「REDSインタビュー」は、浦和レッズの選手や監督、スタッフ、関係者などへのインタビューを掲載するコーナーだが、今回は番外編として、元浦和レッズで、昨季からドイツ・シュツットガルトでプレーしている遠藤航選手に、ビデオ通話アプリZoomを使いインタビューを行った。
8月、ブンデスリーガ1部の開幕にむけて、遠藤航が在籍するVfBシュトゥットガルトが始動した。キャンプも始まったようだ。前季は、失意の2部降格から1年で1部復帰を果たした伝統あるクラブのなかで、勝利に貢献し、存在感を見せ続けた遠藤。独2部のベストイレブンにも選出された。彼がドイツへ渡ったのは、昨年8月のこと。当初は、ベルギーのシント・トロイデンからの期限付き移籍だった。
画面越しの遠藤は、柔和な笑顔を見せた。ドイツの、平日午前のひととき。時折、マイクが子供たちの声をひろった。家族で旅に出掛けたり、子供たちと遊んだり、小学1年生になった長男のサッカースクールを見たり、わずかなオフは充実した時間を過ごしたようだ。
遠藤の魅力は、自分自身を冷静に分析できること。「結果的に充実したシーズンだった」とシーズン全体を振り返るなかでも、試合に出られない時期はあった。その時期に、彼がどのように自己を分析し、立ち位置を変えるためにどんな取り組みを重ねたか。話を聞いた。
困難さはある程度イメージしていた
RP:難しいシーズンだったのでは?
遠藤:結果的に、充実したシーズンでした。たしかに最初の2、3ヶ月間は、試合に出られないという難しい時期はあったけれど、それも、シーズン途中のレンタルでの加入だったし、僕のことは、どちらかと言うと、監督ではなく、強化部が(自分を)認めてくれて獲得してくれた、ということもあった。そういう意味で、最初からいきなり出番をもらえたり、チャンスをもらえたりするのは難しいだろうなと、ある程度のイメージをしていました。
RP:やはり、冷静に自分を分析していますね。
遠藤:だから、焦りはなかったですよ。まあ、今までのサッカー人生のなかで、これほどメンバーに入ることができない時間はなかったわけですから、難しい時間ではあったけれど……。でも、チャンスを与えられれば、しっかりと結果を残せるという自信を持っていたし、試合に出られない期間のなかで、客観的に試合を観たり、自分がピッチに立ったら、どのようなプレーをしようかとイメージしながら試合を観たり、そういう準備はしていました。そこでチャンスがやって来て、しっかりと結果を残すことが出来たのが、今シーズンのすべてだと思います。
RP:どのようにメンタルをコントロールしていたのか。
遠藤:特に意識的にやっていたわけではないけれど、試合に出られない要因をしっかりと考えながら、じゃあ、今、自分には何が必要なのかをしっかりと考えられるかどうかがおそらく大切なことだと思います。ある意味、最初は、監督が僕を全く知らなかったし、どういう選手なのかも分からない状態だったと思うんです。僕は、そういう状況でチームに入ったので、まずは、そこをクリアにする。自分は、どこでプレーしたいのか。どういうプレーヤーなのか。それをしっかりと練習からアピールしていかなければいけなかったし、プラス、このチームで試合にスタメンで出るためには何が必要なのか、を考えました。今、試合に出ている選手に足りなくて、僕が上回れる部分は何か。試合に出られない期間のなかで、そういう点を考え続けるというか、試合に出るために何をするかを整理することが大事なのかなと思います。
RP:ブンデスリーガでプレーすることは目標のひとつだった?
遠藤:ずっとプレーしたいと思っていたリーグでした。意識したのは、プロになってからかな。一時期、日本人選手が結構在籍していて、その選手たちのプレーしている姿を見て、自分も目指すようになったという感じ。移籍の話が来たときは、やっとその舞台にたどり着いたという気持ちでした。
RP:地元サポーターの目、メディアの目も、遠藤航の魅力に気がついた。
遠藤:そこは、どうでしょうか(笑)。でも、たしかに、良いプレーを続けていれば、僕のような守備的なミッドフィルダーでも、シンプルに評価してくれました。よく見ているな、という印象があります。僕だけではなく、守備での切り替え、攻撃から守備への切り替えのところでの良いプレーは、サポーターが盛り上がる場面というか、拍手が起こるようなプレーでした。そういう点に、僕自身、やり甲斐を感じていました。一方で、外国籍選手として加入している以上、結果を残さなければ、評価もガラリと一気に変わる。巧く、というか、良いプレーを続けなければいけないと思いながら、ピッチに立っていました。
個人的にもうれしかったベストイレブン
RP:ベストイレブンは、誇らしいニュースだった。
遠藤:ベストイレブンは、個人的にも嬉しかったですね。一方で、ブンデス2部のベストイレブンという考えもあると思うけれど、2部も決してレベルが低いリーグだとは思っていないし、自分のキャリアとしては、今後ずっと1部でプレーし続けるつもりなので、1シーズン、2部でプレーして、結果としてベストイレブンに選出されたという結果が残るのは、僕にとって嬉しいことです。
RP:キャリアを振り返ると、遠藤航の長所は、ちゃんと誰かが見ている。マリオ・ゴメス(元ドイツ代表FW)の声、というのも聞いている。
遠藤:本当にそうです。マリオはめっちゃ良い人で、あれだけのキャリアを持っていても、第一にチームのことを考えて行動できる選手で、みんなの見本になるような選手でした。僕は、たまたまロッカーが隣で、最初は、そんなに喋っていなかったけれど、あとから聞いた話で、監督に僕のことを言ってくれるなど、僕のことをずっと評価してくれていたそうで、素直に嬉しかったですよ。同じチームの選手が自分のことを褒めてくれるのは。
RP:海外へ渡り、移籍のたびに強くなっているような気がする。
遠藤:海外でプレーすることは、Jリーガーになる前から思っていたこと。高校を卒業して、そのまま海外へ行きたいと思っていたくらいで。ベルマーレからレッズ、そしてSTVV、シュトゥットガルトと経験し、プレー面で言えば、1対1の、球ぎわの強さは成長した部分かな。一番は、そこかな。フィジカル的なところは上がったと思う。日本にいた頃よりも。
RP:独1部でのプレーが待っている。
遠藤:特に想定はしていないけれど、とても楽しみ。日本人選手もいて、対戦も楽しみだし、日本からもテレビで見てもらえそうですよね。レッズのサポーターの皆さんにも応援してもらいたいです。
夢はプレミアリーグでプレーすること
RP:インタビューにあたって、質問を募集した。「最終的にプレーしたいリーグは?」。
遠藤:中学生や高校生の頃に見ていて、すごいな、好きなリーグだなと思って、ずっと夢に描いているのは、プレミアリーグでプレーすること。今はこれから始まるブンデス1部で、シュトゥットガルトを優勝争いするようなチームにしたい。
RP:レッズサポとしては、ギド・ブッフバルトさんの古巣。名門クラブでプレーする醍醐味をどこに感じる?
遠藤:正直、このドイツ国内で、移籍したいとは思わないな。今、シュトゥットガルトは若い選手が多くて、27歳の僕の年齢が上のほうなので、成長も楽しみだし、もともとブンデスを何回か獲っているクラブだから、もう1度、そういうチームにしたいと思います。ブンデス1部って、他の選手から「どのチームも良いチームだ」と聞くし、1試合1試合が大事になるので、あまり先のことは考えず、目の前の試合に集中していきたい。勝点をいかに積み上げられるかという場所だと思います。
RP:ご家族も、また楽しみな1年が始まるだろう。
遠藤:家族と一緒にいて、試合に出られない時間も、家族が日常を与えてくれて、ありがたい存在でした。子供の学校や幼稚園へ連れて行ったり、一緒に遊んだり。長男は早いもので、もう1年生。加入しているサッカースクールって結構強くて、1つ歳上の子と試合をするから、体格差はあるけれど、楽しそうにやっています。ドイツでサッカーをしている時点で、息子にとってプラスだと思うので、楽しんでもらいたいですね。
RP:新シーズンにむけて。
遠藤:個人的にブンデス1部は初挑戦。楽しみな気持ちでいっぱいです。もちろん、そんなにうまくいくことばかりではないと思っているけれど、個人的にどれだけやれるのか、成長できるのかというところを楽しみにやっていきたい。
(聞き手:レッズプレス!!ライター有賀久子)