亮太)

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