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坪井慶介引退インタビュー「人として、サッカー選手として、ブレない芯を持つことが絶対に大事」

「REDSインタビュー」は、浦和レッズの選手や監督、スタッフ、関係者などへのインタビューを掲載するコーナーです。今回は、佐藤亮太記者による坪井慶介氏の引退インタビューを掲載します。


人として、サッカー選手として、ブレない芯を持つことが絶対に大事

2002年に浦和レッズに加入し、2019年を最後にピッチから退いた坪井慶介。彼に聞く、浦和レッズの強さとは、何か。(取材日:12月22日)

RP:現役引退後、初めてのシーズンオフに入りましたが、現在の心境は?
坪井:まだ正直、現役時代のような、毎年、毎年訪れるオフを過ごしているような感じです。年が開けると、より実感するのだろうなと思います。オレ、練習しなくていいのだ、と(笑)。
それでも、やっぱり、何となくですが、気分は楽な感じです。例年、オフのときも「食事に気をつけなきゃいけない」「身体を起こさないといけない」と、新しいシーズンのことを気にしながら、チームの始動日から逆算して「この日は、このくらいの強度で」と計画を立てていました。今は、そうしたことがないので、気が楽ですね。

RP:坪井さんが加入した2002年。チームには、日本代表を長くけん引し、『アジアの壁』と呼ばれた名DFで、現在、指導者の道を歩む井原正巳さんがいましたね。
その時、井原さんが坪井さんを含めた若手選手に背中で伝えていた姿と、その後、坪井さんが歩むサッカー人生のなかで、若手選手と接する坪井さんの姿がどこか重なって見えていたのです。それは、坪井さんが意識的におこなっていたことなのか。それとも、結果として、そうなったことなのか。どちらなのでしょうか?
坪井:井原さんと過ごす日々のなかで、見て学んでやってきたものですから、「そうありたい」とは思っていました。
ただ、意識的に“井原さんのように”とは思いませんでした。おそらく自分には、井原さんのような伝え方はできない、と思っていましたから。
意識したのは、形ややり方の違いはあるにせよ、大先輩のように、背中で何かを語れる、何かを示すことができるサッカー選手になりたいということ。
結果的に、それが井原さんのように見えたのかもしれません。自然と、僕のなかに刷り込まれたことを、僕自身も、そうあるべきだ、それをずっとやっていくべきだ、と思っていました。表現は難しいですが、井原さんの真似ではなく、自然とそうなったという感じです。

RP:坪井さんについて、現在、柏レイソルでヘッドコーチを務めている井原さんにお話を聞いてきました。井原さんは、坪井さんがスピード勝負のプレースタイルでありながら、よくここまで長く選手として現役生活を続けてこられたな、と話していました。
坪井:そうですね。僕は、そういうタイプの選手でしたからね。脚の速さや身体能力、反転の鋭さなど……。ただ、経験で補えるものもあると思っていましたから、長くプレーできれば、それだけ経験は積み重なっていくものなので、それほど大きな心配はありませんでした。
それでも年を重ねるうえで、いろいろなトレーニングをしましたよ。ステップワークやスピードが落ちたと感じると、やっぱり自分が自分に納得がいかなくなりますから。それを何とか少しでも落とさないようにする。欲を言えば、40歳になっても、脚が速くなりたかった(笑)。
そうやって、トレーニングの量を落とすというよりも、他に何かが出来るのではないか、と模索していました。もっとステップを速く出来るようになるんじゃないか、もっと速く走れるんじゃないか、と思って。

RP:脚の速さと言いますと、思い出されるのはFWエメルソン選手ですが、やはりすごかったですか?
坪井:すごかったですし、一緒に練習していて楽しかったです。「コイツを止めたら、他に止められない選手はいない」と思っていました。速さはもちろん、いろいろな選手とマッチアップするなかで、良いFWだなと感じるのは、予備動作だったり、駆け引きだったり、自分がどうやってシュートを打つか、考えている選手。マークしているとしんどいですし、エメルソンはそんなFWでした。

RP:エメルソン選手のほかに、嫌なFWと感じた選手は?
坪井:たくさんいますよ。高原直泰選手もそうですね。あとは、ブラジル代表FWロナウド選手ですね。そういう選手たちというのは、具体的に何がすごいのかと言うと、自分がシュートを打つための動きが素晴らしいのです。
そのすごさは、実際にやってみないと分からないと思いますが。決してテレビで映らないところですから。点を取ってきたFWの共通点かもしれませんね。
あとは、清水エスパルス(2004年)やガンバ大阪(2005年)に在籍したFWアラウージョ選手。彼も、嫌でしたね。あっ!(興梠)慎三!慎三も嫌なFWでした。
僕は、あのようなプレースタイルの選手とマッチアップするのが面白いと思っていましたし、好きなんです。レッズのとき、僕自身、最後の方はあまり試合に出られなかったので、スタメン組とゲームをする機会が多くて。そうすると、マッチアップするのは(柏木)陽介と慎三。2人のラインをどう止めてやろうかを常に考えていました。慎三とはもう一度、マッチアップしたかったな。

RP:坪井さんが浦和を退団して、2015年から湘南ベルマーレ、2018年からレノファ山口に在籍しました。両チームともに有望株の若い選手たちがいますが、坪井さんから見て、いまの若手の選手をどうご覧になっていますか?
坪井:才能のある選手はたくさんいます。湘南でもそうですし、山口では16歳の河野孝汰選手と一緒にプレーしました。ポジションはFWですが、「16歳でこんなプレーができるなんて、すごい」と感心しました。うまく成長してほしい選手ですし、成長しなければならない選手です。
そうした選手は、ほかにもたくさんいます。湘南のときからですが、僕はプレーについて、どうこう言いません。もちろん、聞かれれば、分かる範囲でアドバイスはします。ただ、自分から「絶対、こうしたプレーをした方が良い」とは言いません。
常々、大事だなと思っているのはメンタル面ですかね。最近、思っているのは、チームとして、人として、サッカー選手として、ブレない芯を持つことが絶対に大事だということです。自分が絶対に譲れない芯を持つこと。そして、相反することかもしれませんが、いろいろな方の話を聞ける柔軟な気持ちも必要。この2つをうまく持ち合わせてもらいたい、ということです。

RP:坪井さんは、その2つを持ち続けて現役を続けてきたように見えますが。
坪井:そうですね。割とその辺は意識していました。幼いころから、曲げてはいけないものを持って、続けてきましたが、「それだけでは成功しないな」と思ったこともあったり、実際にうまくいかないことが多くあったりもしました。
解決する、そのためには人の意見を聞かないといけないと思います。意見を聞いて、実践する、しないは自分が決めれば良いこと。人の意見をしっかりと聞いたうえで、これはどういうことだろうかと、考えて、かみ砕いてみる。
「じゃ、これはやってみよう」、あるいは「やってみたけれど、自分には合わないな」と思った時には以降はやらなければいいわけで。芯を持つことは良いこと。でも、「オレはオレだから」と耳を傾けない人が多いなか、ちゃんと人の話を聞いてみて、自分の芯と照らし合わせて、自分にとって、それが必要か、そうじゃないかを考えて、判断してもらいたいと感じます。

RP:そうした考えになったのは、いつ頃のことですか?
坪井:ブレない芯のようなものは、意識せずに、幼い頃から自然と身につけたことですが、人の話を受け入れないといけないと強く感じたのは、四日市中央工業高校のときでしたね。100人以上いる部員のなか、一番下のチームからスタートして、最初はボールを触れない状況でした。
僕自身、何か特別に技術があったわけではありませんでした。だから、上のチームに行くには「今のままでは、力が足りない」と認識していました。そうなると、人の力、人の意見で助けてもらうことをしないと、上には行けないと感じていました。

(次につづく)
聞き手:レッズプレス!!佐藤亮太

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