「REDSインタビュー」は、トップチームやレディースの選手、監督、スタッフ、関係者などのインタビューを掲載するコーナー。今回は昨季限りで浦和レッズレディースを退団し、今秋に開幕する.WEリーグに向けて新設参入となる大宮アルディージャVENTUSへ加入したFW大熊良奈とMF乗松瑠華。さいたま市という同じホームタウンの、永遠のライバルチームになぜ移籍したのか。その経緯などをZoomをつないで聞いた。
《FW大熊良奈》
RP:現在の心境はいかがですか?
大熊:今日(2月20日)初日の練習を終えて、みんながみんな探り探りの状態で練習している印象でした。ゼロからのチームなので、レギュラー争いは激しくなると思います。
RP:同じ街・さいたま市にあるライバルチームに加入した理由は?
大熊:まず、新しいチームという点に魅力を感じました。レッズレディースに残ることも考えましたが、一番は試合に出ないといけないと思ったからです。新しいチームで、しかも私の地元である新座市が拠点のひとつになると聞いたのも大きかったです。
試合に出ることに加えて、レッズレディースで活躍できなかった分、周りの方たちに試合に出る姿を見せて恩返ししたいと思い、大宮Vへの完全移籍を決めました。
RP:移籍発表の際、大熊選手のコメントに「多くのモノをチームメイトから学んだ」、「成長できた」とありましたが、具体的にはどのような点ですか?
大熊:レッズには4年間在籍しました。そのなかで一番成長したと感じたのは昨季1年間でした。大ベテランの安藤梢選手という素晴らしい選手をはじめ、菅澤優衣香選手という先輩方がチームのなかで良い雰囲気を作ってくれました。また“梢(コズ)さんトレーニング”というメニューがあり、安藤選手や猶本光選手と一緒に取り組んで、走りのメニューなどを教わりました。振り返れば、一番人と関わり、会話をした年でした。
RP:安藤選手、猶本選手には一番お世話になりましたね。
大熊:昨季あまり試合に出ることはできませんでしたが、「やり続けるしかない」ということを何度も教わりました。たとえ試合に出られなくても、めげずに練習でやりたいことをしっかりと表現できて、一番楽しめたシーズンでもありました。
RP:大熊選手にとって、安藤選手の存在は大きなものですか?
大熊:あんなに尊敬できる人と同じチームでいれたことは財産です。そのくらいにすごい選手です。
RP:大宮Vには同じくレッズから完全移籍した乗松瑠華選手がいます。大熊選手から見てどんな選手ですか?
大熊:乗松選手は本当に努力家です。もともとJFAアカデミー福島での中高の先輩で一緒にプレーしていましたが、センスの塊。キックの精度、ボールタッチがめちゃめちゃ巧い。加えて練習前や終わったあとに、先ほど話した“梢さんトレーニング”を一緒にやりましたが、コツコツと積み上げる努力家ですね。
RP:大宮と浦和と言えばさいたまダービーです。.WEリーグではちふれASエルフィン埼玉との三つ巴になります。まだ先の話ですが、浦和との対戦は今から楽しみなのでは?
大熊:移籍が決まった時、安藤選手や高橋はな選手と「お互いに点を決めて、バチバチの戦いになると面白いね」という話をしました。また逆に、浦和は昨季のリーグ優勝クラブ。「優勝チームにどれだけ戦えるか楽しみだね」と乗松選手とも話しました。
RP:今秋の.WEリーグ開幕まで、まずはプレシーズンマッチとなりますが、目標はありますか?
大熊:一番は試合に出ることです。そのために移籍を決めたので。またFWなので得点を意識して、決め切る選手になりたいです。いつも高めの目標に設定しますが「10」は取りたいと思います。
《MF乗松瑠華》
RP:新チームでの始動日を迎えましたが、いかがでしたか?
乗松:すごく緊張しました。チームの半分くらいは知っている選手ですが、高校生の時に参加したナショナルトレーニングみたいな感覚で久々にソワソワしました。そのことも含めて楽しい始動日でした。
RP:今回のように新チームの立ち上げに参加できる、歴史を作ることはそうできない経験だと思いますが。
乗松:始動日だったので、みんな探り探りの感じがありつつ、しっかりとアピールしているなと感じました。みんな声が出ていて、良い初日、良いスタートを切れました。
RP:大宮Vへの移籍について。どのような経緯でしたか?
乗松:U—20ワールドカップの3位決定戦前日にケガをして、帰国してすぐ手術をしました。そのリハビリが3年間続きました。復帰してからも痛みを抱えながら、コンディションも全然戻ってきませんでした。そのなかで昨季はほとんどの時間を費やしたくらい、サッカーと向かい合いました。1年やっていくなかで、着実にコンディションが戻る感覚はありました。それ以上に成長を感じました。
昨季、試合に出る時はセンターバックで出る機会がなく、チームから求められるものもMFがメインでした。ただ自分としては「センターバックで勝負がしたい」という気持ちがありました。
昨季浦和が優勝して……本当に良いチームで、出来上がっているチームというか……もっと自分が試合に出て絡んでいく機会を、すぐにでも欲しい!という気持ちがありました。
そのタイミングで.WEリーグが始まり、大宮Vができるということを知りました。大きく環境を変えることなく、新しい挑戦ができることが(移籍の理由として)大きくありました。
RP:移籍が発表されたホームぺージのコメントには、ケガの間も応援の声を寄せた多くのファンやサポーターへの感謝がつづられていましたね。
乗松:ケガをしている間、また全く試合に関われなかった時間もすごく気にかけてくれるファンやサポーターの方がいました。(そうした声援は)手紙やSNSで届きました。自分のことを応援してくれるのはレッズレディースのファンの方が多いので、その人たちのためにも「もう1年」という気持ちもあり、移籍するかどうかは悩みました。
RP:共にレッズから完全移籍した大熊良奈選手を乗松選手はどう見ていますか?
乗松:人見知りなので、始動したばかりなので他の選手と深く関わり合えてないと思います。
JFAアカデミー福島から一緒なので仲は良く、(性格は)すごく変わった感じで天然なのかなと思います。ただ、サッカーには人一倍ストイックで、負けず嫌いな部分もあります。今回の移籍にはとても悩んで決意したと思いますが、ピッチで“らしさ”が出せたら、このチームの強みになると感じます。
RP:さきほど移籍に悩んだ、とありましたが、お互いに話し合ったりしたのですか?
乗松:いっぱい話しました(笑)。そのときのお互いの気持ちを伝え合いました。
RP:埼玉県は三つ巴の戦いになります。なかでもレッズとの戦いに期するものがあるのでは?
乗松:もちろんあります!手術してリハビリ期間が長くて、なかなか試合に絡めても自分らしさを表現できなかったので、相手チームですが、「ここまで戻ったよ」というか、成長した姿を、チームに、そしてファンやサポーターの方にも見せたいです。7年間レッズにいて、みんなの良さは分かっているので、レッズキラーになれれば良いと思います。
RP:トップチームでも、かつて所属した選手が相手チームとして埼スタに来た場合、愛情の裏返しのブーイングがありますが。
乗松:ブーイング、待っています!
RP:そういえば、レッズでの最後のゴールは昨季の皇后杯2回戦、5−0で勝ったFC十文字VENTUSとの試合でした。アディショナルタイムでの5点目でしたね。何か縁みたいなものを感じたのではないですか?
乗松:今思い出せば、そういえば久々にゴールできたなと感覚でした。まさかこぼれてくるとは思いませんでした。あの時には移籍する気持ちはだいぶ固まっていました。なので、試合に出たらサポーターの方への恩返しで、何かしらの結果は出したいなと思っていました。本当に良かったです。
RP:新チーム、大宮Vでどのようなプレーを見せたいですか?
乗松:どのポジションで出るかは分かりませんが、自分の希望はセンターバックです。後ろから1本のパスでチャンスが作れるようなキックが出せたらなと思います。何よりGKの次に全体が見えるポジションなので、声をずっとかけ続けて、ポジショニングの指示の声だけでなく、みんなで伸び伸びとプレーできるような声がけをしたいです。
(聞き手:レッズプレス!!ライター佐藤亮太)
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