2024年から浦和レッズに新加入する選手を特集。第3回は、サッカー新聞エル・ゴラッソの下薗昌記記者に、佐藤瑶大選手を紹介してもらった。
空中戦に絶対の自信。成り上がりの昨シーズン
エアバトル。佐藤瑶大というCBを表現する上で、欠かせない要素である。
明治大学からガンバ大阪に加入。空中戦に絶対の自信を持つ若者は必ずしも順風満帆のプロ生活を送ってきたわけではなかった。
2021年のルーキーイヤーには本職でない右SBで初先発。川崎F戦では三笘薫に翻弄され、気の毒な起用法だったとはいえ、課題でもあるスピード面の脆さが露呈し続けた。
「空中戦では絶対に負けたくない」。ややもすると無骨なCBだったはずの佐藤だったが2022年途中にはベガルタ仙台に期限付き移籍。J2で15試合に出場したものの、ビルドアップでミスを犯すなど必ずしも安定感を見せたとは言い難かった。それでも、最終ラインからの組み立てを重視する仙台で佐藤は単なるエアバトラーからの脱皮に成功していた。
ダニエル・ポヤトス監督が就任した2023年も当初はCB陣で最も序列は低く「5番目の男」に過ぎなかったが、5月20日の横浜FM戦で佐藤は今季初めて先発のチャンスを得る。
負傷離脱者を除けば、当時唯一、公式戦で出番を得られていなかった佐藤だった。「どんなふうに試合をするのかも忘れていた」(佐藤)はずの一戦で、前年王者に堂々たるプレーを披露。アンデルソン・ロペスとのマッチアップでも全く負けることなく、流れの中ではロペスを封じて見せたのだ。「チャンスはいつ巡って来るか分からない。メンタル的にはきつかったですけど、チャンスをもらってすぐに対応できるように準備できたのは日々、ちゃんと練習していたから」と佐藤は胸を張った。
横浜FM戦は敗れたものの、その後新潟戦以降の3連勝に先発として貢献。テンポの良いビルドアップでも、存在感を見せたのは単なるエアバトラーからの脱却を物語るものだった。
ポヤトス監督も成長した選手の一人に佐藤の名を挙げたそのシーズン、リーグ戦12試合出場はG大阪でのキャリアハイ。そして、得意の空中戦は攻撃時のセットプレーにも活かされ、得点こそなかったものの、際どいシュートも放っていた。
今季のG大阪とは異なるスタイルの浦和を新天地に選んだが、守り人としてのポリシーは「僕は守備に重きを置いている。足元のつなぎも求められているけど、DFの仕事は守ることですから」。
エアバトルに絶対に自信とこだわりを持つ男は、来季の浦和で「赤い壁」になる。
(エル・ゴラッソG大阪担当 下薗昌記)