「REDSインタビュー」は、トップチームやレディースの選手、監督、スタッフ、関係者などのインタビューを掲載するコーナー。今回は浦和レッズレディースでプレーし、現在、オーストラリア女子サッカーリーグのメルボルン・シティF Cでプレーする吉良知夏選手が登場。zoomをつないで、話を聞いた。
RP:お久しぶりです!画面いっぱいから元気な様子が伝わってきます。
吉良:元気ですよ!普段は午前8時45分にチームミーティングがあって、そこから2時間ほどトレーニングをして、ジムへ行って終わりです。(取材日は)ロックダウンがあけて、リーグ戦も残り数試合となったので、夕方から食事会になりました。
RP:浦和レッズレディースを退団した時期は、海外移籍を視野に入れてのことでしたよね。
吉良:はい。浦和を離れる最後のシーズンとなった2019年が始まる前には、クラブには「海外でプレーをしたい」という自分の気持ちを伝えていました。クラブからは「“良い話があれば、チャレンジする”ということで、レッズとしては“いいよ”」と話があり、1年間、浦和に残ってやりきろうと思って、臨みました。また、この年に就任された森栄次監督のサッカーもやってみたいなと思っていました。
RP:浦和を離れた2020シーズンは、コロナ禍で難しい時期だったと思うのですが、チームは決まっていたのでしょうか?
吉良:2019シーズンの終わりにスペインのチームから話があって、2020年の2月には渡欧する予定でしたが、ヨーロッパでコロナが拡大しているタイミングと重なり、止めました。身体を動かす場所を考えていた時、森監督が、退団した私にも「(練習に)来ていいよ」と言ってくれたので、始動日からお邪魔し、1カ月ほどはみんなとプレーをしてコンデションを整え、3月に大分県の実家へ戻りました。半年以上、実家で過ごしていましたね。
RP:その期間、吉良選手のSNSを楽しみに拝見していましたが、スポンサーの紹介など、今までと異なる投稿が増えて、これは何か意識を変えてSNSの活用に取り組んでいるのかな、と思っていました。大分での活動、どのように過ごされていたのでしょうか?
吉良:当時、大分県はそれほどコロナの影響も少なく、実家の近くには身体を動かせる環境も多かったので、飽きなかったことが一番良かったですね。久しぶりに実家で過ごせたことは良かったですし、帰省して、いろいろな方に出会うことも増えて、その繋がりでウェアをサポートしてくれる方とも出会えました。個人的にはコロナ禍でネガティブなものはなく、人との繋がりや出会いがあり、身体も動かせたので充実していました。また、女子サッカーを広げようというプロジェクトを立てている方もいて、zoomで、いろいろな国でプレーする選手を繋がるという企画もあり、楽しい時間を過ごせました。
RP:現在、所属するチーム(メルボルン・シティFC)はリーグ全体の歴史から見ると新しいチームですが、環境はどう感じていますか?
吉良:サッカーができる環境が素晴らしいです。クラブハウスは男子チームと一緒で、ジムも併設されていたり、アイスバスも男子チームが使用する部屋にあって、男子が帰った時やオフの時には使うことができたり。常にドクターもいるので、そういった環境は素晴らしいですね。
RP:自分の役割、チームでの役割について教えて下さい。背番号10ですね。
吉良:10番にはビックリしましたが、監督に求められているのは、ボールを受けて攻撃の起点になること。そして、ゴールですね。得点を決めて認めてもらいたいですし、監督もチームメイトもそこに期待をしてくれているので、その部分については日本と変わりません。あとは守備のスイッチを入れる役割もありますね。
RP:日本でプレーした時よりも、ゴールをとることに集中できる感じですか?
吉良:ちょっとまた違いますね。こちらではポジションをFWやMFで表すのではなく、番号で言います。ボランチは6番、トップ下は10番、ストライカーは9番といったように。シーズン途中から10番のポジションが2人になり、FWがいないというか、10番の仕事もするし、9番の仕事もするという感じです。こちらにきて運動量は増えたと思っています。日本とは戦術も違います。こちらは流動的ではなく、決められたポジションでやるというか(笑)。
RP:ゴールへの意識は?
吉良:ゴールをとるということに関しては、誰も遠慮はせず、無理でも自分で打てたら打つというか、そこは日本人と違う感覚ですね。日本では、最後まで最善を選んだり、シュートは打てるけれど、より確実の方を選んだり。こちらは「打てたら打つ」という選手が多い印象です。
RP:浦和で安藤梢選手から話を聞いていたと思いますが。
吉良:イエス、ノーがハッキリとしているという話は聞いていて、あとは「伝えたことを忘れていることも多いから、しつこいぐらいに言ったほうがいい」ということは聞いていました。プレー面で言うと、安藤さんのプレーを見ていれば分かると思うのですが、安藤さんはドリブルでいけるところはいきますよね。それはこちらに来て、自分を出さないといけないなと理解できました。結果という部分も求められることなので、自分を出してプレーするというのは、こちらに来て肌で感じています。
RP:シーズンも残り少ないのですが、自分の中でその先のイメージは持っていますか?
吉良:現実的にいうと、ノープランです(笑)。海外でプレーする楽しさを経験してしまったので、まだ海外でやりたいです。どこかの国でチャレンジしたい気持ちは大きいですね。
RP:楽しい部分、どんなところですか?
吉良:練習はめちゃくちゃハードですし、めちゃくちゃスプリントもコンタクトも求められます。身体にアザは常に言っていいほど出来るのですが、それも激しい練習が出来ている証拠というか、嬉しいというか(笑)。2020シーズンはコンタクトもなく、ゲームも出来なかったので、今、こうして練習し、試合が出来ることが嬉しいですね。それにチームメイトがすごく良い人ばかりで、日常でも練習中でも話をしながら過ごしているので、ストレスもなく、純粋にサッカーを楽しめています。
RP:1対1の場面。日本では相手を抜きされるプレーも「抜けない」なんて場面はあるのですか?
吉良:ありますよ。相手は身体が強いですから。その分、身体が当たらないように考えてプレーする、工夫も楽しいですし、速さで負ける部分もあるので、どうやったら勝てるか、という駆け引きも楽しいですね。
RP:チームメイトの年齢の幅について聞かせてください。
吉良:私が上から3番目です。去年、このチームは優勝をしていますが、総入れ替えといっていいほど選手が入れ替わっています。今、20代前半の選手がほとんどですね。
RP:チームを離れたメンバーは、キャリアアップで他チームにいったのですか?
吉良:ヨーロッパにいった選手が多いと聞きました。
RP:リーグには外国籍選手も多いのですか?
吉良:1チームに海外枠が4つあります。うちのチームには4カ国の選手がいて、あとは全員オーストラリア人選手です。
RP:少ない枠に入っていることで、自分の中で「やらなければいけない意識」はありますか?
吉良:ありますね。枠の関係でプレーしたくてもプレーできない選手もいると思います。素晴らしいクラブに入れたこと、プラス4枠に入れたこと、チームに必要とされる選手にならなければいけないと思っています。
RP:現在はプロ契約。吉良選手から楽しさが伝わってきます。
吉良:この楽しさを伝えたいと思っています。期間も短く、スケジュールも変則的なので、楽しむしかない(笑)。今シーズンは負けてしまった試合も多いのですが、ポジティブに切り替えています。経験できないことを、今、経験できていることが大きいですね。
RP:語学については、過去から勉強をしていたのですか?
吉良:スペイン語は少しだけやっていましたが、急にオーストラリアから話しをいただいて、英語もできず……(苦笑)。なので、契約前にチームの監督と電話で「英語が話せない」ということを言ったら、「それは問題ない。こっちに来て学べばいいから」と言ってもらえたので、ありがたかったです。
RP:チームメイトとのコミュニケーションはどうやって取っているのですか?
吉良:チームメイトはとても優しいです。ゆっくりと話してくれますし、伝えたいことも理解しようとしてくれます。「きのう、何を食べた?」、「きのうは、何をしていた?」など、毎日、話しかけてくれるので、そこで単語を覚えて会話をしてみると「上手くなったじゃん」と言ってくれます(笑)。みんな年下ですが、可愛いですよ。
RP:どういう形でシーズンを終えたいと思っていますか?
吉良:個人的には、得点で結果を残したいです。残り試合を勝つこと、プラス自分が得点に絡む、得点をすることをしたいです。
RP:応援してくれるサポーターへの想いは。
吉良:ちゃんと挨拶できなかったのが心残りでした。何人かのサポーターには挨拶できましたが、ちゃんと伝えたいと思っていたのですが(苦笑)。本当にお世話になりました。
RP:浦和も2021シーズンが始まりました。
吉良:まずはサポーターの方も含めて、2020シーズン、優勝おめでとうございます!オーストラリアへ入る前に練習に顔を出して、みんなには「おめでとうございます」と伝えられましたが、やはりサポーターの力があってこそだと思います。そして、プロ化。プロリーグ初代チャンピオンになってもらいたいです。どの試合も難しくなると思いますが、見ている方は楽しくなると思います。レッズレディースが優勝できるように、私も応援しています。一緒に応援しましょう。私も頑張ります!
RP:今日はありがとうございました。
(聞き手:レッズプレス!!ライター有賀久子)