クラブ経営を支えるのが「広告料」、「入場料」、「物販収入」の3本柱だ。コロナ禍で収益的に苦しい状況が続く中、今回のレッズプレスアイズでは「広告料」にスポットを当てる。その中でも、地元企業を中心としたサポート組織であるレッズビジネスクラブの積極的な営業活動や施策、取り組みの強化などに迫った。をはっきりとスタメン・サブに分けてはいなかった。ただ、個別のユニットでは『どちら』が主力と考えられているかが見えたようにも思える。
(石田達也)
レッズビジネスクラブ(以下:RBC)を一言でくくるならば、浦和レッズをサポートする企業の組織体である。2013年に創設され、地元企業を主な対象とし、企業間の交流を促すため法人用シーズンチケットを用意し、購入した企業が会員となる。
多岐に渡るラインナップが用意されているが、主な特典は3つに分けられる。1点目が企業PRや営業ツールになること。埼玉スタジアム2〇〇2での看板ボードやオーロラビジョン等での露出。一部コースではRBCロゴの使用権を持つ。2点目が社員の一体感醸成の一助につながること。ペア観戦チケットを使っての福利厚生や取引先へのホスピタリティの向上も可能となる。そして3点目がビジネス交流だ。会員同士の親睦を深め、商談などの機会を提供する。地元の中小企業や商店などを幅広く取り込むことで集客数の増加につなげる。
また、何よりも、年間500万円以上の協賛金を必要とするパートナー企業よりも少額でチームをサポートしたい企業の受け皿にもなっていることで地元企業をはじめとする中小企業を呼び込むことに成功している。
「パートナー企業と同様にRBCの企業の方もクラブをスポンサードしているという気持ちは強く、熱い思いをもってくださっていることを常に忘れずに対応しています」と語るのは、パートナー・ホームタウン本部 パートナー営業・社会連係担当の市川隆太さんだ。
「RBCを簡単に言えばシーズンチケットの法人版ということになります。会社が協賛する付加価値、企業PRや広告、ビジネス交流、そして試合を観戦できるための福利厚生にもなっています」
立ち上げ当初の2013年は約80社でスタート。右肩上がりで加入数を増やしピーク時には約420社に。新型コロナウイルスの影響で全体数は若干落ち込んだが、現時点では約350社が加盟しているという。「(RBCは)ホームタウン活動の要素を強くもっています。ホームタウンの皆様に観戦機会を提供すること、あるいはネットワークを促すことのお役に立てればと思っています」と市川さん。クラブとしても“地域に貢献する”理念の具現化にもつながっている。
2022シーズンの新規加入社数は約80。新規加入促進のため、ダイレクトメールやテレアポも実施するが、クラブのオフィシャルパートナーでもある埼玉懸信用金庫等がサポートするビジネスマッチング契約(ニーズに合わせ企業と企業をネットワークで結ぶ)を結んでいることも大きな加入要因の1つになっている。
2013年の立ち上がりから順調に伸びていて埼スタが非日常空間のドラマの舞台となり、忘れられない感動体験や思い出、絆が作られているのだ。
その中、市川さんが喜びや手応えを得た2つのエピソードを教えてくれた。
「ビジネスミーティングを年に一度、行っています。10月に阿部勇樹ユースコーチのトークショーを実施した時に、参加企業同士の交流を生で見ることができました。『入っていて良かった』と多くの企業に喜ばれていました。自社のチラシを持って営業活動をし、そこから商談につながったという話も聞きました」。お互いのベースにあるのはレッズが好きだということ。当然のことながら会話は弾み輪は広がっていく。
そして「アイントラハト・フランクフルト戦は通常ユニフォームではなく、限定ユニフォームの着用のため、この日だけのユニフォームパートナー(スポンサー)を募りました。するとRBCに加入している(有)ホープ工業(埼玉県坂戸市)さんが手を上げ協賛してくれました。地上波でも放送されていましたが、『色々な人から反響があった。レッズのユニフォームに会社の名前が入って放送された。この体験はめちゃくちゃ嬉しい』と喜んでいただきました」。企業とクラブがオールウィンとなる幸福な関係を築いている一例でもある。
ただ課題もあると言う。「RBCの継続率は8割台で推移していますが、年数の浅い会社へのホスピタリティが中長期的な課題です」(市川さん)。人と人、企業と企業。それぞれの間に相互満足がなければホスピタリティは成立しない。お互いが満足し共に価値を高めていくことが重要なキーになり、継続率の強化にもつながるだろう。
2023シーズンにはRBCは10周年を迎え節目の年ともなる。来季の施策について市川さんは「あくまでも検討段階」と前置きをした上で、次のようなプランを温めていることを示した。
「関東近郊のアウェイツアーやビジネスマッチング等の交流会などを検討しています。こうした機会を増やすことで成績に左右されず、皆さんと長い付き合いができると思っています」と話した。
これらを含め様々なプロモーションを企画中とのこと。会員にとって期待は高まるばかりである。
今後の目標に向けて、市川さんは「目指す姿としては、RBCに加入して良かったと思われること。クラブがプラットフォームとなりレッズを通じて出会いが生まれる。今は約350社ですが、1000社に伸ばせれば2000席は埋まります。RBCをもっと強く大きくしていきたいですね」と未来へのシナリオを思い描く。
記者は思う。クラブをスポンサードするということは慈善事業ではない。あくまでも費用対効果が重要になるのだが、露出機会の増加や企業間交流が深まることでの地域経済の結びつきなどメリットや収益につながっているからこそ、RBCの加入数はコロナ禍でも一定数を保ち、これからも右肩上がりの傾向を見せるだろう。クラブはハブ的な役割を担い、企業は理念の具現化につながる。クラブと共に歩みながら地域貢献による社会的責任を果たしていく。
埼玉の街中にRBC特性の応援のぼりやポスターがこれからも増えていくだろう。・・・・・・