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REDSインタビュー

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インタビュー番外編・橋岡和樹(浦和レッズユース出身、アルビレックス新潟シンガポール)/自分に素直になるということ

「REDSインタビュー」は、トップチームやレディースの選手、監督、スタッフ、関係者などのインタビューを掲載するコーナー。今回は、浦和レッズアカデミー出身で、今季、アルビレックス新潟シンガポールでプレーした橋岡和樹が登場。帰国後、zoomを利用して話を聞いた。


(佐藤亮太)


今季、アルビレックス新潟シンガポールに所属した橋岡和樹は、さいたま市浦和区出身。現在、浦和レッズ所属の橋岡大樹の実兄である。浦和レッズユースから明治大学へ進学。明治大学サッカー部では、副主将を務めた。

卒業後、一般企業に勤めるも、プロサッカー選手になることを諦めず、チャンスをうかがうなかで、2019年9月、関東サッカーリーグ1部の東京23FCへ加入した。そして同年12月、シンガポールプレミアリーグのアルビレックス新潟シンガポールへ加入した。

今季、右サイドバックでプレー。加入年でキャプテンを務めるなか、チームは、コロナ禍の日程厳しい戦いを制して、リーグ優勝。自身は、リーグベストイレブンに選出された。現在23歳だ。



RP:優勝おめでとうございます。
橋岡和樹:ありがとうございます。

RP:
リーグ優勝、そしてベストイレブンに輝いた、現在の心境はいかがですか?
橋岡和樹:まずは、全員が同じ気持ちだと思いますが、とても苦しいシーズンでした。シンガポールはロックダウンのために3カ月ほど外に出ることができませんでした。そのため、リーグは非常にタイトなスケジュールになってしまいました。それでも、みんなも頑張ってくれました。苦しいなかでの優勝で、喜びは倍になって嬉しいです。

RP:明治大学を卒業して、一度、会社勤めをしたあと、昨季9月、東京23FCへ加入しましたね。その3か月後の12月にはアルビレックス新潟シンガポールに加入。そこから優勝とベストイレブンと、ものすごく変化があった1年でしたね。
橋岡和樹:本当にそうですね。ここまでの流れで、自分のなかではさまざまな葛藤がありました。もちろん、弟の大樹のこと、家族のことなどを、自分のなかで会話しました。楽しいというよりは、苦しい1年でした。ただ、シンガポールでサッカーをしてみて、改めてサッカーは素晴らしいものだなと感じました。

RP:簡単な経緯を教えていただけますか?
橋岡和樹:大学を卒業したときは、もうサッカーはいいかなと考えていました。(卒業後は)サッカーのコーチなどをやっていましたが、それは、まだまだサッカーへの欲望や欲求が自分にあることを気づきながらの生活でありました。そんなとき、サッカーが大好きな人たちと一緒にプレーしていると、周りの方から「まだやるべきだよ」と言われました。そこで、自分の内側にある欲望に気づかされました。
東京23FCからお誘いがあって加入させて頂き、さらに、もともとの縁があったアルビレックス新潟シンガポールにオファーを頂きました。以前から、海外で生活したいという考えがあり、場所に迷いはありませんでした。内なる欲望を全力でぶつけられること、海外へ行きたいという考え、その国のトップリーグでプレーできるということから加入を選びました。

RP:この1年での急激な環境の変化に、中には気持ちが追いつかないという方もいるかもしれません。一体、どうやって折り合いをつけていましたか?やはり、橋岡選手が口にした“内なる欲望”で突っ走った、という感じですか?
橋岡和樹:全然、そんなたいしたものではないです(笑)。ただ、それまでの期間は苦しい想いが大きかったのです。今まで、自分のなかでエネルギーにしていたものは、弟との比較、いとこ(陸上選手・橋岡優輝)との比較だったりで、少し苦しい時期を過ごしました。本当は、そんな比較をする必要はなかったのですが、自分は一体、どの位置にいるのかと苦しい想いを重ねて……。今は「比較する必要はない」というエネルギーに替わりましたが、振り返れば、気持ちが追いつくには少し大変だったかもしれません。

RP:お話しを聞いていて、「内なる欲求」「自分との会話」という言葉が印象的に残るのですが、自分にベクトルを向ける考えというのは、これまでにも、ご自身が持っている考え方ですか?
橋岡和樹:今の僕にある考えや価値観は、両親や明治大学サッカー部の栗田大輔監督、ユース時代の大槻毅監督に頂いたものです。自分に素直になるということは意外と難しいことで、素直になると言いながらも、実は、その方たちの価値観に動かされているのだな、と感じました。周りからの価値観を無くす、あるいは離れた上で、自分が何をしたいのかを考える。これが自分に素直になるということだと思います。

RP:シンガポールのプレミアリーグについてお聞きしたいのですが、チームは8チームですよね?
橋岡和樹:今季は8チームで戦いましたが、もともとは9チームです。シンガポールプレミアリーグではブルネイのチームが参戦していますが、コロナウイルスの影響で参戦できず、今季は8チームでした。

RP:リーグ戦は14試合ですが、1カ月半のあいだで11試合を消化したそうですね。厳しい日程でした。
橋岡和樹:厳しかったですね。本来は3回戦総当たり方式なのですが、今シーズンは2回戦になり、最後の1カ月で一気に消化する日程でした。

RP:ダイジェストで試合を拝見しましたが、シンガポールリーグのサッカーは、どちらも攻めあう、かなり攻撃的な試合が多いと想像しますが、実際はどうなんでしょうか?
橋岡和樹:一言でいえば、アジアのサッカーと言いますか、ほかのローカルなチームは外国籍枠が4つあって、前にも後ろにも2メートルある大きな選手がいるような感じです。セットプレーも大変で、前に蹴って、ガンガン攻めてくるので、こちらが少しでも緩んでしまうとやられてしまいます。それだけイケイケな感じはあります。

RP:映像を見ていると、スタジアムは日本でいうところの味の素フィールド西が丘や、AGFフィールド(味の素スタジアムの西側にある陸上競技場)と同じくらいの規模ですかね。
橋岡和樹:名称はスタジアムですが、スタンドは小さいので、お客さんはまだまだそれほど入りません。

RP:無観客試合だったようでしたが、フェンス越しで見ている子供たちが目の前でゴールを見た瞬間、わー!と喜ぶ姿がありました。牧歌的な感じがありますね。
橋岡和樹:シンガポールの人たちは意外とサッカーが好きで、イングランド・プレミアリーグをよく観ています。街にはリバプールのユニフォームを着た人たちが多くいます。ヨーロッパのサッカーが人気のなか、シンガポールリーグを熱心に見てくれる人がいるので嬉しいです。

RP:チームでいきなりキャプテンを任されましたが、戸惑いはありましたか?
橋岡和樹:キャプテンは自分のガラではありませんね。大樹を見ていたら分かると思いますが、橋岡家は、みんな無邪気に笑っていれば良いみたいな(笑)。そうやって育てられたので(笑)。って、それは冗談として。責任感は、もともと強いほうだったので、監督や選手とコミュニケーションをとることは、意識しなくてもできました。そうした意味でマネジメントすることは向いていると思います。

RP:アルビレックス新潟シンガポールは日本人選手主体のチームと認識していますが、地元の選手もチームメイトとしているわけですよね?
橋岡和樹:1/3がシンガポール国籍の選手です。彼らは日本語がしゃべれないので、英語でコミュニケーションをとっています。その点では難しかったですね。

RP:どういった国民性ですか?
橋岡和樹:シンガポールは中華系が7割。マレー系が2割。そのほかが1割いて公用語は英語ですが、中華系、マレー系はそれぞれの言語で話します。中華系は勉強熱心で頭が良い。マレー系は運動神経が良く、日本人よりもバネがあります。サッカーでは頭を使うというよりは走って、走ってという感じです。難しかったのは、日本では練習が厳しいのは当たり前の感覚ですよね。シーズン中はもちろん、シーズンオフでも身体を動かしますが、シンガポールでは走るのが嫌だったり、サボりぐせがあったり(笑)。練習が厳しいという環境がなかったことです。でも、吸収力はものすごくあります。日本サッカーに合わせる吸収力、ほかのチームをみても、運動神経が良くて戦術理解もあって、嫌なところを突いてきます。

RP:橋岡選手自身、主なポジションは右サイドバックでよろしいでしょうか?
橋岡和樹:シーズン中、1試合だけセンターバックでプレーした試合はありましたが、攻撃的な右サイドバックですね。

RP:あらためて、シーズン振り返って、できたところ、もう少し改善したいところ、ありますか?
橋岡和樹:攻撃参加の回数には自信がありましたし、手ごたえはありました。一方、さきほど話しましたが、相手のセンターバックが大きいので、その選手を越えるクロスや速いクロスといった質の部分は、まだまだ成長しなければならないと思っています。何か、こうして挙げると、もしかしたら弟と課題は同じかもしれません。あとはピッチ内だけでなく、リーダーシップの部分、マネジメントの部分で鼓舞するとか、そうした手応えはありますし、自分の強みと思います。

RP:ちょっと先の話しになりますが、アルビレックス新潟シンガポールには、今季、徳島ヴォルティスに在籍するFW河田篤秀選手がかつて加入していました。この河田選手のように、Jリーグや地理的にオーストラリアや、アジア諸国のリーグに移籍する、そうした選択肢やチャンスはあると思います。今後、どのような青写真を描いていますか?
橋岡和樹:一度、サッカーをやめて、もう一回、サッカー選手として続けていることを含めて……。ちょっときれいごとのように聞こえるかもしれませんが、たくさんの影響力を持った選手になりたい、抽象的ですが、現在の目標です。僕のプレーを見て、「元気をもらえました。1週間、頑張れます。次の週末も試合を見ます」と言ってくれる人が増える。その幅を大きく広げていくのが、最終的な目標です。

英語を話す人、中国語を話す人、日本語を話す人、そうしたものは関係なしに考えると……もちろん、高いレベルのリーグでプレーしたいですが、場所にこだわりはありません。弟がいるからJリーグでやりたいとか……もしかしたら、そう言ったほうが良いのかもしれませんが、そういうことは関係なく、多くの人に喜びや楽しみを与えられる場所でサッカーができるのであれば、こだわりはありません。

RP:橋岡選手といえば、弟・大樹選手もそうですが、明大のチームメイトの柴戸海選手、岩武克弥選手とも繋がりがありますが、レッズの試合は見たりしますか?
橋岡和樹:もちろん、見ています。弟にも、岩武にも電話しています。大学を出て、サッカーを一度やめて、自分を見直した時、大樹や自分と近くにいた岩武と比べていましたが、それらを自分のエネルギーにして、ある程度のところまで頑張って、もうこれ以上、比べる必要はないなと思いながら、今はサッカーを続けています。今は純粋に彼らを応援している気持ちです。

(聞き手:レッズプレス!!ライター佐藤亮太)


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