2024年から浦和レッズに新加入する選手を特集。第2回は、サッカー新聞エル・ゴラッソの佐藤拓也記者に、期限付き移籍から復帰する武田英寿選手を紹介してもらった。
ファイターへの変貌。転機はボランチ起用
シーズン通して38試合に出場し、得点こそ2に留まったものの、J2リーグ3位となる9アシストを記録。プロ4年目、武田英寿は水戸の地で飛躍の1年を過ごした。
とはいえ、決して順風満帆なシーズンだったわけではない。開幕からスタメンを飾り、第3節ファジアーノ岡山戦で初ゴールを決める活躍を見せたものの、チームは開幕6試合勝利がなく、第10節終了時点で18位に沈み、残留争いに巻き込まれてしまった。
調子が上がらないチームの中、武田自身の動きも精彩を欠くようになり、第11節で先発を外れると、その後4試合で先発として起用されたのはわずか1試合。その試合も0対4の大敗を喫すなどチームの低迷とともに、武田の存在感も薄れていった。
そんな武田にとって、転機となったのが第16節ザスパクサツ群馬戦。それまで攻撃的MFとして起用されてきた武田が、加入後はじめてボランチとして起用されたのだ。試合は1対2で敗れたものの、ピッチ中央で積極的にボールを受けて長短のパスを織り交ぜながら攻撃を展開する武田のプレーは北関東ダービー敗戦の中での数少ない好材料となった。
そこから“新たな武田英寿”が躍動した。
ボランチとして持ち前のテクニカルなプレーだけでなく、豊富な運動量と強度の高い守備で中盤を支える姿を見せたのだ。
「(守備力は)元々自分の中にあった部分だと思っていますが、今はすごくピッチ内で表現できている実感があります。運動量やスタミナも自信を持っているんです。それにプラスして、強度の部分で成長できているように感じています」
そう胸を張って語ったように、武田は攻撃だけでなく、守備においても大きな存在感を見せるようになっていった。
武田がボランチとしてフィットしていくにつれて、チームの調子も上がっていき、第26節モンテディオ山形戦から10試合負けなしを記録。さらに第33節レノファ山口FC戦から4年ぶりとなる3連勝を達成して、残留争いから抜け出すことに成功した。
司令塔として、そして、ファイターとして能力を発揮した武田。
「良い時も悪い時もありましたけど、1シーズン通して試合に出られたはじめてのシーズンとなりました。加えて、チームの中心としてプレーさせてもらったシーズンだったので、本当に充実した1年を過ごすことができました」
誇らしげに水戸での日々を振り返った。
ただ、ここがゴールではない。むしろ、スタートラインに立ったに過ぎない。2024シーズンは浦和に復帰して、新たな戦いに挑む。さらなる飛躍を期して、“新たな武田英寿”はJ1の舞台に立つ。
(エル・ゴラッソ水戸担当 佐藤拓也)